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適材適食 -てきざいてきしょく-

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763食目「食べないと食べることが危険になる」リフィーディング症候群

「食べないと食べることが危険になる」リフィーディング症候群【適材適食】小園亜由美(管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ)

 

リフィーディング症候群という言葉、知ってますか。リフィーディング=Refeedingと綴ります。

長時間の絶食などによって極端な栄養不良に陥っている状況で、急に多量の栄養を摂取した場合に、代謝機能が変調を来してさまざまな症状を併発すること。

人体は飢餓状態に陥ると代謝のサイクルが変化し、代謝率の低下や体内物質の分泌物の増減などが生じる。そうした状況で豊富な栄養が体内に取り込まれると、リン、マグネシウム、カリウムといった成分の血清濃度が低下し、これが不整脈や心停止を引き起こす要因となり得る。

東京医科大学八王子医療センター・救命救急センターのウェブサイトでは、海外の文献による「リフィーディング症候群の本態は、これらエネルギー器質の変化とそれに伴う電解質やミネラルの移動である」という定義づけを紹介している。

「リフィーディング症候群」の意味や使い方 Weblio辞書

長い間、極端に栄養が不足した状態が続いていたところで、急に栄養を補ってしまうとカラダがびっくりしてしまい、様様な症状を引き起こし最悪の場合、死の原因となってしまうこと、です。

 

歴史上有名な話があります。1580年(天保8年)、羽柴秀吉のちの豊臣秀吉が織田信長の命令で鳥取城に攻め込んだ時のことです。この時秀吉は闘わずに兵糧攻めを行いました。兵糧攻めとは城の周りを取り囲み、補給させない作戦で、城に立てこもった敵を食料不足で飢えさせ、弱らせるという作戦です。この兵糧攻めは3ヶ月続いたそうです。この作戦は効果てきめんで、相手は降参、秀吉は闘わずして城を落としたのです。降参後時、敵側の兵士が城から出てきたのですが、飢餓状態でとても衰弱していたそうです。秀吉は大釜でお粥を大量に作り振る舞ったそうです。これで一安心と思いきや、お粥を食べた敵の兵士たちは次々に倒れ死んでいったそうです。

これはリフィーディング症候群が起きたのではないかとされています。栄養不足が長く続いた状態のところに、急激に栄養を摂ったために、カラダが絶えられず死に至ってしまったのです。栄養補給のはずのお粥が毒になってしまったのです。

 

ーーー戦国時代の話でしょ?今は食べものが豊富で痩せるために苦労してるんだ! 

 

 果たしてそうでしょうか。こんな記事があります↓

死の危険も―リフィーディング症候群 
長期の低栄養状態からの急激補給
 リフィーディング症候群は、長期に低栄養状態に陥っている人に、急激に栄養補給したときに表れる重篤な病態だ。飽食の現代であっても、摂食障害やがん、独居などのさまざまな身体的、社会的な背景から低栄養状態が長く続くとリフィーディング症候群を起こすことがある。上尾中央総合病院(埼玉県上尾市)栄養サポートセンターの大村健二センター長は「長期間続いた高度の低栄養状態からの回復は、決して急いではいけません。慎重に行う必要があります」と話す。

記事の中にもありますが、

  • 拒食症
  • 高齢のひとり暮らし
  • アルコール依存症
  • 嚥下えんげ障害
  • 摂食せっしょく障害

 の人は注意が必要だとしています。

 

ーーーどれにも当てはまらないから大丈夫。

たとえば半年で10%以上意図しない体重の減少がある場合は注意が必要としています。 

 

長期間充分に食べないこと、そして突然食べることでどんなことが起きるのでしょうか。

  1. 食べない
  2. カラダが必要とする栄養が不足した低栄養状態になる
  3. 栄養が足りないのでカラダは代謝の速度を遅くする
  4. 少ない栄養で何とか賄おうとカラダが低栄養に順応する
  5. 突然食べる
  6. 少ない栄養で慣れようとしていたカラダに大量の栄養が入ってくる
  7. 特に血液中の電解質のひとつリンが足りなくなり低リン血症になる
  8. 低リン血症になると全身の細胞に充分な酸素が運べなくなる
  9. 心不全、呼吸不全、肝機能障害、不整脈、意識障害、けいれんなどが起き、最悪の場合は死に至る

ということが起きます。

 

「食べないと食べることが危険になる」リフィーディング症候群【適材適食】小園亜由美(管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ)

食べない状態から食べる状態へ。これはいわゆるダイエットとその後の状態にとても近いのです。体重を減らすために食事量を極端に制限したりすることがあるようです。たとえば「〇〇ダイエット」として〇〇しか食べない、なんてダイエット方法です。食べないことでカラダの中に入ってくるエネルギーは減ります。同時に栄養素も減ります。それを一定期間続けた場合、その間も生きるため、活動するためにエネルギーや栄養素は必要なので、カラダの中で溜めて置いたものを使います。どんどん使うので体重は減ります。そして体重計に乗り「やったー!痩せた!」と喜びます。

「食べないと食べることが危険になる」リフィーディング症候群【適材適食】小園亜由美(管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ)

でもカラダにしてみたら、溜めて置いたエネルギーを使うのでいわゆる非常事態です。さらに困ったこととして栄養があります。カラダの中で蓄えたり創ったりすることができる栄養ならまだしも、創ることのできない栄養は常に足りない状態が続いています。急激に食事量を減らすダイエットは、気づかないうちに大きな負担をかけていることになります。

そしてリバウンドという言葉があります。ダイエットには成功したが、その後体重が戻ってしまうことを言いますが、これはまさにリフィーディング症候群状態と言えます。

 

ーーーダイエットなんかしていない

 

という人も注意が必要です。例えば、あなたはこんな食事をしていませんか?

「食べないと食べることが危険になる」リフィーディング症候群【適材適食】小園亜由美(管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ)

「食べないと食べることが危険になる」リフィーディング症候群【適材適食】小園亜由美(管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ)

ちゃんと食べているとしても、エネルギーや栄養の量が足りないと低栄養になってしまいます。

 

「食べないと食べることが危険になる」リフィーディング症候群【適材適食】小園亜由美(管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ)

ヒトはカラダを創り維持するための栄養と活動するためのエネルギーを食事から補給しています。大まかに

カラダを創るもの    :タンパク質・脂質

カラダの調子を整えるもの:ビタミン・ミネラル・食物繊維

カラダを動かすエネルギー:糖質

があり、いわゆる6大栄養素と言われています。これらを必要な量摂ることではじめてバランスのよい食事となるのです。これらの栄養素を食品に当てはめると、

「食べないと食べることが危険になる」リフィーディング症候群【適材適食】小園亜由美(管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ)

カラダを創るもの    :肉・魚・牛乳・ダイズ製品

カラダの調子を整えるもの:野菜

カラダを動かすエネルギー:ご飯・パン・麺類・イモ類

などになります。これらが毎食整う食事が理想的です。具体的に実践したい場合は、こちらが便利です↓

「食べないと食べることが危険になる」リフィーディング症候群【適材適食】小園亜由美(管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ)

この食事バランスシートの通り毎食食品を整えると栄養バランスが整うようになります。pdf形式でダウンロードができます↓

http://meinohama.futata-cl.jp/img/BNR_BalanceSheet.png

 

以前、痩せている人が糖尿病になっているという記事を書きました。

痩せて見えていても、実は肥満体質。そこには栄養と運動が関わっています。

「食べないと食べることが危険になる」リフィーディング症候群【適材適食】小園亜由美(管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ)

「食べないと食べることが危険になる」リフィーディング症候群【適材適食】小園亜由美(管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ)

痩せるということは、食べずに体重を減らすことではありません。充分に栄養を補給しながら、必要なエネルギーを超えないような食事を摂り、そして適度にカラダを動かすのが重要です。カラダを動かすと脂肪を燃やして痩せる!と思いますが、脂肪が燃やされ体重が減るまでには相当な運動量が必要です。それよりも、日常生活で積極的にカラダを動かすようにしましょう。例えばエスカレーターを使わずに階段昇るなどです。そうすることで、筋肉を鍛え衰えさせないようになります。

 

いずれにせよ、急に食べなくなったり急に食べたり、急に動いたりなど、極端なものは避けるべき、ということです。少しずつ少しずつ長く長くやり続けていくことが大事、です。

 

 

 

★ちゅー!ポイント★

 

兵糧攻めの話。実は続きがあります。

栄養不良のハイリスク患者では,5〜10 kcal/kg/24時間の栄養投与から開始することが推奨されており,兵士たちは,煮干のようなリンが多い食品を十分に摂りながら,お茶碗に1〜2杯のお粥を1日かけてゆっくり食べていれば助かった可能性があります.実際に,兵糧攻めで生き残ったものは,白米を食べていた上級武将ではなく,ビタミンB1を多く含む玄米を食べていた下級武士であったともいわれていますし,カリウムが豊富な牛や馬の血を飲んでいたものは生き残った,という言い伝えもあるのです.先生方も,これからの診療で,神経性食思不振症のような飢餓状態の患者さんに輸液や経管栄養を開始するときには,兵糧攻めを思い出し,細心の注意をしなければいけません.

【第6回 秀吉の兵糧攻め】こんなにも面白い医学の世界 からだのトリビア教えます|プライマリケアと救急を中心とした総合誌:レジデントノートホームページへようこそ - 羊土社

何事も急がば回れ、です。

 

 

 

ー 適 材 適 食 てきざいてきしょく

小園 亜由美 (こぞのあゆみ)管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・日本化粧品検定1級

【適材適食】小園亜由美(管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・日本化粧品検定1級)

▲YouTubeでは野菜や果物など食べものに関する情報を動画配信しています★

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*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。