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適材適食 -てきざいてきしょく-

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976食目「長崎のとある離島の住民が糖尿病予備軍率70%を超える理由」@ 長崎新聞社

「長崎のとある離島の住民が糖尿病予備軍率70%を超える理由」@長崎新聞社【適材適食】小園亜由美(管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ)

 

HbA1cって訊いたことありますか。

HbA1cと書いてヘモグロビンエーワンシーと読みます。いわゆる血液中の糖(=グルコース)の量を示すもの=血糖値として糖尿病治療などで使われる値のひとつです。

食べたり飲んだりすると、胃や腸で消化をしてエネルギーや栄養を身体に取りこみます。そしてその中でも主にエネルギー源となるのが糖です。糖は膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの助けで血液の中から全身の細胞のエネルギー源として取りこまれ使われます。

それが何かの原因で上手く細胞に取りこまれなかった場合、糖は血液中に残り漂い続けることになります。それを高血糖と言います。

HbA1cの場合、その糖の割合(=パーセント)で示します。大まかに

HbA1cヘモグロビンエーワンシー

  • 正常・・・・・・5.6 %
  • 正常高値・・・・5.7 %〜6.5 %
  • 糖尿病・・・・・6.6 %〜
*糖尿病の診断基準ではありません。

となります。

正常の人で5.6%、糖尿病の人で6.6%。たった1%と思うかも知れませんが、されど1%なのです。5.6%より高かった場合は、特に糖尿病に気をつける必要があります。

 

こんな記事がありました↓

血中HbA1c濃度5.6%以上の人の割合 2016年度長崎県福祉保健部調べ

 

長崎県内全体・・・・49.5 %

離島5市町全体・・・55.2 %

 

五島市・・・・・・・54.7 %

対馬市・・・・・・・56.3 %

壱岐市・・・・・・・44.0 %

新上五島町・・・・・70.3 %

小値賀町・・・・・・48.7 %

 

糖尿病予備軍70% 長崎・離島の砂糖文化、新上五島町が突出 | 長崎新聞

 

長崎県で住民のHbA1cを計測、地域毎に調査したところ、多くの地域でHbA1cが5.6%以上=正常より高い値の人が50%程度で推移しているのに対して、新上五島町しんかみごとうちょうの住民だけが70 %以上の人が正常よりも高い数値だったのです。

 

なぜでしょう。

 

長崎新聞は記事の中で分析をしています↓

 江戸時代に海外貿易の窓口だった長崎から小倉にかけての旧長崎街道沿いには、砂糖や外国由来の菓子が多く流入。本県では甘い味付けの食文化が根付いたとされる。
 五島列島などでも、伝統食のかんころ餅や、煮付けなどといった料理に砂糖を多用する傾向があるという。町健康保険課の担当者は「全国的にはあまり使われないのではないかと思うが、天ぷらや魚のすり身揚げなどに砂糖を入れる地区もある」としている。

糖尿病予備軍70% 長崎・離島の砂糖文化、新上五島町が突出 | 長崎新聞

まずは甘い味付けという食文化があるそうです。江戸時代の昔から続く砂糖文化によって、人々の中で甘い食べものという文化が徐々に作られ、今に伝わっているのです。生まれて育つ中で甘いものが普通だった環境で育った人にとって、それを突然変えることは大変難しいことです。食文化は本人の気づかないうちに常識として、趣向として、記憶としてその人の中に根付いてしまうのです。

 

 業種や職種別で見た場合、漁業者ら肉体労働に従事する人たちは、缶コーヒーなど加糖飲料で水分補給する傾向が強いことも指摘されている。
 町内の漁業男性(47)は「未明に起床し、買い置きした缶コーヒーを飲むのが習慣。喫煙とセットになっている感覚で、昼間の作業中に差し入れでもらうことも多い」。昨年の検診後、コレステロール値が高いことを指摘され、甘いコーヒーから微糖やブラックに変えたところ、数値は改善したという。

糖尿病予備軍70% 長崎・離島の砂糖文化、新上五島町が突出 | 長崎新聞

こちらは生活習慣です。いわゆるルーティーン。朝起きたら甘い缶コーヒーを飲みながらタバコを吹かす、というパターンが出来上がって、それをずっと続けている。そしてずっと続けた結果、この男性の場合コレステロール値が高くなってしまった。特に考えることもなく、何気なく続けているという点で生活習慣です。幸いこの男性は微糖やブラックの缶コーヒーに変えたことで改善したそうです。

 

 運動習慣がない人の割合も高いとされる。18年度に特定健診を受けた町民約1900人を対象にした調査で、「1回30分以上の運動習慣がない」と答えた人は62.4%で、県平均の60.6%、国の59.8%よりも高い。公共交通機関がバスだけで便数も限られているため、マイカー利用が多く、その分歩く機会が少ないのだという。

糖尿病予備軍70% 長崎・離島の砂糖文化、新上五島町が突出 | 長崎新聞

身体を動かす習慣がないことも原因のひとつ、としています。特に離島であることから、公共の交通機関も発達していないため、住民の多くはマイカーを所有、利用していることで、自宅から目的地まで直で移動できてしまうため、その分歩く機会が減っているようです。

 

 

ずっと続く伝統的な食文化。

何気なく続けている生活習慣。

身体を動かす機会の減少。

これらの要素が重なるとHbA1cが高くなり、やがて糖尿病になりかねません。

 

糖尿病の治療の基本は3つ。薬、食事、運動です。食べるものを意識し、身体を適度に動かすことが糖尿病を遠ざけ、健康な身体をつくる基本です。

 

 

★ちゅー!ポイント★

 町はこうした状況を受け、13年度から地道に事業所を巡り、食を含めた健康指導を実施している。1時間から1時間半かけて加糖飲料に含まれる砂糖の量や、しょうゆの適切な使用量などを紹介。普段の生活に合わせてイメージしやすい説明を心掛けているという。

this.kiji.is

生活習慣を変えるのにいつだって始めるに遅いことはありません。また早過ぎることもありません。新上五島町の住民のみなさんが健康を意識し、長崎県内で1番のHbA1cの値を出すことを楽しみにしています。

 

ー 適 材 適 食 てきざいてきしょく

小園 亜由美 (こぞのあゆみ)管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・日本化粧品検定1級

【適材適食】小園亜由美(管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・日本化粧品検定1級)

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*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。