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適材適食 -てきざいてきしょく-

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001口目「一人暮らしの男性でなかなか自炊をしてくれない場合」食事療法について私なりの答え

「一人暮らしの男性でなかなか自炊をしてくれない場合」食事療法について私なりの答え【適材適食】小園亜由美(管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ)

 

昨日の講演の後、色色な質問をたくさんお預かりしました。

どの質問も患者さんへの想いが伝わってくるものばかりでした。

直接お返事しようかとも思ったのですが、

多くの人の目に触れるブログの記事にすることで、

より多様なアプローチ方法が見つかるきっかけになるのではと考え、

ひとつのシリーズにてみたいと考えています。

 

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始める前に。

ここに示す内容は私なりの考えです。

正解ではありません。

また私とは全く違った考えもあると言うことを知っています。

そして私の考えも日日変化していきます。

ですから、

自分の考えをまとめていくための参考としてください。

***************

 

記念すべき第1回目は

一人暮らしの男性に

食事カウンセリングで

自炊をするように勧めても

なかなかやってもらえない

です。

調理が苦手、

調理ができない人への

アプローチ

など同じような内容をいくつかお預かりしました。

今回はこのテーマについて一緒に考えていきましょう。

 

 

 

一人暮らしの男性って?

まず「一人暮らしの男性」についてです。

それが自宅から遠くの学校へ通うために一人暮らしなのか、

仕事が忙しくて単身赴任なのか。

高齢で家族と離れ一人で住んでいるのか。

まず「年齢」によっても背景は変わってきます。

 

大学進学の時は食生活が大きく変わる節目です。

それまで実家で親元にいたのが

一人暮らしを始めたため、

当然自炊などやったことがないため

外食や中食が増える、

インスタントものに頼ってしまうことはご存じの通りです。

 

単身の高齢者が増えているというのは

ニュースでも度々話題になります。

20年後には65歳以上の男性の5人に1日は一人暮らし、

という予測もある程です。

大学生と高齢者は明らかに環境や背景が違いますので、

1つのカウンセリング方法では対応できないことが判ります。

まずは対象者の環境や背景を可能な限り知る必要があります。

 

 

 

一人暮らしの男性は料理しない?

こんなデータを見つけました。

詳細については上記のサイトを見て頂くとして、

ここでは小見出しを取り上げてみます。

特に注目するのは糖尿病の発症が多くなる

60〜79歳層の男女500人が回答、

うち100人が一人暮らしの「男女」です。

なので「一人暮らしの男性」には当てはまりませんが、

「傾向」としてみていくことにします。

 

■トピック1:

ひとり暮らしの高齢者の食生活の乱れが深刻化

→このアンケート結果について私なりの考察をつけていきたいと思います。

 グラフや数値については上記のサイトで確認してください。

図表1:

普段の食生活「栄養バランス」意識 

→一人暮らしの高齢者の半数が栄養バランスが「とれていない」と

 自覚しています。

 しかし夫婦であれば圧倒的に「とれている」と感じています。 

図表2:

普段の食生活で不足している栄養素

→面白いことに一人暮らしの栄養不足の傾向は

 「若い層と同じ」だという点です。

図表3:

栄養バランスがとれていない理由

(高齢者 ひとり暮らし n=45)

→80%・・・一人暮らしだから

 56%・・・毎回きちんと料理を作るのが面倒だから

 51%・・・いろいろなメニューを作るのが面倒だから

 

どうやら自炊しない原因は「一人暮らしそのもの」にあるようです。

 

■トピック2:

ひとり暮らし高齢者の食の特徴は、

 「孤食」「メニューの偏り」「不規則化」

 →一人暮らしの食事の周辺環境についてもアンケート結果があります。

図表4:

自宅での夕食を一緒に食べる人

→一人暮らしなんだから一人で食べるのは当たり前、ですが、

 僅かですが「友人・知人」と食べるという人もいるようです。

 驚いたのは「食べない」と答えている人がいることです。

図表5:

同じようなメニューの食事が続くこと

→食べるものは「同じようなものが続く」と答える人が多いようです。

  •  好きなものしか食べない。
  •  簡単に手に入るものを食べている。
  •  手頃な価格のものを食べている。

 などの理由が想像できます。

図表6:

1日の食事回数

→3食ちゃんと食べている人が想像より多くて安心しました。

図表7:

自宅での食事を決まった時間帯に食べる割合

 →ただ食事の時間は不規則になりがちです。

 

気ままに、自由に、と言えば聞こえはいいのですが、

食事が一日のローテーション化しているようにも見えます。

食べなくてはいけないから食べている、そんな風に私は感じます。

 

■トピック3:

ひとり暮らし高齢者の「惣菜・弁当利用」は、

20代ひとり暮らしより多い

→今回の質問の答えを探すヒントとなりそうな設問です。

 見ていきましょう。

図表8:

1週間に自宅で手作り料理を食べる回数

→70%・・・週10回以上

 24%・・・週1〜9回

  3%・・・週1回未満

  3%・・・ほとんど食べない

 という結果でした。

 1週間なので1日3食と考えると「21回」の食事の機会があり

 「手作りは週の半分以下」が30%いて、

 その人たちはほとんど自炊していない、と見ることができます。

図表9:

普段の惣菜や弁当(中食)の利用頻度

→ある意味イメージ通り、です。

 一人暮らしの50%が週2回惣菜や弁当など

 中食を利用していました。

 続いて

図表10:

普段の惣菜や弁当(中食)の購入場所

(購入者のみ集計対象)

→一人暮らし

 42%・・・コンビニ

 87%・・・スーパー

  8%・・・デパート

 21%・・・弁当屋・惣菜屋

 スーパーが圧勝、です。

 

スーパーには行く。

そこには料理の素材となる肉や魚や野菜などがもちろん売っています。

でも行くのは惣菜コーナー、という点は重要です。

 

■トピック4:

「宅配サービス」の利用意向者は高齢者の約5割

→ネットショッピングが普及している現在、

 「食事」までも宅配サービスが充実しつつある中で、

 一人暮らしの高齢者がどのように利用しているか興味があります。

図表11:

健康な食生活のための「宅配サービス」の利用意向

→約半数の家庭で宅配サービスを利用していて、

 その大きな目的に「健康的な食生活」があるということです。

 では「健康」のためにどんな食材をオーダーしているかと言うと、

図表12:

「宅配サービス」で購入したい食材

(高齢者の宅配サービス利用意向者)

→60代

 67%・・・牛乳・乳製品

 47%・・・野菜・果物

 39%・・・魚介類・魚介加工品

 39%・・・精肉・肉加工品

 38%・・・米

 36%・・・冷凍食品

 37%・・・飲料水・ミネラルウォーター

 30%・・・調味料

 となっていて、この傾向は70代でもほぼ同様です。

 重量があり持ち運びに不便な液体や米などは想像しやすいですが、

 「牛乳」は「健康的な食生活」の意味合いが

 強く感じられます。

 

このアンケート調査は、

男女込みでしかも糖尿病などの疾患の有無は判りません。

が、高齢者の一人暮らしの様子をイメージする上で

有効なスコアではないでしょうか。

これが今の高齢者のオーソドックスな一人暮らしの様子、

として捉えておくことにします。

 

一人暮らしの高齢者は、

宅配を上手に利用しつつ、

健康に留意した食材を取り寄せ調理をする時と、

スーパーで惣菜を買ってきて済ませる時が半々。

これが現実のようです。

 

 

自炊を勧める?

自炊を勧めるメリットについて考えてみます。

自炊をすることで、

  1. 自らよい食材を確かめて購入することができます。
  2. 食費の節約に繋がります。
  3. 味付けを自身でコントロールできます。

などのメリットが挙げられます。

メリットをちゃんと伝えた上で、

それでも自炊に難色を示す人に果たして勧めるべきでしょうか。

70代以上の男性は

「男は外で働き、女は家を守る」 

という時代を生きてきました。

「台所に男は立たない」なんて平気で言えた時代です。

それがいきなり「自炊」と言われても

何から始めていいやら判らないのかも知れません。

興味はあっても最初の1歩が踏み出せないのかも知れません。

 

自炊をしない人には

自炊をしない「理由」が必ずあるのです。

 

そこを大事にしなければ、

その後「食事カウンセリングは嫌なもの」と

捉えてしまうかも知れません。 

 

アンケートの中にも宅配を利用するのは

不足していると自覚している

「カルシウム」

「タンパク質」

を補うためである、としています。

つまり意識はあるのです。

 

 

自炊以外はダメ?

であれば、

スーパーの惣菜を「購入する際のコツ」を指導してみる、

というのはどうでしょうか。

惣菜選びのポイントを伝える。

主食・主菜・副菜をどんな風に揃えていくのか。

惣菜の貼られた「食品表示」や「栄養成分表示」の見方を伝えること。

手間は増えても、

それ以上に健康的なメリットも大きく増えるので

間違いなく受け入れやすいのではないでしょうか。

 

中食がいけないのではありません。

自炊がいいわけでもありません。

目的は

その人のカラダに合った食べものを

その人のカラダに合った食べかたで食べてもらうこと、

そう私は考えます。

 

 

自作と商品の違い

肉じゃがなら自分で作れますし、惣菜にもあります。

でもコカ・コーラは自分では作れません。

でも好きなだけ砂糖とミルクを入れたコーヒーは

自分でしか作れません。

こんな話がありましたーーー

その中年の男性は自分でおにぎりを握ってお昼に食べていました。

なぜ自分で握っているのかと言うと

「お店で売っているのは薄味だから」

なんだそうです。

コンビニやスーパーで売っているおにぎりの塩加減が足りなくて

たくさんの塩を使って自分で握っているそうです。

さて、売っているおにぎりと自分で作るおにぎり。

どっちがいいのでしょうか。

目的はその人に合った

「エネルギーと栄養」のバランスのはずです。

どこで入手したかよりも、

何を・いつ・どこで・どんな風に・どれくらい

食べているかをしっかりキャッチして、

知識や経験をフル動員して

受け入れやすいカタチに加工して、

提案すること、ではないでしょうか。

 

 

野菜を食べましょうと「言わない」アプローチ

先日の講演のタイトル。

野菜を食べましょうと「言わない」のは

野菜を食べてもらいたいから「言わない」のです。

私から=病院の管理栄養士から言われたから食べるのでは、

一時的に食べるようになったとしても

何かのきっかけで食べなくなってしまうでしょう。

だから「自らすすんで食べたくなる」ように

野菜に興味を持ってもらうための話をします。

野菜が好きになれば、後は自ら食べるようになります。

だって「食べたい」のですから。

そもそも惣菜を買いに「スーパー」には足を運んでいます。

今は目的地が惣菜コーナーなだけです、

それを生鮮コーナーに誘導するだけです。

そこがポイントです。

 

 

私が気になっていること

このアンケートの中で私が最も気になったのは、

自炊をしないことでも、

惣菜を買うことでも、

食事の時間が不規則なことでもありません。

「ひとりで食べている」

という点が問題だと強く感じています。

ぼっち飯という言葉があるように、

ひとりで食べる食事は「美味しい」でしょうか。

それも毎食です。

だからと言って、誰かと食べられるようにすることはできません。

たとえ外食しても結果的にひとりで食べることになります。

食は人生の楽しみであって欲しいと私は考えています。

単なる栄養補給ではいけないはずです。

毎回の食事が楽しみであって欲しいのです。

「テレビのバラエティを観ながら笑いながら食べてる」

と言ったことではなく、

「ああ、楽しくて美味しかった」

そんな食事であって欲しいのです。

これには私も明確な答えがあるわけではありません。

が、「何をどれだけ食べてるか」だけでなく

「食事を楽しんでいるか」

もカウンセリングの時の重要なポイントだと

私は考えています。

 

 

 

★ぶー!ポイント★

私の持論でした。

もちろん賛否両論あることは判っています。

そして

相手によって全く違った答えが必要なことも判っています。

ただ

ここに記したことが

患者さんの食生活を人生を豊かにするきっかけになれば、

と願っています。

 

もし違和感や違ったアイディアがあれば

ぜひ聞かせてください。

心からお待ちしています。

 

 

方法にこだわらず、目的にこだわる

です。

 

 

「そうは言っても外食ばかりだから

 バランスのいい食事なんて

 自分には無理」

そんな風に諦めてしまっている人、結構出会ってきました。

本人が諦めてしまっているから、私たちには何もできない。

そうではないはずです。

私たちが諦めてしまったら、終わってしまいます。

どこかに絶対に出口があるはず、

ただ見えにくいだけで必ず出口はあるはずです。

すぐに出口にたどり着かなくても、

一步一步すすめば間違いなく出口に近づいているのです。

私はそう信じています。

 

 

  

ー適材適食ー

小園亜由美(こぞのあゆみ)|管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士

▲YouTube【こぞのあゆみチャンネル】では野菜や果物など食べものに関する情報を動画配信しています★

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*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。