食事カウンセリングや講演会、市民公開講座などでよく訊かれる質問があります。
「タマゴは食べた方がいいの?食べない方がいいの?」
「タマゴは1日何個までならいいの?」
タマゴ問題。
こんな記事を見つけました↓
行ったり来たり…
またも浮上した「卵とコレステロール問題」
そういえば卵問題も微妙になってきました。昭和の時代には、卵は栄養価が高いから積極的に食べるべし、といわれていました。
ところが平成に入ると、血中コレステロールを上げる真犯人とされ、1日1個までといわれてしまいました。それがまた逆転し、いまでは卵と血中コレステロールは無関係、何個食べても大丈夫と、厚生労働省からお墨付きが出たほどです。
しかし今年に入って、アメリカの有名な医学雑誌に、卵を食べると血中コレステロールが上がり、心臓病が増えるという最新研究の論文が発表されたのです。卵にとっては、2審で無罪を勝ち取ったのに、検察側の上告で、また法廷に呼び戻されたようなもの。なんだか可哀想になってしまいます。
このように、食にまつわる健康情報は行ったり来たり。そのたびに我々も右往左往させられます。「いい加減にしてくれ」と言いたくなるのは私だけではありますまい。このカオスは、いったいいつまで続くのでしょうか。
一部転載:
タマゴと言えばコレステロール。 記事にもあるように厚生労働省は2015年の日本人の食事摂取基準からコレステロールの上限値をなくしました。
*食事摂取基準とは、厚生労働省が、健康な個人または集団を対象として、国民の健康の維持・増進、エネルギー・栄養素欠乏症の予防、生活習慣病の予防、過剰摂取による健康障害の予防を目的として制定したエネルギー及び各栄養素の摂取量の基準である。栄養士などの専門家向けの利用目的で作成されており、保健所や医療施設などで実施する「栄養指導」や学校や事業所などの「給食」の提供の根拠となる科学的データである。
また、糖尿病患者において、メタ・アナリシスで卵摂取量(コレステロール摂取量の代替指 標)と冠動脈疾患との有意な関連が認められていて(健康な人では認められていない)、卵の最大 摂取群は最小摂取群に比べて、1.54 倍のリスクになっている。しかし、日本人 9 万人を対象とした JPHC 研究 159)では、糖尿病患者においても、卵の摂取量と心筋梗塞罹患(心筋梗塞による死亡も 含む)には関連を認めていない。
転載元:
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042631.pdf
ーーじゃあ好きなだけ卵食べていいんだよね?!
ここでタマゴの栄養成分についてみてみましょう。
■鶏卵100gあたり
カロリー・・・・・・・・・・151 kcal
脂質・・・・・・・・・・・・10 g
飽和脂肪酸・・・・・・・・2.8 g
多価不飽和脂肪酸・・・・・1.7 g
一価不飽和脂肪酸・・・・・3.7 g
コレステロール・・・・・・・420 mg
ナトリウム・・・・・・・・・140 mg
カリウム・・・・・・・・・・130 mg
炭水化物・・・・・・・・・・0.3 g
水溶性食物繊維・・・・・・0 g
不溶性食物繊維・・・・・・0 g
タンパク質・・・・・・・・・12 g【約20%】
ビタミンC・・・・・・・・・0 mg
カルシウム・・・・・・・・・51 mg
鉄・・・・・・・・・・・・・1.8 mg【約25%】
ビタミンD・・・・・・・・・1.8 µg【約33%】
ビタミンB6・・・・・・・・0.1 mg
コバラミン・・・・・・・・・0.9 µg
ビタミンB12・・・・・・・0.5 µg【約35%】
ビタミンA・・・・・・・・・90 µg【約16%】
ビタミンE・・・・・・・・・0.6 mg【約15%】
葉酸・・・・・・・・・・・・26 µg【約18%】
ビオチン・・・・・・・・・・15.2 µg【約50%】
マグネシウム・・・・・・・・11 mg
となっています。数字の横に【】で表示したのは30歳〜49歳男性の推奨摂取量の参考数値です。*ただし通常Lサイズのタマゴは60g程度ですが、ここの数値は100gとして換算しているので注意してください。
タマゴは栄養素がバランスよく含まれていることが判ります。
もちろん全ての栄養素が整っているわけではありません、
- ビタミンC
- 食物繊維
- カルシウム
が不足しています。
タマゴが栄養的に優れた食材だということは判りました。次に問題となっているコレステロールについて見ていきたいと思います。
コレステロールと訊くとなんだか嫌なイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。でもコレステロールって何でしょう。まずは以前書いた日記で復習してみてください↓
とても間違えやすく、ごちゃになっている人も多いのでチェックしてみました。次にコレステロールの働きについてみていきます。
主なコレステロールの体内での働き
- 細胞膜の材料のひとつ。不足すると細胞が壊れやすくなり、病気に対する抵抗力が下がったり、貧血が起こりやすくなったりする。
- 脳内の神経繊維をガードする成分。
- 女性ホルモンの材料。
- 副腎皮質ホルモンの材料。
- ビタミンDの原料。
いかがでしょう。どれも健康な身体を保つためには重要な役割と言えます。つまり悪役なイメージのあるコレステロールですが、身体には必要な成分であるということなのです。
しかし、コレステロールが必要量よりも多過ぎるとそれが原因で不調や病気を引き起こします。それがみなさんのイメージする脳の血管が詰まってしまうなどの悪い印象の素になっています。
つまり、コレステロールは適正量であれば必ず必要。という事になります。同じようにタマゴも1日に何個まで、ではなく、適正量であれば問題ない、ということになります。また、タマゴは食べない人は、他の食材で不足した栄養素を補う必要がありますし、食べる人はその分他の食材で超過しないように調整する必要がある、ということです。またタマゴにはアレルギーもあります。アレルギーのある人は医師の指示に従う必要があります。
ーーじゃあ私は幾つまでタマゴが食べられるの?
その問いには正直答えることはできません。なぜならひとりひとりの身体は違うからです。同じ人でも時間の経過で身体は変わっていきます。あなたが健康な身体を保つために必要なエネルギーと栄養素の範疇であれば食べることができる、という曖昧な答えになります。
たとえばコレステロール値が高い場合、タマゴには多くの栄養素が含まれているので食材として優秀ですが、他の食材を組み合わせることでコレステロールをタマゴほど摂取せずに栄養を得ることができます。この場合もその人によるので一概には言えませんが栄養を摂るということはそういう風に考える方法もあるのです。
今回はタマゴについてお話しましたが、これはタマゴだけに限った話ではありません。多くの食材から少しずつ様様な栄養素とエネルギーを食事として摂取することの意味とはそういうこと、だと私は考えています。
★ぶー!ポイント★
どんな食品をどれだけ食べたらいいの?という問いに私もハッキリと答えられたらいいなと思っています。しかし、ひとつの食材ですべてをまかなうことはできません。だからこそ、色色な食材から様様な栄養とエネルギーを適正に摂ることがバランスのよい食事になるのではないでしょうか。
ー適材適食ー
小園亜由美(こぞのあゆみ)|管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。