その男性の栄養指導に入るのは夏以来でした。それまで8.5％だったHbA1cが3ヶ月後の今回7.8%まで下がっていました。HbA1cだけでなく体重も減っていました。その男性は食事カウンセリング中も終始無口で、あまり積極的に話をしてくれるタイプではないのですが、栄養指導を断ることもなく物静かな感じです。
何かしなければこんな数値は得られない。きっと自分に合った何かを見つけたに違いない。でも何をしたんだろう？と尋ねてみました。興味本位というより、この男性に合った方法がなんなのか知りたかったのです。
こんな答えでした、
ーーー『孤独のグルメ』って知ってる？
え！？ はい！知ってます、けど。なんならずっと観ていますけど。で、孤独のグルメが何か？
ーーーあれ、面白い。観てるととても美味しそうに食べてる。
はい！食べてますね！井之頭五郎ですよね！
『孤独のグルメ』を知らない人のために。
個人で輸入雑貨商を営んでいる井之頭五郎（いのがしら ごろう）が、仕事の合間に立ち寄った店で食事をする様を描いたグルメ漫画である。主人公が訪れる場所は高級料理屋などではなく、大衆食堂のような店がほとんどである。出先での食事がメインのため、出張など（7話・19話・特別編）を除けば大半が東京を中心とする関東の店となっている。料理の薀蓄を述べるのではなく、ひたすらに主人公の中年男が独りで食事を楽しむシーンと心理描写を綴っているのが特徴である。ドラマティックな展開などは少なく、あたかもドキュメンタリーのごとく淡々と物語が進行する。
現在地上波放送中です。一部視聴することもできます。さて話は戻って。
ーーーゴローがさ、お店に入るとメニューを一通り観て、さて何を食べようか、って考えてるよね。自分は今までお店に行くと、例えば最初にカツ丼が目に入ったらカツ丼！しかも大盛りって注文してたんだよ。要するに空腹を満たすためだけに食べていた。別に腹が膨れれば何でもよいって感じで。
そうだったんですね！
ーーーところがさ、ゴローは色色考えて注文して、そして運ばれてきた料理をさ、噛みしめるの。味わってるのよ。そこが、かっこいい！と思えてさ。今まで味わったことなんてなかった。カツ丼ならカツ丼の味がするし、別にそれだけだった。でも今はゴローの真似をして一口ひとくち噛みしめて味わってる。すると、へー、こんな味かー。ってゴローみたいに色色考えちゃうんだよね。そしたら、ご飯が楽しくなってきた！
味わうとことで食事がとても深く、広く、高くなります。
例えば。「甘い」の中にも色色あります。酸味があったり、とろけるようだったり、ほんのりだったり。甘いにはたくさんあるのです。
ーーーそうやって味わうようになったらね、食べる量が減った（笑）。味わっているうちにお腹がいっぱいになる。しかもとても満足するようになった。
それはとってもいいことです！！！
そんな『孤独のグルメ』話で盛り上がっていたら、なんと、過去作品は観たことがない！そうなんです。もうシーズン8なのに！なので「シリーズ全部面白いですよ！」「ゴローが行ったお店への聖地巡礼とかも流行ってるみたいですよ」などなど色色な話をしました。
★ぶー！ポイント★
「孤独のグルメ」を観ていると、私としてはちょっとゴロー食べ過ぎじゃない？って思わなくもないのですが、この男性にとっては、食を愉しむ大人の男のお手本となったようです。意外なことがきっかけになります。まさかグルメドラマがHbA1cや体重を下げるとは思いもしませんでした。
ー適材適食ー
小園亜由美（こぞのあゆみ）｜管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。
