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適材適食 -てきざいてきしょく-

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997食目「果物を食べると膵臓がんのリスクが抑えられる?」国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの研究から

「果物を食べると膵臓がんのリスクが抑えられる?」国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの研究から【適材適食】小園亜由美(管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ)

ダイズってどんなイメージがありますか?と前回は始めましたが、今回は果物です。

果物ってどんなイメージがありますか?

健康?身体にいい?美味しい?色鮮やか?みずみずしい?

「果物を食べると膵臓がんのリスクが抑えられる?」国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの研究から【適材適食】小園亜由美(管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ)

ビタミンカラーに代表されるように果物の多くはビタミンを多く含んでいて、ビタミンは私たちの身体に必要な栄養分です。

そんな果物について前回と同じJPHCのレポートがあります。

果物・野菜摂取と膵がん罹患の関連について
果物・野菜の摂取は、いくつかのがんに対する予防的効果の可能性が示されていますが、膵がんとの関連について、これまでの研究結果は一定していません。そこで、私たちは多目的コホート研究において、果物・野菜の摂取量と膵がんの罹患との関連を検討しました。

138食品が含まれる食品摂取頻度調査をもとに、果物(17品目)・野菜(29品目)の摂取量によって4つのグループに分け、最も少ないグループと比較して、その他のグループでがんの罹患リスクが何倍になるかを調べました。解析では、

・性別

・年齢

・地域

・BMI

・喫煙

・飲酒

・糖尿病既往

・膵がん家族歴

・魚摂取量

・肉摂取量

・運動習慣

・コーヒー摂取

・エネルギー摂取量

について、果物・野菜摂取のグループによる違いが結果に影響しないように統計学的に配慮しました。

果物・野菜摂取と膵がん罹患の関連について | 現在までの成果 | 多目的コホート研究 | 国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ

JPHC多目的コホート研究、ハザードなどの用語については前回のブログで説明しています。

 

果物と野菜に関する情報だけを抜き出し、可能な限り正確に果物と野菜の健康に対する影響を集計した、とのことです。その結果がこちら↓

果物・野菜摂取と膵がん罹患の関連について | 現在までの成果 | 多目的コホート研究 | 国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ

グラフをみていきましょう。

グラフは右に行くほど色が濃くなっていますが、濃い色ほど多く食べている場合です。左から

  • 全果物・・・・・・果物類すべて
  • 柑橘類・・・・・・ミカンなど柑橘類だけを抜き出した場合
  • 全野菜・・・・・・野菜類すべて
  • アブラナ科野菜・・キャベツやブロッコリーなどアブラナ科の野菜類を抜き出した場合
  • 緑黄色野菜・・・・ニンジンやトマトなど緑黄色野菜を抜き出した場合

となります。

まずは左のオレンジ系のグラフ=全果物と柑橘類ですが、どれもハザード値1.0より下を示しています。これは膵がんになるリスクを下げていることを意味しています。

一方、緑系のグラフ=全野菜、アブラナ科野菜、緑黄色野菜ですが、統計学的有意とされる部分をみるとハザード値1.30を示しているものもあり、膵がんになるリスクを挙げていると捉えることができます

レポートでは

この研究について

果物摂取は、膵がん罹患のリスク低下と関連が認められました。果物に含まれる、ビタミン等の抗酸化成分が膵がんのリスク低下に関係していると考えられました。

一方で、野菜摂取は、リスク増加との関連が認められましたが、喫煙者でリスクの増加が顕著になることから、野菜とタバコに含まれる成分との相互作用の可能性が考えられましたが、明確な理由はわかりませんでした

今回の研究は、日本人において、これまででは最大規模ではありますが、症例数が必ずしも多くはなかったので、偶然の結果の可能性も否定できません。日本人を含むアジアにおける疫学研究が少ないため、さらなる研究の蓄積が必要です。

果物・野菜摂取と膵がん罹患の関連について | 現在までの成果 | 多目的コホート研究 | 国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ

としています。

つまり、

  • 果物を多く食べると膵がんになるリスクを抑えてくれる。
  • 野菜は膵がんになるリスクを高める、と出たけれど、数が少ないので偶然こういう結果になったのかも知れないのでこれからも多くのデータと研究が必要。

としているようです。

 

まずこの研究は「がん」ではなくて「膵がん」に限っているという点を忘れてはいけません。

また対象が

果物(17品目)

  • 柑橘類(3種類:ミカン、ミカン以外の柑橘類=はっさく、いよかん、オレンジ)100%オレンジジュース
  • 上記以外(14種類:メロン、スイカ、リンゴ、100%リンゴジュース、ナシ、モモ、梅干し、カキ、イチゴ、ブドウ、キウイフルーツ、パイナップル、バナナ、パパイヤ)

野菜29品目

  • 緑色野菜(5種類:ホウレンソウ、シュンギク、ピーマン、ヨモギ、サヤインゲン)
  • 黄・赤色野菜(4種類:ニンジン、カボチャ、トマト、トマトジュース)
  • アブラナ科野菜(11種類:キャベツ、ダイコン、ダイコンの漬物、白菜の漬物、ハクサイ、コマツナ、チンゲンサイ、カラシナ、野沢菜漬物、フダンソウ、ブロッコリー)
  • ネギ類野菜(2種類:タマネギ、ニラ)
  • その他(7種類:キュウリの漬物、ナスの漬物、キュウリ、レタス、モヤシ、ゴーヤ、ヘチマ)

となっているだけで、何をどれくらい食べたのか判りません。果物には柑橘類が、野菜にはアブラナ科野菜と緑黄色野菜が含まれていることは判っていますが、何をどれくらい食べたのかが見つけられませんでした。

ただ、果物を多く摂ることで膵がんのリスクが下がることは傾向として判った、ということです。

 

ーーーじゃあ、果物を食べるようにしよう!

果物にはビタミンやミネラルが豊富です。それだけでなく様々な栄養が含まれているのでお菓子を食べるよりはずっといいです。しかし果物には果糖が多く含まれています。それこそ糖度と表示されているものもあります。食べ過ぎには注意が必要です。そして1回食べるだけでは効果はありません、適度な量を継続して食べることが大事です。ただし、治療中の人は担当医や管理栄養士に相談して量を決めるようにしましょう。中にはグレープフルーツのように服薬している薬と合わないものがありますので注意が必要です。

 

ーーーじゃあ、野菜は食べないようにしよう。

本当にそれでよいのでしょうか。たとえばこんな記事があります↓

  • 野菜を食べると体重が減りやすくなる。
  • 果物を食べると体重が増える傾向にある。

これも上記と同じJPHC研究の報告のひとつです。

さて、どう捉えたらいいのでしょう。前回のダイズの話に併せて次回一緒に考えてみませんか?

(つづく)

 

 

★ちゅー!ポイント★

私見ですが、今回のレポートは果物を食べる効果のひとつが増えたと捉えています。これまでも果物の効果については色々なレポートがありました。それらにひとつ新たに膵がんを予防する可能性が増えた、そんな風に考えています。  

 

ー 適 材 適 食 てきざいてきしょく

小園 亜由美 (こぞのあゆみ)管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・日本化粧品検定1級

【適材適食】小園亜由美(管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・日本化粧品検定1級)

▲YouTubeでは野菜や果物など食べものに関する情報を動画配信しています★

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*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。