2020年10月6日にアメリカの医学・生化学・分子生物学等の学術雑誌Cellセルに掲載されたとされる論文のお話です。紹介しているのはこちらのサイト↓
なんと、電磁場にさらされると血糖値が正常化するというものです。何を言っているのか全く判りません。一体どういうことなのでしょうか。上記のサイトを引用しながら見ていきたいと思います。その論文の掲載されている頁はこちらです(もちろん全文英語です)。
「採血の練習」がしたかったのがきっかけ。
糖尿病の研究をしていた博士課程の学生Sunny C. Huangサニー・ファン氏は、マウスから採血し血糖値を測定する練習をしなければなりませんでした。が、研究室には実験用のマウスはいても、練習用のマウスがいなかったそうです。そこで、同僚のCalvin S. Carterカルビン・カーター氏と共に他の研究に使われていたマウスを借りてきて、採血と血糖値の測定の練習をしたそうです。
すると意外な結果がでました。借りてきたマウスの血糖値が正常値だったのです。実は借りてきたマウスというのは遺伝子組み換えによって必ず2型糖尿病を発症するように調整された個体だったからです。つまり血糖値が高くないとおかしいのです。
ーーーなぜ???
Sunny C. Huangサニー・ファン氏とCalvin S. Carterカルビン・カーター氏は、原因を2つ想定しました。
①マウスが遺伝子組み換えたものではなかった
②遺伝子組み換えマウスだが2型糖尿病が何らかの原因により治療されていた
①については採取した血液を再度精査したところ間違いなく遺伝子組み換えマウスだったそうです。
となると「②遺伝子組み換えマウスだが2型糖尿病が何らかの原因により治療されていた」の可能性が深まりました。
そもそも借りたマウスは、電磁場が動物の脳と行動に及ぼす影響を研究するために、強い電磁場に断続的にさらされた特別な個体たちだったのです。
電磁場って何?
ミステリーの途中ですが重要なキーワードが出てきました、電磁場です。 電磁場とはなんの事でしょう。(大丈夫です、私も詳しくは判りませんので難しい説明はできません。)似た言葉に電磁波というのがあります。
電磁場(でんじば, 英語: electromagnetic field, EMF)、
あるいは電磁界(でんじかい)
電場(電界)と磁場(磁界)の総称。
電場と磁場は時間的に変化しないような静的な場合を除いて必ず同時に存在し、マクスウェル方程式で関連づけられる。電場、磁場が時間的に一定で 0 でない場合、それぞれは分離され、静電場、静磁場として別々に扱われる。
電磁場の変動が波動として空間中を伝播するとき、これを電磁波という。
電磁波(でんじは 英: electromagnetic wave)
電場と磁場の変化を伝搬する波(波動)である。光や電波は、電磁波の一種である。電磁波は波と粒子の性質を併せ持ち、散乱や屈折、反射、また回折や干渉など、波長によって様々な波としての性質を示す一方で、微視的には粒子として個数を数えることができる。電磁波の量子は光子である。電磁放射(英: electromagnetic radiation)とも呼ばれる。
なるほど!ワカランです。
電磁波については以前少し調べたことがあります↓
言葉で表すと、
「電磁波」とは、
- レントゲン撮影などに用いられるエックス線等の「放射線」、
- 太陽光線や赤外線などの「光」、
- テレビ・ラジオ・携帯電話等に利用されている「電波」、
- 電力設備等から発生する「電磁界」
などの総称です。
ということのようです。
詳しく知ろうとするときっととても難しい学問になってしまうのですが、例えば、美しい夕焼け、レントゲン、スマホ、電子レンジなど私たちの生活にはたくさんの電磁波があり、私たちの住む地球も電磁波を帯びているのです。
理科年表オフィシャルサイト/地学部:日本各地の地磁気要素(2000.0年値)
二人の研究者はさらに調べた。
Sunny C. Huangサニー・ファン氏とCalvin S. Carterカルビン・カーター氏は、電磁場が糖尿病にどのような影響を与えるのか、調べたそうです。別の糖尿病になっているマウスを用意、睡眠中に地球の電磁場の100倍を当てたそうです。 すると、電磁場に3日間さらしたマウスはインスリンの効きがよくなり糖尿病の症状が改善されたのです。
さらに、電場と磁場の両方=電磁場にさらされたマウスは糖尿病の症状が改善されたにもかかわらず、磁場だけにさらされたマウスは糖尿病の症状が悪化したのです。
ヒトではどうなのだろう。
そこでシャーレで培養したヒトの肝臓の細胞を電磁場にさらして実験しました。その結果、マウス同様、ヒトの肝細胞も電磁場に反応、インスリンに対してより敏感に反応するということが判ったそうです。
インスリンに反応がよくなるーーーということは、僅かなインスリンでも細胞が反応して糖を取り込み、結果血糖値を下げるということに繋がります。
なぜ電磁場にさらされるとインスリンの反応が高まるのか。
結果は分かっても仕組みが判らないのであれば治療には使えません。そこで既に電磁波が細胞内部の酸化ストレスに影響を与えることが判っていたので、インスリンではなく酸化ストレスに注目したそうです。
酸化ストレス(さんかストレス、英: Oxidative stress)
活性酸素が産生され障害作用を発現する生体作用と、生体システムが活性酸素を直接解毒したり、生じた障害を修復したりする生体作用との間で、均衡が崩れた状態のことである。生体組織の通常の酸化還元状態が乱されると、過酸化物やフリーラジカルが産生され、タンパク質、脂質そしてDNAが障害されることで、様々な細胞内器官が障害を受ける。
簡単に言ってしまえば酸化ストレスとは錆びること、です。(酸化についての参考にこちら↓)
酸化ストレスは様々な病気に繋がります。
酸化ストレスの人体への影響は大きい。判明しているだけでも、
- ADHD、
- がん、
- アテローム動脈硬化症、
- パーキンソン病、
- ラフォラ病、
- 心不全、
- 心筋梗塞、
- アルツハイマー病、
- 鎌状赤血球症、
- 脆弱X症候群、
- 扁平苔癬、
- 尋常性白斑、
- 自閉症、
- うつ病、
- 慢性疲労症候群、
- アスペルガー症候群
などの疾患・症候等が酸化ストレスと関与している。
という具合です。
研究者たちは細胞と電磁場の関係について調べた結果、細胞がどれくらい酸化ストレスを受けているかを調べるマーカー物質が40%低下、逆に還元反応を行う遺伝子が活性化していたという事が判ったそうです。
これは、ある程度の電磁波にさらされることで、ヒトやマウスの細胞の酸化ストレスが減り、インスリンへの反応が高まったことを意味しています。
肝細胞のミトコンドリア。
肝細胞のミトコンドリアは糖尿病と関係していることが判っていいます。そして肝細胞のミトコンドリアから磁気を帯びることが知られている常磁性の物質を除去して電磁場にさらす実験を行いました。
常磁性(じょうじせい、英: paramagnetism)
外部磁場が無いときには磁化を持たず、磁場を印加するとその方向に弱く磁化する磁性を指す。
ミトコンドリアとは何でしょう。
ミトコンドリア(英: mitochondrion、複数形: mitochondria、中: 线粒体)真核生物の細胞小器官である。
二重の生体膜からなり、独自のDNA(ミトコンドリアDNA=mtDNA)を持ち、分裂、増殖する。mtDNAはATP合成以外の生命現象にも関与するほか、酸素呼吸(好気呼吸)の場として知られている。
また、細胞のアポトーシスにおいても重要な役割を担っている。mtDNAとその遺伝子産物は一部が細胞表面にも局在し、その突然変異は自然免疫系が特異的に排除する。
ヒトにおいては、肝臓、腎臓、筋肉、脳などの代謝の活発な細胞に数百、数千個のミトコンドリアが存在し、細胞質の約40%を占めている。平均では1細胞中に300-400個のミトコンドリアが存在し、全身で体重の10%を占めている。
ヤヌスグリーンによって青緑色に染色される。
単語Mitochondrionはギリシャ語のμίτος, mitos「糸」とχονδρίον, chondrion, 「顆粒」に由来し、そこからミトコンドリアを糸粒体(しりゅうたい)と呼ぶこともある。
これも簡単に説明すると、食べたものからエネルギーだけを取りだし、それを身体の中で使いやすい形(=ATP)に変換するのがミトコンドリアの主な働きで、動物だけでなく、植物や菌類などのすべての細胞の中に存在するのです。
先程の常磁性の物質を除去したマウスは、電磁場にさらされてもインスリンへの反応に変化は見られなかったそうです。
この結果は、電磁場だけでなく、電磁場に反応する常磁性物質も必要だということを示しています。
いかがだったでしょうか。
電磁場にさらされていると体内の酸化ストレスを抑えられ、その分インスリンへの反応が高まり、その結果血糖値を下げる。
今までにはなかった治療へのアプローチです。
でも気になるのは電磁波の強さですが、実験で使用したのは低周波で安全性の高いものだとしています。
もしかすると、糖尿病の治療方法は将来大きく変わるかも知れません。
*なお、私の知識や判断で書いていますので、必ず自分で確かめてください。元記事はこちら↓
★ちゅー!ポイント★
ーーーえぇぇぇぇ!!!じゃあ電磁波浴びなくちゃ!
ちょっと待ってください。人体にどのような影響があるかは、今後専門機関で様々な実験を行って、充分な安全性と有効性が確かめられてからでなければ、どのような事が起きるのか今はまだ判りません。今回の記事は「糖尿病の治療方法になるかも知れない」というレベルで考えてください。
たとえ、この電磁場治療が確立したとしても、血糖値を正常まで下げる効果があるということです。栄養とエネルギーのバランスの摂れた食事、適度な運動、充分な睡眠など健康的な生活習慣を過ごすことになんら変わりはありません。
そうだとしても、今後の研究に期待★ですね。
ー 適 材 適 食 ーてきざいてきしょく
小園 亜由美 (こぞのあゆみ)管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・日本化粧品検定1級
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。