新型コロナウイルス感染症拡大防止のための緊急事態宣言。外出を控えることが多くなってきている中、食事はどう変化したのかについてレポートがありました。
リンクアンドコミュニケーションでは、京都大学大学院医学研究科社会疫学分野(教授:近藤尚己氏)と共同で、AI健康アプリ「カロママ」の利用者を対象に、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う生活様式の変化と健康について研究している。この度、2020年の緊急事態宣言期間中(※)の生活様式の変化が食生活に及ぼす影響について分析し、学術論文が国際学術誌「Appetite」に受理された。詳細は以下の通り。
(※)期間:2020年4月7日~5月13日
2020年4月〜5月ということは第2回目の緊急事態宣言の時になります。
緊急事態宣言期間中は、自炊のメニューが10品/月程度増加
論文の結果を基に試算すると、緊急事態宣言期間中の1ケ月の平日(※1)で自炊のメニューが10.1品増えており、在宅ワークを行っているひとは4.2品/月多いことがわかった。一方、子どもと関わる時間が5時間以上増えた人では、5.9品/月減少、また、うつの傾向がある人はより少なく、14.3品/月減少という結果だった。
※1: 本研究で定義される『緊急事態宣言期間』は2020年4月7日~5月13日であり、緊急事態宣言前(2020年1月1日~4月6日)と比較した結果を示している。ここでは、緊急事態宣言前に、自炊のメニューを毎日10品食べていた人を基準として試算している。
自宅で過ごす=外食が減り、自炊することが多くなり、一方で調理する時間の都合もやりくりできる、というのが理由かも知れません。また、外食できないなら、いつもより手間をかけた料理を作ろう!と思ったのかも知れません。そういう意味で、当時パスタやホットケーキミックスが品薄という状況になったのを想い出します↓
「在宅ワーク」を行っている女性は、月に野菜106g、果物65gの摂取量が多い
論文の結果をもとに試算すると(※2)、全対象者の結果では、緊急事態宣言期間中に野菜の摂取量が1ヵ月あたり261g(レタス0.8個分 ※3) 増加していた。
「在宅ワーク」を行っている人は78g/月(レタス0.2個分)多く、なかでも在宅ワークを行っている女性では、106g/月(レタス0.3個分)多いという結果だった。一方で、「子育て時間」が5時間以上増えた人のなかでも、女性および45歳未満の人では220~271g/月の減少傾向がみられた。「うつ傾向がある」人では、さらに少なく月に324g(レタス0.9個分)減少という結果だった。
今回の結果により、女性は生活様式の変化により、野菜の摂取量に影響を受けやすい可能性があることがわかった。
※2: 緊急事態宣言前に、野菜を毎食70g食べていた人を基準として試算。
※3:レタスの個数は1個350gとして算出。
野菜を1ヶ月に
- 在宅ワーク・・・・・・・・・・・・75g 増
- 在宅ワークの女性・・・・・・・・・106g 増
- 子育て中(45歳未満/女性)・・・・220〜271g 減
- うつ傾向のある人・・・・・・・・・324g 減
という結果だったそうです。
全体、特に在宅ワークの女性で野菜の摂取量が増えた、何故野菜をいつもより購入し、食べようと思ったのかについての明確な理由は判りません。が、 子育て中と比較すると340gも差が出てしまったことから、やはり調理にかける手間暇の有無が原因のひとつと言えるのではないでしょうか。
果物の摂取量については(※4)、「在宅ワーク」を行っている人は、全体で59g/月(バナナ0.4本分)、女性では在宅ワークを行っている全対象者よりも少し多く、65g/月多いという結果だった。男性では、統計学的に有意な差は見られなかった。女性は食事の質が良くなり、男性よりも在宅ワークの恩恵を受けた可能性がある。
一方で、「子育て時間」が5時間以上増えた人の果物の摂取量も、野菜と同様に減少傾向がみられ、1ヵ月あたり78g(バナナ0.5本分) 減少したことがわかった。女性と45歳未満の人では、野菜の摂取量と同じく減少していた。これらの人は、緊急事態宣言期間中に育児に費やす時間が増え、野菜と果物の摂取量に影響があったのかもしれない。また、うつ傾向がある人でも野菜と同じく減少していることがわかった。
※4: 緊急事態宣言前に、果物を毎日50g食べていた人を基準として試算。
※5:バナナの本数は1本150gとして算出している。
果物を1ヶ月に
- 在宅ワーク・・・・・・・・・・・・59g 増
- 在宅ワークの女性・・・・・・・・・65g 増
- 子育て中・・・・・・・・・・・・・78g 減
- 子育て中(45歳未満/女性)・・・・減少
- うつ傾向のある人・・・・・・・・・減少
という結果だったそうです。
お菓子の摂取頻度は、「一般社員・職員」が4%、「契約・嘱託・派遣社員」が7%増加
菓子類の摂取頻度について、緊急事態宣言前と緊急事態宣言期間中の平日の摂取頻度を比較したところ、緊急事態宣言前よりも4%増加していた。なかでも「一般社員・職員」、および「契約・嘱託・派遣社員」の摂取頻度が増加していた。その他の「管理職」や「自営業」においは統計学的な有意差はみられなかった。一概には言えないが、「一般社員・職員」と「契約・嘱託・派遣社員」は、よりお菓子を摂りやすい環境にあったのかもしれない。
お菓子の摂取頻度(平日)
- 全体・・・・・・・・・・・・・・・4% 増
- 一般社員・職員・・・・・・・・・・増加
- 契約・嘱託・派遣社員・・・・・・・増加
- 管理職・・・・・・・・・・・・・・変化なし
- 自営業・・・・・・・・・・・・・・変化なし
という結果だったそうです。
★モゥー!ポイント★
突然強いられた在宅ワークという新しい働き方によって、ライフスタイル、特に食生活がどのように変化したのか、とても興味深いアンケート結果です。
野菜や果物の摂取量が増えた、特に女性に顕著に表れたというのは、やはり「バランスのよい食事」ということが頭の中にあり、食事を適当に済ますのではなく、自分のために楽しみのために自宅で過ごす時間を活用した、のかも知れません。一方で、
子育てがいかに時間と労力を割くのかが判ります。そして、
うつ傾向のある人は食事をする歓びがさらに薄れてしまった、ということなのかも知れません。
私もこの緊急事態宣言の時に当院に通院する患者さんに食事に関するアンケートを行いましたが、見事に二極化が観られました。
生活環境が食生活に大きな影響を及ぼすことは間違いないようです。
ー 適 材 適 食 ーてきざいてきしょく
小園 亜由美 (こぞのあゆみ)管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・日本化粧品検定1級
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。