ーーーもう、歳だから・・・。
年齢を重ねていくと、若い頃のように身体が動かず、それだけでなく心もついていかない、そんな話を聞くことがあります。
でも、それって思い違いかも知れない!という研究発表がありましたので紹介します。
「年を取ると注意力が落ちる」との常識を覆す実験結果が報告される
一般的に、年を取ると物忘れが激しくなったり認知機能が衰えたりすると言われています。しかし、日常生活を送ったり仕事をしたりする上で重要な「注意力」を細かく分けて、それぞれの能力と加齢の影響を分析した研究により、年を重ねることで向上する能力もあることが分かりました。科学者らはこの研究結果を、「加齢や病気による脳の衰えを防ぐ研究につながるかもしれない」と位置づけています。日本で特に深刻な問題となっている高齢化は、アメリカなどの先進国でも急激に進行しつつある世界的な現象です。そこで、ポルトガル・リスボン大学のジョアン・ベリッシモ助教授らの研究チームは、58歳から98歳までの被験者702人を対象に、加齢に伴う注意力の変化を調べる研究を行いました。研究チームが、PCの画面に出る矢印の方向をキーボードで答える「注意ネットワークテスト」を使って被験者の注意力と実行力に関係する3つの認知機能を調べたところ、刺激に備えて準備する「警告(alerting)」という機能は、加齢とともに低下することが確認されました。一方、特定の情報を取捨選択する「定位(orienting)」と、刺激への反応を意図的にコントロールする「実行抑制(executive inhibition)」という機能は、年齢が上がるにつれて向上していたことが判明しました。ベリッシモ助教授は、今回の研究で注目した3つの機能の違いについて、「例えば車を運転している時、交差点にさしかかる前にその心の準備をするのが『警告』で、歩行者などの予期せぬ動きに注意を向けるのが『定位』です。また、鳥や看板など気が散るものを頭から排除して、運転に集中できるようにするのが『実行抑制』です」と説明しています。研究チームは、加齢に伴って「定位」と「実行抑制」の能力が向上していたのは、生涯を通じてこれらの能力が訓練されたことによる効果が、脳の衰えを上回っているからではないかと推測しています。一方、「警告」は訓練では向上しないため、脳の衰えに伴って反応が鈍くなってしまうと考えられているとのこと。この研究結果について、アメリカ・ジョージタウン大学の神経学者であるマイケル・ウルマン氏は、「これまで注意力や実行機能に関する能力は、年を取ると全体的に低下すると考えられてきました。しかし、大規模な実験の結果、一部の重要な要素は生涯を通じた訓練により向上することが示されました。今後、注意力や実行機能を向上させる訓練の研究が進展すれば、加齢や疾病による脳の衰えを防ぐこともできるようになるのではないかと考えています」と話しました。
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なお引用元には文中に出てくるグラフや図案などがありますので、ぜひご覧ください。
「加齢による衰え」について信じられている6つの誤った通説について
残念ながら、人間は加齢によって衰えが生じる生き物です。少しでも衰えを抑えて健康でよい人生を送り、周囲の人に負担をかけることのないようにさまざまな取り組みを行うことが多いわけですが、数多くの研究結果を総合して並べてみると、実際には加齢による影響というのは考えられているほど大きなものではないという実体が見えてきます。
以下のグラフは、加齢に伴う変化に対して18歳から64歳までの人が「起こる」と考えている割合(青)と、65歳以上の人が「そうなった」と実感している割合(緑)を比較したもの。「記憶力の低下」「運転ができなくなる」「重い病気」「性的能力が落ちる」「悲しい気持ちや気分の低下がおこる」「孤独感」「金銭面での不安」「誰かの重荷になる」の問いに対し、全ての項目で65歳以上の人は若い世代の予想よりも「そうなった」と実感している数値が低いという結果が分かりました。つまり、若い人が思っているほど加齢による問題は重大ではないということが明らかになっています。このように、加齢に伴う変化に対する恐れと実体験の間には大きな差があることが浮き彫りになっています。そんな加齢にまつわる6つの通説について、以下ではその実際の姿が明らかにされています。◆通説1:歳をとると気分の減退が起こるものである
「老いは人生の減退期」と若い人が勝手に想像するのは簡単なことですが、実際に年齢を重ねた人たちがそう感じているかどうかは別問題。ある調査では「心の満足度」は70歳代まで増加するという結果が出ていたり、100歳を超えるご長寿さんが「総合的に高い満足状態を保っている」という報告を目にすることもあります。以下のグラフでは「何歳を超えたら『歳をとった』ということになるか」という質問に対する世代別の回答を示していますが、30歳未満は「60歳」、30~49歳だと「69歳」、50~64歳は「72歳」、そして65歳以上になると「74歳」と、年齢を重ねるにつれて「老人」の基準がどんどん高くなっていく様子が分かります。実際に年齢を重ねてみると、「老い」は若い人が心配しているほど深刻なものではないと実感してくるのかもしれません。◆通説2:認知力の低下は避けられない
加齢に伴って脳の能力が低下することは生物的に避けられないことです。反応テストの結果が低下したり、判断速度が遅くなってしまうのは統計学的に明らかなことではありますが、それゆえに実生活の中にも影響が大きく現れると考えるのは、いささか早計であるようです。トロント大学のLynn Hasher教授はある調査結果の中で、認知症による影響を除けば「研究室で実施される典型的な能力テストによる結果は、実生活における年配者の能力をシステム的に低く判断するものである」として、テストの数値と実生活での影響には違いがあることを語っています。
また、テキサス州立大学のDenise Park教授が行った調査では、「裁縫を習ってキルティングをつくる」や「iPadの使い方を覚える」といった新しい知識に取り組んだグループと、「パズル遊び」や「お話し会」のように既存の能力だけで十分な活動を行ったグループを比較したところ、予想どおり新しい知識を学んだグループは記憶力や処理速度において劇的な改善が見られたことを発表しています。この結果を受けてPark教授は「メンタル面に関わる新しいものへの挑戦は非常に重要です。心の中の『居心地のいい場所』を飛び出すことが大切です」と語っています。
「同世代の中で自分のことをどう感じるか」という質問に対する回答を世代別に並べたのが以下のグラフ。18~29歳の間では「年齢相応(Their age)」と答える人が多かったのに対し、それ以外の世代では世間一般よりも「自分は若い(Younger)」と答える人が多かったことが明らかになっており、「老けている(Older)」と答える人はほとんどいなかったことがわかります。◆通説3:歳をとると生産性が落ちる
アメリカでは、労働人口のうち55歳以上の人が占める割合は22%にも達しているとのことで、これは1992年の12%から大幅に増加しています。しかしその一方で、社会全体の生産性が大きく低下したとは考えられていません。生産技術の改善による力添えがあるのはもちろんですが、年齢による生産性の低下が一般的に考えられているよりも影響がないというのも事実と言え、アメリカ・アクロン大学のHarvey Sterns氏は調査の結果「加齢と職務遂行能力には実質的な関連はない」と結論づけています。
また、ドイツの「Max Planck Institute for Social Law and Social Policy(マックス・プランク社会的法律および社会政策研究所)」はメルセデスベンツの工場で働く労働者3800名に対して調査を実施。年齢の高い労働者は若い労働者に比べて重大なミスを起こす割合が低かったことを明らかにし、ベテラン労働者は培ってきた経験をいかしてミスを回避することで、生産性が低下することを避ける能力を身に付けていると結論づけています。◆通説4:独り寂しくなりがちである
歳をとると活動の幅が狭くなり、人とのつながりが少なくなることも避けられませんが、しかしこれは「孤独」を意味するものではありません。事実、年齢を重ねるほど友人関係がより磨かれていくという複数の調査結果も出ているほど。
テキサス州立大学のKaren Fingerman教授は「充実した結婚生活、良好な友人関係、衝突の少ない親子・兄弟関係や、より緊密な社会的なつながりを挙げる高齢者の比率は、若い世代よりも多いものです」とし、さらに「悩みのタネになるような問題のある人間関係」に関わることが少ないとしています。
年齢とともに関わる人の数は少なくなるものですが、その中でより自分にとって重要な人間関係がふるいにかけられることで、自分にとってなくてはならない関係を持つ人が抽出され、結果として親密で豊かな人間関係が形づくられるというメカニズムが明らかにされています。◆通説5:年齢とともにクリエイティビティが低下する
20代前半で世界を席巻したサ・ビートルズのジョン・レノン/ポール・マッカートニーや、若くしてAppleを立ち上げたスティーブ・ジョブズ/スティーブ・ウォズニアックのように、「クリエイティビティ(創造力)」は若い人だけの特権と捉えられがちですが、たとえば19世紀に顕著な功績を残した人物は必ずしも若い世代に限られたものではありませんでした。
カリフォルニア大学デービス校のDean Keith Simonton教授は、思考の飛躍が大きな功績につながる数学や論理物理学などの分野においては20代のシャープな思考能力が大きな役割を果たしますが、歴史学や哲学など蓄積された知識が必要とされる分野においては60歳代の研究者が活躍することも珍しくないことを挙げています。また、作家のマーク・トウェインや画家のポール・セザンヌ、建築家のフランク・ロイド・ライトなどの人物は、その後年に大きな功績が評価されるに至っています。◆通説6:運動は、いくらでも多くするほうがよい
また、加齢による体の衰えをカバーするためには運動がよいことが広く知られていますが、適度な分量というものがあることを心に留めておく必要がありそうです。アメリカ・ミズーリ大学のJames O’Keefe教授の報告書によると、研究チームは2001年から2013年にわたり、約1100名のジョギング愛好家と約4000名のジョギングをしない人を対象に研究を実施。すると、ジョギングを行っている人は平均して男性で6.2歳、女性で5.6歳も長生きすることが明らかになりました。
しかしジョギングをしている人の中でも、たとえば時速12km以上というハイスピードでのジョギングを定期的に続けている人の場合になると、長生きをする割合が低下し、寿命も短くなるという傾向が明らかにされています。O'Keefe教授は「運動のしすぎによる心臓の損傷が原因」と指摘し、一例を挙げると一週間で走る距離を50kmまでとし、激しい運動を行う場合は1日あたり1時間程度、そして定期的に十分な休息を取ることで、運動と健康の良好なバランスを取ることを推奨しています。
★モゥー!ポイント★
「老い」とは生まれてから何年経ったのかで決めるものではなく、その人の心と身体の年齢を示すものだ、ということなのかも知れません。
いつまで経っても若いっていう人、いますよね。では、その人は何で若いと周りから思われているのでしょうか。そこに若さの秘訣があるのかも知れません。
ー 適 材 適 食 ーてきざいてきしょく
小園 亜由美 (こぞのあゆみ)管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・日本化粧品検定1級
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。