今週のお題「お気に入りの飲み物」
『ソイレント』という名前を聞いたことがありますか?
ソイレント(soylent)とは
米国の栄養基準に準拠した完全食のことで、
Rosa Labs, LLC. が販売している「生存に必要な栄養素がすべて含まれ、従来の食事が不要となる」とされる飲み物。後に、スナックバーも作られている。なお、FDA(アメリカ食品医薬品局)はダイエットサプリメントに分類している。
味はほんのり甘く、この粉末を水などに溶かして飲む。
というもの。
完全食とは
健康を維持するために必要な栄養をすべて含んだ食品、あるいは食事
ということ。
乱暴に言ってしまえば、
ソイレントさえ
摂取していれば
食事をする必要はなくなる
というもののようです。
『さすが米国!』
ーー実は日本でも完全食はあり販売されています。
「コンプ(COMP)」というもので、
日本の栄養基準に準拠した完全食です。
紹介記事↓
商品サイト↓
完全食「ソイレント」を1ヶ月飲み続けたらどうなるのか?
という大変興味深いレポートを見つけたので紹介します。
以下、記事を抜粋しながら見ていきましょう。
なお記事では「ソイレント」だけではなく、
「ヒュール(Huel)」という同様の完全食と比較しながら
話を進めています。
人間は食の主目的を疎かにしすぎた
「わたしたちはあまりに長い間、主目的よりも味を優先して食品を最適化してきた。しかし本来、食品は体に必要なあらゆる栄養を与えるものでなくてはならないのだ」と。
「世の中に出回っている食品があまりにおいしすぎるため、人々はそれを求め、はまり、食べすぎてしまうのです」とハーンは語る。この悪習からわれわれを助け出すために登場したのが、こうした代替食だった。
美味しさだけを追求してカラダへの悪影響を考慮しない時代がありました。
栄養価は低く著しく偏っていて高カロリーな食品。
ただただ美味しさだけの嗜好品。
それらにはなんの注意書きもなく簡単に手に入れることができました。
現在は変化の途中です。
人々の中に「食が健康に大きく影響する」という事実が
広く一般化してきているため、
カロリーや栄養バランスを全面に押し出した商品も増えてきています。
「完全食」もそんな大きな流れから生まれてきた、
そんな感じがします。
第1の試練:味
ソイレントは、英国ではすぐに飲めるボトルタイプでのみ販売されている(粉末タイプはもうすぐ登場する)。ボトル1本で摂取できるのは400キロカロリー。軽い食事と同程度だ。タンパク質は20g含まれていて、かなりの満腹感がある。
風味は、味なし、モカ味(カフェイン入り)、カカオ味の3種類だ。後者ふたつは甘いが、普通のチョコレートミルクやラテ・ミルクシェイクのように適度な甘さだ。味なしタイプはどうも好きになれない。飲めないことはないが、味が平坦すぎるのだ。
ヒュールのメインの味はベリー、ヴァニラ、コーヒーの3種類だが、これに加えて味を変えられるフレーヴァーパウダーが多数ある(パイナップル、ストロベリー、チョコレートなど)。ただ、どれもあまりおいしそうには思えなかったので、ブルーベリーなどのベリー系をひとつかみミキサーに入れてみた。これで、かなり味がよくなることがわかった。
- 味なし
- モカ味
- カカオ味
- ベリー味
- ヴァニラ味
- コーヒー味
というラインナップのようです。
食で大事なのは(当たり前ですが)「味」です。
どんなに栄養価が高い判っていても
美味しくないものは食べられませんし、
食べ続けることは困難です。
同様に美味しくない=味が苦手なものも敬遠してしまいます。
美味しくないけど栄養価の大変高いものと、
美味しいけど栄養価の大変低いものがあったら
多くの人が後者を選ぶことでしょう。
前者を選ぶのは
知識があって栄養価に価値を見いだしている場合ではないでしょうか。
面白いのは「完全食」にもやはり「味が必要」という点です。
栄養を摂る目的なのに味付けをしている。
食べる上で味覚は欠かすことのできないものと言えるのかも知れません。
第2の試練:飽き
元の味のハードルを乗り越えたところで、新たな問題にぶち当たった。味に飽きてきたのだ。
数週間ほど定期的に飲み続けたあとで、わたしの口はソイレントやヒュールを受け付けなくなっていた。しかし、そんな状態になったのはわたしだけではなかった。食事代替飲料をテーマにした掲示板には、同様の悩みを訴えている人があちこちに存在する。
「飽きる」というのは不思議です。
どんなにお気に入りのものでも飽きることがあります。
飽きるというのは味覚に於いては
その味を記憶してしまっている、という事でしょう。
繰り返され続けることで「新たな刺激」を感じられなくなり、
お気に入りだったものの価値を下げるという事なのでしょう。
初めて味わう感覚。未経験な感覚は強烈なものです。
慣れてしまうことで新鮮さが奪われ価値を見いだせなくなる、
そういう状態が飽きるという感覚なのかも知れません。
そして飽きることにより「工夫」が生まれます。
試行錯誤をして慣れてしまったものに
「新たな刺激」を付加しようとします。
ヒトには「常に新しい刺激」が必要なのかも知れません。
そうしなければやめてしまうのです。
でも、ここで不思議なことに気づきます。
私たちはよくお米を食べます。
もちろん毎食ではないにせよ、
何十年間もお米をご飯として食べ続けています。
面白いことです。
完全栄養食」は本当に完全か?
ソイレントの場合、ボトルタイプには植物ベースのタンパク質20gと26種類のヴィタミンやミネラルが含まれており、「必要な栄養素をすべて摂取できる」と最高経営責任者(CEO)のブライアン・クローリーは述べている。一方、ヒュールは26種類のヴィタミンやミネラルが含まれた「超便利な完全栄養食」だとハーンは言う。
どちらの製品にもオート麦由来の炭水化物が含まれている。オート麦は一般的に、血糖にプラスの影響を与えるとされている。
言い換えれば、どちらの製品も減量を目指す人向けではない。自分が食べているものを正確に把握したい人や、忙しすぎて座って食事をする時間もないような人をターゲットにしているということだ。
それでもソイレントの購入者の多くは、この製品を減量のために使用しているとクローリーは言う。「食事の心配をしなくていいので、摂取カロリーが低くなる」からだそうだ。
ーー完全食は減量を目指すヒト向けではない
普通に食事をしていると、
栄養素が不足したり、エネルギーが高くなってしまうが、
完全食は必要な栄養素が揃っている=過不足ない
とするのであれば、減量の可能性はあると考えます。
それよりも、
「必要な栄養素はすべて加工食品の飲料から摂取できると主張することは、まさに思い上がりでしかありません。そもそも自然食品にどんなヴィタミンやミネラル、植物栄養素が含まれているのか完全に解明されていないというのに、それを再現することなどできるでしょうか?」とローソンは語る。
まさにコレ、です。
食や食に関するメカニズムが完全に解明されていない
ということです。
栄養素と呼ばれているものはたくさんあります。
それらが単独で体内で機能しているわけではなく、
相互に関係し影響しあっているはずです。
トマトの成分とその機能をすべて解明できていないのです。
一方サプリメント、
たとえばビタミンCの錠剤にはビタミンCしか入っていません。
現在は、多くのマルチヴィタミン剤には100パーセント以上のヴィタミンが含有されています。こうしたフォーミュラ食は『もうひと口だけ栄養分を補給する必要があるがその時間がない』という人のためのものです。
そしてビタミンCだけを自然の食材から摂る事はできません。
「栄養を推奨摂取量をとれば十分」とは限らない
いくつかの研究から、低カロリーな食生活を目的としてつくられた特定の食事代替飲料は、短期間の減量には有効であることがわかっている。だが、英国栄養・生活医学協会(British Association for Nutrition and Lifestyle Medicine)のコミュニケーション・ディレクターを務めるダニエル・オショネシーは、この種のフォーミュラ食に頼ることは正しい方法ではないと警告する。やめられなくなるからだ。
フォーミュラ食とは
摂取エネルギーの制限を必要とする方のために開発された食品で、肥満の原因となる糖質、脂質を極力抑え、必要十分量のたんぱく質、ビタミン、ミネラルをバランス良く配合した食事代替食品である。 『身体に必要な栄養素が十分含まれていれば1日の摂取カロリーを低く抑えても健康上、支障はない』というVLCD(Very Low Calorie Diet)理論に基づき開発され、肥満改善のための食事代替品として、医療機関などにおいても使用されている。
というものです。
完全栄養食は、長期間向けではない
英国栄養財団(British Nutrition Foundation)の栄養科学者ステイシー・ロッキャーは、食事代替製品は長期間利用するものではないと指摘する。「医師の指導を受けながら、期間限定で利用すべきです」
だが、食事代替飲料が栄養学的に完璧であれば、脂肪や砂糖や塩分が大量に含まれているスナックよりはマシだろうと、ロッキャーは付け加えた。ただし、「ときどきであれば」という条件つきだ。
さて、今回の体験をまとめよう。ソイレントもヒュールもかなり気に入ったが、どちらも長期間向けではないことがわかった。
次のように語る栄養専門家のローソンに、わたしも同意見だ。「こうした製品のボトルを開けるのは簡単に思えますが、お皿を出して、調理済みのサケの切り身、冷えたサツマイモ、サラダ菜を何枚か並べるのも同じくらい手早くできます。そっちのほうが、はるかに体にいいのです」
という感じで記事は締められています。
この記事に出てくる専門家たちはそろって
「時々であれば」
と言っています。
栄養基準を満たした完全食と呼ばれている食品にも拘わらずにです。
生きて生き続けていくために、
健康なカラダを創り維持するために、
食事は欠かすことはできません。
食べたものは自分の一部になります。
何を選び何を食べるかで自分が変わるのです。
それだけはきっと間違ってはいません。
その上で
何を食べるのか、
考えてみてはいかがでしょうか。
★ぶー!ポイント★
食はミステリーに溢れています。
まだまだ知らない食べものがたくさんあります。
どんどん新しい食べものが生まれています。
食べる、それは誰にでもできること。
生まれたばかりのあかちゃんからお年寄りまで
教わることなくできること。
それは呼吸や睡眠と同じように
生まれたその瞬間から
意識せずにできるようになっています。
だから今、食べることに注目して食べることを考えてみる。
そんなきっかけになったら幸いです。
ー適材適食ー
小園亜由美(こぞのあゆみ)|管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。