お題「#おうち時間」
2020年5月3日付けの共同通信社のサイトで興味深い記事を見つけました。
外来患者の3%に抗体
神戸市立病院調査、千人対象神戸市立医療センター中央市民病院(同市中央区)の研究チームは、4月7日までの8日間に外来を受診した患者千人の血液を検査したところ、約3%が新型コロナウイルスに感染したことを示す抗体を持っていたと2日発表した。
感染後しばらくしてできるIgG抗体が33人から検出された。救急や発熱外来を受診した患者は対象から外した。神戸市全体の性別や年齢の分布に合わせて計算すると、4月7日の緊急事態宣言が出る前に、既に2.7%に当たる約4万1千人に感染歴があったことになるという。当時、神戸市でPCR検査によって把握されていた感染者数の数百倍が感染していた可能性がある。
情報を整理してみます。
- 調査期間 2020年3月31日〜4月7日(8日間)
- 場所 神戸市立医療センター中央市民病院
- 対象者 外来患者1000名
- 結果 33名からIgG抗体検出
ということになります。詳しく掘り下げてみようと思います。
①調査期間
緊急事態宣言が出たのが2020年4月7日ですので、ちょうど発令直前の1週間ということになります。
②場所
神戸市立医療センター中央市民病院は、重症等指定病院で厚生労働省からも診療体制が最も整っているとお墨付きの医療機関です。一般病床760床、精神病床8床、感染症病床10床を完備しています。
③対象者
まず外来に来た人たちという点に注目です。外来とは病院に通って診察や治療を受けること、です。ということは体調不良やケガなどで病院を訪れている人たち、つまり、新型コロナウイルス感染症の症状の自覚のない人たちと考えてもよいと思います。
④結果
まずはIgG抗体アイジージこうたいについて簡単に説明します。抗体とは
抗体こうたい
自分とは違った異物(抗原=ウイルスや細菌など)が体内に入り込んだとき、そのたんぱく質に反応し、体から追い出すためにできる対抗物質。
*さらに詳しい情報はこちら↓
という働きをします。いわゆる免疫の具体的な作用のひとつです。IgGとはそんな働きをする抗体の種類と考えればいいと思います。
つまり、抗体が身体の中にあるということは以前その抗体がやっつける相手がいた、ということ。そしてその抗体が新型コロナウイルスに対抗するための抗体であれば、その人は過去に新型コロナウイルスに感染していたことがあることを意味します。そして測定の結果1000人中33人に新型コロナウイルスの抗体がある事が判ったのです。
これは何を意味しているのでしょう。
新型コロナウイルス感染症の特徴でもある高熱や全身の倦怠感、痛み、咳などの症状があれば、新型コロナウイルス感染を疑って受診するはずです。でも今回の対象は外来の人たちです。つまり、明確な新型コロナウイルスの症状が出ていない人たちと考えられます。いわゆる無症状病原体保有者で、それが3%存在すると言うことです。
そしてその3%の人たちは外来に来ています。つまり何らかの身体の不調やケガで外来に来ているわけです。ということは、身体の不調やケガをしていない、医療機関を受ける症状の出ていない人は含まれていないと言えます。と考えれば、少なくとも3%。最低3%と言えるのかも知れません。思っている以上に多くの人が新型コロナウイルス感染症に感染しているのかも知れない、ということになります。
では、この3%という数字を福岡に当てはめて考えてみたいと思います。
*なお以下の内容はあくまでも推測やイメージを伝えるものであって本当に福岡で起きていることを示しているものではありませんのでご注意ください。
2015年の人口調査を元に
- 福岡県人口 約5,110,000 人
- 福岡市人口 約1,540,000 人
だそうです。
ちなみに兵庫県神戸市の人口は約1,540,000 人で偶然にも福岡市とほぼ同じ人口です。ということで、3%の数字を当てはめてみると、
- 福岡県内予想感染者数 約153,300 人>飯塚市全市民(約131,492人)
- 福岡市内予想感染者数 約46,200 人>中間市全市民(約44,210人)
という数字が出てきます。
福岡県全体で飯塚市民全員よりも多い感染者がいて、福岡市で言えば中間市民全員よりも多い感染者がいてもおかしくない状況と言えます。
もう少し日常的なもので3%を考えてみましょう。
例えば公共交通機関です。電車やバスの乗客を想定したいと思います。電車やバスなどには定員が定められています。定員とは
定員ていいん
団体の所属、施設や乗り物などの収容に関する最大人員。
定員とはある一定の基準の下にその区画内に入れる最大人数、またはその目安という意味がある。区画の中に入れる人数については、座席(立ち席を含む)としての性格があるため、面積に応じて決定される場合が多い。また、自動車の場合は座席、バス・鉄道等の公共交通機関では座席数のほか、乗り合いの場合はつり革の数を含めて定員(ていいん)と呼び、これを以てこの数値とする言い方がある。また、旅客機やエレベーター等の場合、重量を以て決定される。
ということで、イメージとしては座席が満席でつり革などが埋まっている混雑している状態、と考えればいいと思います。
福岡市営地下鉄の1車輌の定員は約146名のようです。その3%はと言うと4人になります。
西鉄バスの一般的な路線バスの定員は75名なので、その3%は2人になります。
まとめると満員の場合、
- 電車1車輌中 約4人
- バス1台中 約2人
が新型コロナウイルス感染症に既に感染していた可能性があるということになります。
3%を根拠としたより詳しい記事
神戸大などの研究グループは、数百倍〜1000倍の患者がいると推計
一方、神戸大学や神戸市立医療センター中央市民病院などの研究グループは、クラボウの販売する抗体検査キットを使って、抗体検査を実施した。査読前の論文が公開されている。
2020年3月31日から4月7日までに中央市民病院を外来受診した患者の血液を無作為に抽出し、1000人を検査。その結果、33人で抗体が陽性となり、3.3%の陽性率となった。統計的な誤差を考慮すると、95%の確率で2.3〜4.6%の間に入る。
これを神戸市の人口(151万8870人)に当てはめると、5万123人の陽性者がいる推計となる。4月7日時点でPCRで陽性が確定して報告されたた神戸市の感染者数(69人)と比べ、506~1013倍の推計値となった。
さらに年齢や性別の影響を調整したところ、陽性率は2.7%。統計的な誤差を考慮すると、95%の確率で1.8〜3.9%の間に入る。神戸市内の陽性者は4万999人と推計され、神戸市の報告数の396〜858倍となった。
研究グループは、考察で、日本政府が医療体制の崩壊を避けるために症状が続く人や感染リスクの高い人に絞ってPCR検査の数を制限したことに触れ、こう指摘した。
「感染が確認された人と実際に感染した人の数に大きな差があることがこの研究で示されたことから、日本は流行状況を把握していない可能性がある」
その上で、「数百倍に及ぶ違いは許容できず、この感染症とより良く戦うためにも、より良い戦略を立てるべきだった」と日本の検査戦略を批判している。
日本の推定感染者が他の国とそう変わらないと推計されるにも関わらず、死亡者数が少ない理由については、BCGの予防接種などが影響している可能性を示唆したが、さらに研究する必要があるとした。
また、使用した検査キットは精度の検証が不十分で、風邪などの原因となる他のコロナウイルスの抗体に反応する可能性がある、性別や年齢を調整しても患者の選択に偏りがあるなど、研究の限界も示した。
そのうえで、「これらを考慮しても、感染確認者数と、我々の推定値の違いは大きく、我々の調査結果の解釈は揺らぎなく妥当だと考える」としている。
転載元:BuzzFeed
上記の元となった論文はこちら。(PDFファイル 英文)
なお同頁では、さらに詳しい情報が掲載されています。
実際のところ日本にどれぐらい感染者がいるの?
続々と出てくる抗体検査の結果の意味
感染した人の体内にできてウイルスと戦う「抗体」の有無を調べる「抗体検査」が広がり、日本でどれぐらい新型コロナウイルスが蔓延しているのか推定する調査の結果も続々と出てきています。検査の限界も含め、私たちはこのデータをどう捉えたらいいのか、複数の専門家の意見を聞きました。
★ちゅー!ポイント★
3%という数字を信じ、それが全国で適応されたと仮定した場合、想像以上に新型コロナウイルスの感染は拡がっている、と私は感じています。
今回記事にしたのは恐怖を煽る目的では決してありません。そうではなくて、もう既に他人事ではなく、自分の生活圏内に新型コロナウイルスが存在していて、だからこそ、感染しない/感染させないことがとても重要ではないか、と思い記事にしました。
だからこその外出自粛。だからこその手洗いうがい。なのだと改めて思いました。
ー 適 材 適 食 ーてきざいてきしょく
小園 亜由美 (こぞのあゆみ)管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・日本化粧品検定1級
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。