2019年12月3日火曜日、第3回西区在宅多職種連携研究会【口から食べる】を支えるオーラルマネジメントに参加、口腔環境・口腔ケアについて勉強してきました。
ーーーえ?管理栄養士なのに歯の話?
管理栄養士は栄養やエネルギーなど食=食べるものに関するプロフェッショナルですが、食べるということはクチに入れる、歯で噛むことです。そして、糖尿病と歯の健康については密接な関係があることが判っています。
糖尿病のある人は歯周病になりやすく、歯周病のある人は糖尿病になりやすいのです。糖尿病のある人は免疫抵抗力が低下して、歯周病に感染しやすくなります。そして歯周病になるとインスリン抵抗性が高まり、血糖値が上昇しやすくなります。ですから、糖尿病と歯周病は深い関係があるのです。*歯周病についての詳しい情報はこちらをご覧ください。
今回は歯周病だけでなく、口の中全部=口腔環境と口腔ケアについてのお話でした。私的な備忘録として以下に記します。
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表題:口から食べるを支えるオーラルマネジメント
講師:平塚 正雄 先生(医療法人博仁会 福岡リハビリテーション病院 歯科)
内容
1 口腔ケアの基本的認識
・口腔ケアとは
2 口腔ケアからオーラルマネジメントへ
・回復期リハ入院患者の口腔所見
・長期臥床が口腔領域に及ぼす影響
3 オーラルフレイル対策の重要性
・オーラルフレイル予防が「口から食べる」を支える
1 口腔ケアの基本
福岡リハビリテーション病院では、歯科の設立により、肺炎の患者の減少を実現できた。
経腸栄養患者の口腔環境
- 健康な口腔では、咀嚼・嚥下・発生などの機能を活用して口腔内の自浄作用が保たれているが、機能していない口腔(非傾向摂取の状態など)では、唾液分泌が減少し、唾液におよる自浄作用も低下。
- 口腔管理が大事。
- 口腔内の感覚刺激がなければ、口腔機能は廃用する。
- 中には口腔内に服薬したはずの薬が残っており、それにより炎症がおこり歯科のトラブルと発展することもある。
口腔機能低下は高齢者の肺炎と関連する
- 口腔衛生状態の悪化に加え、嚥下機能の低下や瀬既販車の低下は誤嚥性肺炎の原因となる。
- 口腔衛生習慣+口腔機能低下=口腔衛生状態の悪化。
ADLが低下した患者の口腔内細菌数の日内
- 変動菌の変動から、口腔内菌数は朝食前に最高値、夕食後に最低値。毎食前から食後に有意に口腔内菌数の減少あり。そのため、口腔細菌数を左右するのは「食事」ただし、口腔微生物を全て消失させるひつようはなく、「病原微生物」を消失させればよい。常在菌まで死滅させる殺菌消毒剤を頻回に使わない。生食や水道水の清掃方法も併用する。
感染源対策としての口腔ケア
- 口腔ケアにより肺炎の発症を-40%、肺炎死亡率-50%。
- 口腔内のマッサージ+唾液を飲み込む=咳反射や嚥下反射を改善。
入院患者の口腔の問題
- 経腸栄養→口腔乾燥から口腔機能の廃用。
- 傾向摂取→食物残差や服用薬剤の残薬が生じやすい。
- 高齢入院患者は低栄養が多く、サルコペニアの症例も多い。口の筋肉低下もあり、これまで使っていた義歯が使えない。
口腔乾燥と嚥下障害
- 健常者 唾液嚥下は20回/時間。口腔乾燥があると唾液嚥下におよる嚥下機能のウォーミングアップが減り、誤嚥を生じやすくなる。唾液が減ると空嚥下が減り、嚥下機能の低下を招く。
- 乾燥が強い場合や唾液が少ない場合は保湿剤を併用した口腔ケアと口腔・顔面マッサージを行う。
- 朝起床後に顔を洗い、塩水で歯を磨くのは嚥下のウォーミングアップともいえる。・乾燥した口腔内では粘膜が傷つきやすい。
2 口腔ケアからオーラルマネジメント
口腔ケアは誤嚥性肺炎を予防することだけが目的ではない。また、その原因を考えて対策しなければいけない。
口腔ケアからオーラルマネジメントへの転換
- 食べられる口作り
- 患者・家族や医療従事者への情報共有
- 歯科との連携・共同
- 口腔の健康を多職種で支える
咽頭の付着物
- 口腔ケアで口の中はキレイになるが、咽頭までキレイにすることは難しい。
- 嚥下させると咽頭キレイにできる。嚥下できないと、古くなった口の上皮が咽頭に付着する
不良姿勢の臥床は開口を引き起こす
- 不良姿勢のまま放置されると腹式呼吸が抑制され、胸式呼吸が活動を始める。すると胸鎖乳突筋が緊張状態となり頭部後屈を引き起こす=開口する→口腔乾燥する※頭部の位置も大事。
体幹と嚥下諸筋の関係
- 嚥下に関する筋肉は頚や体幹に関係するものが多い。
- 体幹の支持が不安定だと嚥下の筋肉の運動が阻害されやすい。
- 呼吸時の胸腹部の運動も妨げやすく、咳などの嚥下のための防御機能そのものも阻害される。
長期臥床状態
- 力強くものを送り込めなくなる
口腔ケアを拒否する患者
- 口腔への患者刺激が不足すると過敏や異常感覚が出現。過敏の出現は口腔ケアへの拒否につながり、口腔衛生の取り組みを妨げてしまう。
- 過敏除去のために指や軟らかいスポンジによる脱感作が必要。
- 過敏があると技師省着や歯科治療困難。摂食・嚥下機能の向上に時間がかかる。
- 口腔の感覚・運動体験不足により出現すると考えられる口腔過敏や口腔の異常感覚を予防するためには口腔ケアを毎日行うことが必要=口の中をキレイにすること+刺激を与えること。
口を開けてくれない
- 口腔ケアや食事介助の際に口をあけてくれないことがある。これは、原始反射。本人の意志とは関係なく刺激されると出現する。
- 認知機能が衰えていても口元に近接するものがあれば反射的に開口するの原始反射によるもの。
3 オーラルフレイル対策の重要性
オーラルフレイルの定義
- 老化に伴う様々な口腔の状態(歯数・口腔衛生・口腔機能など)の変化に口腔健康への関心の低下や心身の予備能力の低下も重なり、口腔の減弱性が増加し、食べる機能障害へ陥り、さらにはフレイルに影響を与え、心身の機能低下にまでつながる一連の減少及び過程。http://www.jda.or.jp/pdf/oral_flail_leaflet_web.pdf
- 脳卒中になってから口腔機能が低下しているわけでなく、以前に口腔機能低下していることが多い。脳卒中の発見前に口腔ケア・口の機能維持をすることが大事。・健康であれば義歯があってなくてもある程度咀嚼できる。義歯はあくまでも座位を前提として作るものなので、座位がとれなくなると使えなくなることもある。
食形態と唾液
- 粥食と普通食で唾液分泌を測定したところ、咀嚼を必要としない食形態(粥食)の長期摂取は刺激唾液分泌を低下させる可能性あり。
- 咀嚼量が回復すれば唾液分泌増加させることもわかっている。
加齢に伴う嚥下機能低下に対する運動法
- 咀嚼力(咀嚼するための口腔環境)+舌+舌骨上筋群のチカラが必要。
- 咀嚼力=う蝕や歯周病、義歯不適合に対する歯科治療を行う。
- 舌=食塊を咽頭へ送り込む、食道に押し込む。
- 舌トレーニング用ペコパンダ
- 舌骨上筋群 嚥下時に舌骨を前上方に牽引。起動の閉鎖と食道入口を開く。嚥下おでこ体操、頸部等尺性縮尺手技、呼気抵抗負荷トレーニング
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私の勤務する二田哲博クリニックは外来・糖尿病専門です。なので、まず寝たきりの患者さんに出会うことはありません。糖尿病と歯周病の関係は知っていましたが、口腔環境、口腔ケアが健康を維持し守る上でとても重要だということを改めて知りました。
★ぶー!ポイント★
健康なカラダを作り維持するためには、適度な運動と適切な食事が大切。しっかり食べるためにも歯は大事。運動、食事、歯。色色なことが実は繋がっているんですね。
何をいつ、どれくらい、どんな風に食べるのか、だけでなく、ちゃんと食べることができるのか、ということにも注目しなければいけない、と考えました。
ー適材適食ー
小園亜由美(こぞのあゆみ)|管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。