ーーーあなたは食事や運動習慣の見直しをしていますか?
厚生労働省から発表された最新の国民健康・栄養調査(令和元年/2019年)の集計結果を観ていきたいと思います。このデータは厚生労働省のサイトでPDF形式で公開されていて誰でも閲覧することができるようになっています。
モノクロでぱっと見ちょっと判りにくいのでこのデータをもとに作図しなおしてみました。様々な集計結果が掲載されていますが、その中から食事・運動に関する一部を取り上げたいと思います。*より詳しい情報を知りたい人は上記のサイトにアクセスしてください。
平成29年/2017年の集計結果についても紹介しています↓
なお、今回の集計は新型コロナウイルス感染症が流行する直前のアンケートです。
全国の20代〜70歳以上の男女合計5674名を対象に、生活習慣の中でも食事と運動について7つの選択肢の中から選んで答えるという形式で行われました。選択肢の内容を確認していくと、右から
■食習慣に問題はないため改善する必要はない。
これは糖尿病を初めとする生活習慣病などの疾病に罹患している対象者だけではないため、病気かどうかは関係なく、自分自身で食習慣に問題がないと判断している場合を意味します。
■既に改善に取り組んでいる。それが6ヶ月以上継続しているもの。
これは食習慣の見直しをするきっかけは不明ですが、6ヶ月以上という長期にわたって継続しているので、ほぼ習慣化に成功していると考えられます。
■既に改善に取り組んでいる。それが6ヶ月未満の間継続しているもの。
こちらは習慣化とは言い切れないものの、食習慣の改善に意欲があると言えます。
■近いうちに改善するつもりである、概ね1ヶ月以内にというもの。
こちらは食習慣改善の意欲はそれなりにあるが、まだ取り組んでいないと受け取れます。
■改善するつもりである、概ね6ヶ月以内にというもの。
こちらは食習慣改善の意欲はあるのですが、まだ何も行動を起こしておらず、しかも開始するのが6ヶ月以内とかなり長期なので要注意な段階と言えます。
■関心はあるが改善するつもりはない。
こちらは改善に否定的ではないものの、実際には食習慣に差し迫った危機感はなく、よほどの事がない限り行動には移さないグループと言えます。
■改善することに関心がない。
まったく食習慣に問題を感じていない上、改善するつもりもないグループです。1番右の濃いオレンジ色に似ていますが、右の場合、「食習慣に問題はない」と認識している点が大きく異なる部分です。
これら7つの選択肢にどう答えたのかを観ていきたいと思います。
【食習慣改善】
食習慣改善の意思について観ていきたいと思います。
画面左側が男性、右が女性で、中央に年齢が20歳から10年刻みとなっています。早速統計結果を重ねてみたいと思います、まずは男女それぞれの総数が↑こちらです。
次に各年代別はと言うと、
↑このようになります。
さらに食習慣の改善の意思を中心にハイライトしてみると、
まずは↑やる気があって実際に行動している群、
次に↑関心はあるが、まだ行動に至っていない群、
そして↑行動するのが難しい群です。
「関心はあるが改善するつもりはない」群と「改善することに関心がない」群が全世代を通じて1/3程存在することが判ります。
そして驚きなのが、「食習慣に問題はないので改善する必要がない」と答えた70代が男女共に30%いると言う点です。30%という数値は20歳〜29歳という若い世代よりも多いのです。若い世代よりも中高年の方になるにつれて男女共にオレンジ色や黄色が増えていることから健康への関心が徐々に高まっていく一方で、70代という世代はそれまで続けてきた食習慣を変えたくない傾向を持った人が多いと言えます。
【運動習慣改善】
では、次に運動についても観ていきたいと思います。
まずは性別毎の総数です。
運動改善に対し好意的を示すオレンジ色よりも否定的なブルーが多い印象です。
↑世代別。
さらに運動習慣の改善の意思を中心にハイライトしてみると、
↑やる気があって実際に行動している群、
↑関心はあるが、まだ行動に至っていない群、
↑行動するのが難しい群です。
運動に対しても、食事の時と同様に、
年代が上がる毎に運動改善に対して徐々に好意的になる一方で、70代男性の約23.9%、女性の約17.3%が運動習慣に問題はない、と考えていることが判ります。
さらに調査は深掘りをしています。
自身で食事や運動の習慣に問題を感じていない人達を除く、6つのカテゴリに対し、食事の改善、運動の改善ができない理由を選択肢の中から選んでもらいました。食事に関しては6つから。運動に関しては5つの選択肢から選んでもらいました。
まずは食事改善ができなり理由については、
左の赤色から順に
・仕事、家事、育児などが忙しくて時間がない
・外食が多い
・自分を含め、家で用意する者がいない
・経済的に余裕がない
・面倒くさい
・特にない
です。
食事改善に関しては、
画面左の「改善することに関心がない」グループと、
画面右の「既に6ヶ月以上取り組んでいる」グループの
集計結果が似ていることに気づきます。意見や行動は真逆なのに理由はほぼ一緒というのが大変興味深いです。
では、運動はどうでしょうか。
左の赤色から順に
・仕事、家事、育児などが忙しくて時間がない
・病気やケガをしている
・歳をとった
・面倒くさい
・特にない
です。
運動改善に関しては、青枠の関心があってこれからやるつもりとしている層に
赤色で示した「仕事などが忙しくて時間がない」という理由が目立ちます。
と同時に
「面倒だ」という意見も多く、頭で考えてはいるが最初の第一歩を踏み出すことがいかに難しいかを示しているようです。
食事と運動の両方に含まれている選択肢だけ抜き出して観ると、
このようなグラフになりました。
明らかな特徴として、
グラフが凹凸関係で真逆となっています。
仕事などの忙しさを理由にしていない一方で妨げとなるものもないとしていると捉えている層が画面上のオレンジ枠「既に6ヶ月以上改善に取り組んでいる」群と画面下のグレー枠「改善することに関心がない」群と、まったく真逆の意識を持っているにも関わらず同じ選択肢を選んでいる点。
とそれとは反対に画面中央の「やる気はあるがまだ行動していない群」だけ「特に仕事などが忙しく時間がない」ことを理由にしています。
新型コロナウイルス感染症が世界的に流行する前、2019年の調査結果から、糖尿病など生活習慣病を含む一般的な人達は、仕事や家事や育児などと言った毎日の生活・日常の中で、忙しい中でも時間を作り、言い訳せずに積極的に食事や運動の改善を行う人と、食事や運動など気になってはいるが、忙しさを理由に実行にうつせない人と、今までの生活習慣を一切変える気が無い人の大きく分けで3タイプが年代や性別によって若干異なるが存在していて、中でも70歳以上になると生活習慣を変える気がない人が多いということになるのではないでしょうか。
★ちゅー!ポイント★
緊急事態宣言中、その後のコロナ禍の当院の糖尿病患者へのアンケートと合わせて考えると大変興味深い結果です。
ー 適 材 適 食 ーてきざいてきしょく
小園 亜由美 (こぞのあゆみ)管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・日本化粧品検定1級
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。