以前ミルクの話をしてきました。
今回も牛乳についてのお話です。今回はパスチャライズとノンホモについて観ていきたいと思います。
牛乳はいくつかの種類に分けることができる、とお話しました。分け方の基準は主に成分でした。逆に乳牛から搾ったそのまま=生乳を除く牛乳には共通点があります。それは殺菌です。殺菌の方法にも色々あるのですが、牛乳の場合は熱による殺菌を主に採用しています。それをパスチャライズと言います。
パスチャライゼーション(英: pasteurization)
食品等の加熱殺菌法のうちで、摂氏100度以下の温度で行う方法をいう。1866年に微生物学の祖であるルイ・パスツールとクロード・ベルナールによって、ワインの殺菌法として最初に導入されたことからパスツールの名をとって命名されている。のちに導入された高温殺菌法(摂氏100度以上で行う)と対比して、低温殺菌法(ていおんさっきんほう)とも呼ばれる。この方法をパストリゼーションと表現する場合もある。
パスチャライゼーションは、微生物を完全に死滅させることではなく、害のない程度にまで減少させることを目的としており、従って一部の耐熱菌は残存しうるため、一般に消費期限は高温殺菌品より短く設定されている。
つまりパスチャライズとは100℃以下の低温殺菌法のことを指す言葉で、パスチャライズド牛乳(パス牛乳)と呼ばれています。
低温と言ってもざっくり100℃以下としているのですが、低温殺菌牛乳の場合、
- 低温保持殺菌(LTLT法):63度で30分間加熱殺菌する方法。詳細は低温殺菌牛乳の項を参照。
- 高温短時間殺菌(HTST法):72度から78度で15秒間程度加熱殺菌する方法。
の2種類が主流のようです。(低温と言いつつ高温短時間というのはちょっと混乱しやすいので注意ですね)
実は市販されている牛乳の場合は低温で殺菌する方が少ないようです。なのでパッケージなどにパスチャライズド牛乳/低温殺菌牛乳と表記がされていると思います。
低温があれば高温もある、ということで一般的な牛乳の多くは高温殺菌牛乳と言えます。殆ど120℃〜130℃で2秒〜数秒間殺菌していてこれをステアリライゼーション=超高温殺菌法と呼びます。かなりの高温なので殺菌ではなくほぼ滅菌です。
参考までに↓
では、低温と高温があるのは何故なのでしょう。
そもそも殺菌をする意味は常温で保存できる牛乳を作るため、なのです。
ーーーだったら低温ではなく超高温にすれば全ての菌を一掃できるのでは?
熱は牛乳に含まれるタンパク質やカルシウムを変化させて、生乳の自然な風味や栄養を変えてしまうだけでなく、場合によっては栄養成分を失ってしまうのです。
低温殺菌だから「自然の甘み」があり、スッキリおいしい!
(国際酪農連盟公認実験方式によるタンパク質変性試験)
変性していないミルクタンパク質量が多いほど白く、低温殺菌牛乳がより生乳に近いことが分かります。超高温殺菌牛乳と呼ばれる120℃~150℃ 1~3秒の殺菌方法は、栄養成分は変わりませんが、タンパク質が変性し、風味が変化します。 タカナシ低温殺菌牛乳は 66℃ 30分でゆっくりと殺菌しています。生乳本来のおいしさを大切にしていますので、ほんのり甘みが感じられます。
画像左から「生乳、低温殺菌、超高温殺菌、水」となっています。生乳と低温殺菌の色あいは殆ど変わっていないように見えます。
このように害の出ない程度の殺菌ができ、風味や栄養も損なわない方法としてパスチャライズが考え出されたのです。
では一般的な高温殺菌の牛乳はダメなのでしょうか。
高温殺菌の最大のメリットは低温に耐えてしまう菌を殺菌することができるので、より長い間保存することができるようになります。そもそも殺菌の目的は常温での保存でした。なので、高温殺菌された牛乳は目的に合っています。
そして高温殺菌牛乳にはもうひとつ特徴があります、それはホモジナイズされている点です。
ホモジナイズ(均質化)
牛乳の消化吸収をよくすることと、乳脂肪の浮上、 即ちクリームラインの防止と品質保持の目的で、乳脂肪中の脂肪球を細かく砕き、 安定した状態にすることを均質化(ホモジナイズ)といいます。
牛乳の脂肪球の粒子は3〜7ミクロン(1/1000�o)ですが均質化することにより、 1ミクロン以下になります。このために脂肪球の粒子が細分化され表面積が大きくなり、 牛乳が胃腸の中で消化液に広く接するので消化が良くなるのです。
- 消化吸収のアップ
- 乳脂肪の浮上防止
- 品質保持
のために乳脂肪を均質化するのがホモジナイズで、 高温殺菌牛乳の場合ホモジナイズされている=ホモ牛乳、ということです。
ーーー均質化するんだったら低温殺菌牛乳もホモジナイズすればよくない?
低温で殺菌するのは、生乳に近づけるため。できる限り生の状態を目指すためなので、均質化してしまうと生感が失われてしまうからやらないのです。
そしてホモジナイズしていない牛乳をノンホモ牛乳と呼びます。
ノンホモ=均質化されていない=無均質=乳脂肪分に偏りがあるということです。なので、ノンホモ牛乳の場合、時間が経過すると牛乳表面に脂肪分が浮いてきます。これはクリームラインと言って天然の生クリームの層なんだそうです。とても濃厚なクリームなんだそうですよ。
軽くまとめると
高温殺菌牛乳
- ほとんどの牛乳が高温殺菌。
- そのため長期保存が可能。
- 乳脂肪分が均質化されている=ホモ牛乳
- 生乳に比べて栄養や成分に変化がある。
低温殺菌牛乳
- パスチャライズド牛乳(パス牛乳)と呼ぶこともある。
- より生乳に近い味わい。栄養や成分。
- ノンホモ牛乳。
- 賞味期限が短い。
- 表面にクリームラインができる。
という感じでしょうか。
★ちゅー!ポイント★
一長一短。目的に合わせて選ぶのがベスト。パッケージに書かれている成分などをチェックしてあなたに合った牛乳を選んでください。
ー 適 材 適 食 ーてきざいてきしょく
小園 亜由美 (こぞのあゆみ)管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・日本化粧品検定1級
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。