今週のお題「お弁当」
健康診断などで「尿酸値(にょうさんち)」という言葉を見たこと、聞いたことはありますか?
尿酸(にょうさん、英: uric acid)
分子式 C5H4N4O3、分子量 168 の有機化合物である。
尿酸値の検査と聞くと、検尿で測定すると思うかもしれませんが、実は「血液検査」で測定しています。
この尿酸値の値が高いと「高尿酸血症」と診断されます。
ところで高尿酸血症とはどういうこと、なのでしょうか。
高尿酸血症
高尿酸血症とは、尿酸値(血液中にある尿酸の濃度)が7.0mg/dLを超えた状態をさします。
高尿酸血症が続くと、血液に溶けきらなくなった尿酸が結晶となって、体内にたまっていきます。それが手足の関節で起こり強い痛みを伴うのが痛風(痛風関節炎)です。さらに、尿酸が腎臓にたまると痛風腎を引き起こします。
高尿酸血症が引き起こす病気は、痛風だけではなく、さまざまな生活習慣病(高血圧、心疾患、メタボリックシンドロームなど)のリスクを高めるといわれています。そのため高尿酸血症は、いち早く、尿酸値を適正に保つことが大切です。
日本痛風・尿酸核酸学会
ガイドライン改訂委員会 編 : 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 診断と治療社 : 72-74, 2018
痛風、聞いたことのある病名ではないでしょうか。
痛風
では、痛風とはどのような病気なのでしょうか。
【痛風】 ある日突然、激痛におそわれます
痛風って、どんな病気?
ある日突然、足の親指に起こる激痛発作
痛風とは、ある日突然、足の親指などの関節が腫れて激痛におそわれる病気で、男性に多い病気です。この症状は発作的に起こることから「痛風発作」とよばれ、発作が起こると、2~3日は歩けないほどの痛みが続きます。
その後、痛みは徐々にやわらいでいきますが、正しい診断や治療を受けずに放置していると、同じような発作が繰り返し起こり、発作を起こすたびに病態は悪化していきます。
痛風の予備軍、高尿酸血症とは?
痛風の背後には、「高尿酸血症」という病気が潜んでいます。高尿酸血症とは、体内でつくられる尿酸が増えすぎている状態です。尿酸は体の新陳代謝により発生する老廃物です。通常、体内の尿酸は産生と排出のバランスを保ちながら、一定の量に保たれるようになっていますが、尿酸が過剰につくられたり、排出がうまくいかなくなったりすると、体内の尿酸は一定量を超えてしまいます。こうして血液中の尿酸の濃度が7.0mg/dlを超えた状態が高尿酸血症です。高尿酸血症は、それだけでは自覚症状はありませんが、尿酸濃度が高い状態が続くと、血液に溶け切れなかった尿酸は結晶化して、関節や組織にたまっていきます。関節にたまった尿酸結晶に対して免疫細胞が反応し、炎症を起こして痛風となるのです。痛風は、なぜ恐いの?
死にもつながる恐い合併症
痛風の発作は恐ろしいものですが、痛風の恐いところはそれだけではありません。尿酸値が高い状態を放置していると、さまざまな合併症を引き起こします。高尿酸血症は糖尿病や脂質異常症、高血圧を合併しやすいことでも知られています。これらの生活習慣病は動脈硬化の最大の危険因子でもあり、複数をあわせもつことによって狭心症や心筋梗塞などの心疾患、脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患を引き起こすことがあります。
腎臓にも悪影響を及ぼす
体内に尿酸が増えると、関節だけでなく腎臓に結晶化した尿酸がたまることがあります。腎臓のなかに尿酸結晶がたまると、腎臓の機能が低下し、さらに尿酸結晶がたまりやすくなります。このような悪循環により、慢性腎不全に陥ることもあります。
また、尿酸結晶が尿路にたまると、尿路結石といって腎臓や尿管、膀胱などに結石ができることもあります。痛風の原因は?
痛風の危険因子とは?
痛風の原因となる高尿酸血症は、生活習慣、とくに食生活が大きく関わっています。
尿酸は「プリン体」が分解されてつくられます。プリン体とは、細胞の新陳代謝やエネルギー代謝によってつくられる物質ですが、食品からもプリン体をとっています。プリン体は高カロリー食、レバーやエビなどの動物性食品、アルコール飲料などに多く含まれているので、これらの食品のとりすぎはプリン体のとりすぎにつながるとともに、アルコールは体内でのプリン体の合成を促し、尿酸の排出を抑制することがわかっています。
さらに、高カロリー食や多量の飲酒が招く肥満も、痛風の大きな危険因子となります。肥満は尿酸の排出を悪くするため、体内の尿酸量が増えやすくなります。*さらに詳しい情報は以下の転載元のサイトを確認してください
高尿酸血症についてはこちらのサイトも↓
このように尿酸値は生活習慣病、糖尿病と深い関係があるのです。そして、糖尿病の治療には薬物、運動、食事の3つの療法があり、これらは尿酸値の改善にも必要です。
『尿酸ネクストステージ』
そこで、今回新しく創刊となった『尿酸ネクストステージ』に食事のアドバイスについての記事を寄稿させて頂きました。
新創刊!
こんな表紙です。
『実地診療で活躍する管理栄養士』コーナーを担当させて頂きました。
↓今回は記念すべき新創刊ということもあるので、私の書いた記事内容を掲載します。
実地診療で活躍する管理栄養士
二田哲博クリニック[福岡姫浜・福岡天神]
管理栄養士/スタッフゼネラルマネジャー 小園亜由美(こぞのあゆみ)さん糖尿病の初診では必ず栄養指導を実施
二田哲博クリニックは、理事長の二田哲博(ふたたてつひろ)先生が2001年に福岡市の住宅街である西区姪浜(めいのはま)で開業し、2011年に分院を繁華街である中央区天神に開院しました。いずれも糖尿病と甲状腺疾患を専門にしており、医師5名・スタッフ43名の体制で、姪浜本院で1日に約200名、天神分院で約150名を診療しています。糖尿病のある患者さんは基本、全員に栄養指導を行っており、管理栄養士2名が生活指導も含めて担当しています。外来栄養指導料基準に則り、初回が30分、2回目以降は20分を基本に実施しています。栄養指導ではなく「カウンセリング」
薬物・食事・運動、3つの糖尿病治療の基本のうち薬物療法を除いた食事=食べる、運動=動くは生活そのものを見直すことで整えていきます。特に決して欠かすことのできない「食べる」ことについて私たち管理栄養士は「栄養指導」を行います。糖尿病の診断があった初回に当院では必ず「栄養指導」を受けて頂いているのですが、ほとんどの人が「身構えて」います。誰もが完璧な食生活をしているわけではありません。しかし患者さんにしてみれば、不摂生が原因で糖尿病になってしまった→管理栄養士に呼ばれた→怒られる/否定されると考えるのは自然なこと、当然身構えます。ですが話し終わる頃には『また話を聞きたい!』という言葉を頂きます。なぜでしょう。それは「指導ではなくカウンセリング」を行っているからです。指導とは教え導くことです。何十年も続けてきた習慣を否定され、正しいことを示されても受け入れられるでしょうか。健康を取り戻すはずの栄養指導が、好きなものを取り上げられるように感じられてしまっては本末転倒です。ですから、私はその生活から人となりや人生観まで知り、本当の意味でのその人の身体にあった食事を見つけ出し、続けられるようにすることを本人と一緒に探すようにしています。食べものを口に入れることだけが食事ではありません。何をいつどのようにどれだけ食べるのかは生活に深く関係しています。ですから、私はひとりひとりの生活の様子を重視しているのです。私が行っているのは「食事カウンセリング」です。具体的に示すのが管理栄養士
「食事はバランス」と言います。このバランスとは何と何のことでしょう。摂取するエネルギー量=カロリーと栄養素のことです。栄養素のバランスを取るヒントとしてオリジナルの【食事バランスシート(図1)】で、毎食、主菜・副菜・主食の3つを揃えることの大切さを伝えています。その際、患者さんに必要な情報を書き込んで渡しています。同時に医師から指示のあった総カロリーについても、具体的に何に気を付ければよいのかを明確に示すようにしています。カウンセリングの中で「お菓子は1個までにする」「ゆっくり食べる」「朝ご飯を食べる」といった本人にとって実現できそうな小さな目標を立てて次回までの宿題にします。それがオリジナルの【食事運動カレンダー(図2)】です。毎日目標ができたらマル、できなければバツをつけてもらい次回来院の際に持参してもらっています。全部マルがつくことが望ましいのですが、バツが合っても構いません。成績を競うのではなく自分で立てた目標に日々向き合っているのかどうかという点が重要だと考えています。ですからバツが多くても否定はせずにむしろより確実にできることを探す手がかりにしています。そうして小さな達成感を日々積み重ねていくことを習慣化やモチベーションを育てるようにしています。半年も続けていると患者さん自身から『今度はこんな目標でやってみたい』と提案されることも多くなるほどです。そんな積極的な患者さんは具体的に何をどうすべきかを掴みはじめています。ひとりひとりの体調・状態を医学的な立場で把握した上で、本人の希望をどう無理なく叶えていくかが管理栄養士の責務だと考えています。ひとりの例外もなくみんな頑張っている
当院では、通院中の患者さん全員を対象に毎月食事療法・運動療法を頑張った3名表彰する「じぶんみがきグランプリ」を2004年から続けています。選考は看護師、臨床検査技師、管理栄養士で行い、受賞した人は院内やWebサイトに掲示しています。ひとりひとりに選考者がなぜ選んだのか、どのようなことが素晴らしかったのかを丁寧に書いた賞状を本人に手渡すようにしています。糖尿病の治療で最も重要なのは「継続」です。薬にしても食事にしても運動にしても続けることが大切なのですが、アタマでは判っていてもなかなか続けられないものです。そんな中、自分で目標を決めコツコツと続けて改善している人がいることを示すことは本人だけではなく、同じ糖尿病に向き合っている他の患者さんたちの心のよりどころになります。何よりも頑張っている姿を私たち医療スタッフがしっかり見ている、応援していることを伝えるためにもこの賞状は大変役立っています。適材適食
私は野菜ソムリエ上級プロの資格を取得しました。私自身が野菜を好きなこと、そして大好きな野菜には身体を元気にしてくれる栄養素がたくさん詰まっていることを患者さんに伝える上でとても役立っています。春夏秋冬それぞれの旬の野菜とそれを楽しむ簡単なレシピをお伝えしています。また健康運動指導士の資格も取得しています。食べるだけでは健康な身体を創ることはできません。適切な運動の話を患者さんに伝えるためにとても役立っています。どちらも患者さんに有益な「カウンセリング」を行う上で必要と考え取得しました。また院内だけに留まらずSNSで情報を発信しています。2018年から毎日更新を続けているBlog【てきざいてき‟しょく“適材適‟食“】では自分に合った食材を(=適材)、自分の身体に合った食べ方で(=適食)を基本に、プライベートも含めて色々な情報を発信しています。【二田哲博クリニック姪浜本院院長 下野大先生からのコメント】
「先生にとって、管理栄養士のどのような取り組みが診療の役に立っているか、助けになっているか」(例:患者さんの生活の質向上が医療の質向上に繋がる、専門性をいかすことにより先生も含めた他の医療従事者の負担軽減に繋がる、チーム医療により医療の安全性向上に繋がるなど)などについて、600字程度でコメントをいただければ幸いです。
ぜひ、『尿酸ネクストステージ』を見かけたら、ぜひご覧ください。
★Grrrrrrrrrr!(グォーーー)ポイント★
高尿酸血症が進行してしまうと、
a)尿酸塩沈着症
痛風関節炎
痛風結節
痛風腎
尿路結石
b)合併症
慢性腎臓病(CKD)
メタボリックシンドローム
高血圧症
2型糖尿病
などになる恐れがあります。これらがさらに進むことで、
c)動脈硬化
d)脳卒中
e)心臓病
など、命にかかわるような病気の原因にもなりかねません。
健康で豊かな人生を過ごすために、ぜひ「尿酸値」にも注目してみてください。
ー 適 材 適 食 ーてきざいてきしょく
小園 亜由美 (こぞのあゆみ)
管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・病態栄養専門管理栄養士・日本化粧品検定1級
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。