2019年12月5日木曜日、福岡・天神で行われた臨床に役立つ!糖尿病セミナー2019に参加しました。
特別講演
寺内 康夫 先生(横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学 教授)
1 糖尿病患者のQOLと寿命
- 脂質異常症、高血圧症などの疾患と比べて、糖尿病は治療に対するストレスが大きい。
- 治療継続のためにはモチベーションの維持・向上が鍵。
- 糖尿病と非糖尿病の寿命 糖尿病の寿命は10年短いというのは本当か?
朝日生命病院調査によると
平均余命40歳の時
糖尿病男性 39.2歳 糖尿病女性 43.6歳
男性全体 39.1歳 女性全体 45.5歳
→糖尿病でも非糖尿病でも変わらないのではないか?
- Stigma:医療者が烙印を押さない社会・教育
- Adobocacy:患者擁護の視点
を考えていく必要がある。
2 糖尿病食事療法の課題と最新の考え方
国民健康栄養調査から考えると、これまでの糖尿病の治療における指示エネルギーは低い。一般の人と糖尿病のある人の間に、それほど生活に違いはないはず。
研究
BMI25以上の人対象で、エネルギー摂取で比較。
- 25kcal/標準体重(kg)/日
- 30kcal/標準体重(kg)/日
- 入院時に35kcal/標準体重(kg)/日ほど摂取していた人に、摂取エネルギーを25kcalと指導しても30kcalと指導しても、次第に摂取エネルギーは30kcalになっていく。
- 25と30の指導で、体重・HbA1cに変化なし。
- DTSQ(糖尿病の満足度)で1年後、25の人満足度は下がり、30の人の満足度は上がるという結果。実際はもっと摂っているのに、今でも注意されるというキモチ。
- 糖尿病の食事療法は①エネルギー量②バランスと言われているが、そもそもエネルギー設定を見直すべき。
- 高齢者ではサルコペニア、フレイルの問題があるので特に注意が必要。
2019年10月に発表された糖尿病診療ガイドラインhttp://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4
- 「標準体重」→「目標体重」という考え方に変わった。
- 今まで以上に個別化していく必要がある。
- 摂取エネルギーがアップすると、食事をしっかり摂れる人にとっては、満足度が高くなる人もいるが、高齢者などで食が細い人にとっては、課題ともなり得る。
- 中食の利用増。(時間、価格、片付けなどが増の理由)中食でコントロールする方法を提案する必要がある。
3 心疾患イベントリスクを考慮した2型糖尿病治療
- HbA1cが高くなるほど心血管疾患増。糖尿病の診断前でも増える。
- 糖尿病の人は心不全になりやすい。急性心筋梗塞の患者数は変わらないが、心不全は増加傾向にある。
- 65歳以上の糖尿病患者が心不全発症すると予後不良。
- 日本人糖尿病の12.6%→心血管疾患合併あり。87.4%→心血管疾患合併なし。
4 DPP4阻害薬の有効性と安全性
- 薬の使用順序(SGLT2とDPP4阻害薬)
- BMI27の集団では、SGLT2→DPP4阻害薬の順で使った方が、DPP4阻害薬→SGLT2の順よりもコントロールがよくなった。
- 体重を減らしてからの方が、DPP4阻害薬の効果が出るのかもしれない。使用順序で効果が異なる可能性もあり。
- ただし、これは、MTI27の集団なので、この結果が得られた。他の集団でもは別の結果になる可能性もある。
5 糖尿病チーム医療の遍歴と今後の展望
- 療養指導は必要だが、医師だけでは難しい。
- 20年前とCDEJの担う役割は異なる。
- 専門医が診る→非専門医が診る=CDEJ、LCDEの関わり
- 医療施設だけでなく、地域でのチームを形成する必要がある。
- フレイル、要介護、認知症などの患者増→介護職も糖尿病チームに入ってもらうことが必要となってくる。
- 糖尿病療養指導だけでなく、糖尿病の方は肥満、腎疾患等々、合併することが多い。糖尿病と限定するのではなく、包括的に療法指導ができる人材育成が今後必要となってくる。
タンパク質の摂取について
高齢者の前の段階からタンパク質を摂ることは必要。ただし、タンパク質摂取と言っても、経済的理由も絡んでくるので、糖尿病の世界だけで取り組むことは困難。日本全体で考えるべき課題でもある。
★ぶー!ポイント★
備忘録として内容を記します。
ー適材適食ー
小園亜由美(こぞのあゆみ)|管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。