今週のお題「2024年にやりたいこと」
毎月季節の野菜を紹介するシリーズ★ その名も「旬の役菜」。
私は健康なカラダづくりに役立つ野菜を【役菜やくさい】と呼んでいます。季節ごとに旬を迎える野菜たちが持つ特徴的な栄養や成分を充分に引きだして美味しく楽しく頂きましょう。1月の役菜はゴボウです。
ゴボウ
ゴボウの旬は11月〜2月です。
ゴボウ(牛蒡または牛旁、悪実、英: Burdock、学名:Arctium lappa L. )
ユーラシア大陸原産のキク科ゴボウ属の多年草である。日本では野菜・根菜の一種として食用にされる。大阪弁では「ごんぼ」と呼ぶ。リンネの『植物の種』(1753年)で記載された植物の一つである。
和食には欠かすことができないゴボウ。親しみ深い野菜ですね。ゴボウは漢字で書くと「牛蒡」。なぜ「牛」の文字を使うのでしょうか?
牛
ウシ(牛)は、哺乳綱鯨偶蹄目ウシ科ウシ亜科の動物である。野生のオーロックスが、人類によって家畜化されて生まれた。但し、アメリカ哺乳類学会では、ウシ、オーロックス、コブウシをそれぞれ独立した種として分類している。
「牛」は判るのですが、
蒡
「蒡」の字は牛蒡=ゴボウでしか使わない文字のようです。
なぜ牛蒡と書くの?
ごぼうは漢字で「牛蒡」と書き、「牛」の入ったこの漢字の由来は、牛の尾とごぼうが似ていることに由来しています。牛の尾を見ると根元が太く、先端に向かって細くなっていくところがごぼうの形状に似ていると言えるでしょう。また、牛の尾に生えた短い毛が、ごぼうのひげ根のように見えなくもありません。
「牛蒡」の語源
「牛蒡」は中国から伝わった漢語が語源とされ、「牛」と「蒡」それぞれの漢字の読み方と意味は以下の通りです。
- 牛:音読みで「ゴ」と読み、牛の尾や大きい草木を意味する
- 蒡:音読みで「ボウ」と読み、ごぼうに似た植物の名前
この二つの漢字を合わせると、ごぼうは牛の尾に似た、「蒡」のような植物であることがわかります。また、「牛」は大きい草木を漢字で表す時に使われ、「蒡」よりもごぼうが大きかったことから「牛」の漢字が当てられたのではないかと考える人もいるようです。
「蒡」という植物を探したので見つけることができませんでした。それにしても「牛のしっぽ」とは意外でした。
ゴボウは薬草
ゴボウの原産地はユーラシア大陸北部で、日本には中国から薬草として渡来しました。日本で野菜になった初めての海外原産植物です。平安時代にはすでに宮廷料理の食材として利用されました。
中国の薬草と言えば漢方。ゴボウの見た目や味を考えると、何だか納得しちゃいます。
ゴボウを食べるのは日本だけ?!
ゴボウを日常的に食べているのは日本だけです。第2次世界大戦中に捕虜収容所で係員が連合軍人にゴボウを食べさせたところ、戦後の戦犯裁判で「木の根を食べさせた」との理由で捕虜虐待罪となり死刑執行されました。食文化の違いによる悲しい出来事です。
食文化の違い・・・というだけでは片付けられない悲しい出来事です。
ごぼうを食用にする習慣は日本独特のものであり、世界ではほとんど食されていないという。中国メディアの快資訊は19日、「中国原産ながら日本で改良された結果に日の目を浴びた野菜」としてごぼうを紹介する記事を掲載した。
日本にごぼうが伝わった時期は、一般的には平安時代だと言われている。中国から薬草として伝来した後、根の部分を食用にするため品種改良を行ってきたようだ。そのため、日本にはたくさんの種類のごぼうがある。記事はごぼうを「東洋人参」と呼び、日本人は中国人が食べないこの薬草を食べているばかりか、高級食材にまで変えてきたと紹介している。
中国原産なのに、中国では食用ではなく、日本で食べられている、というのはとても面白いですね。
漢方としてのゴボウ
では、原産地中国ではゴボウはどのように薬用とされていたのでしょう。
ゴボウの種、漢方では牛蒡子(ごぼうし)といい、昔から解毒の民間薬として風邪に、皮膚疾患に国内外問わず使われてきました。日本には古来、中国から農作物として渡来したといわれています。そんな古くからある民間薬の『ごぼうの種』が新たに注目を集めています。
ゴボウには種があるんですねー。ということは花が咲くのでは?と思って探してみました。
↑これがゴボウの花なんだそうです。思っていたのと違います・・・。乾燥するとウニやイガグリのようです。
牛蒡子ゴボウシの漢方薬としての効果・効能
ゴボウの種のお話
「ごぼうのタネ」ってご存知のかたいらっしゃいますか? あのお野菜のごぼうの、タネです。見た目はまんま、タネらしいタネというのはおかしな表現ですが、まさしくそんな感じのこげ茶色~クロ色の米粒大のタネです。実は、ごぼうを食べるのは日本と韓国ぐらいだそうです。中国にもありますが、漢方薬として使われています。
ごぼうの種子を、漢方では「牛蒡子(ごぼうし)」と言います。 牛蒡子は国内外を問わず解毒の民間薬として感染症や慢性皮膚炎に活用されています。その成分には消炎、解毒、排膿などの作用があります。解熱、解毒などの作用があるので、風邪くすりや皮膚病のくすりなどの多くの漢方薬に使われています。民間療法では、乳腺炎や産後のお乳の出を良くするのに使われる事もありますが、味はとっても苦くてまずいです。残念ながら。牛蒡子(ゴボウの種) | 漢方薬相談・漢方百科 | イスクラ薬局
牛蒡子(ゴボウシ)の漢方薬としての効果・効能
性味: 辛・苦、 寒
帰経: 肺・胃
<薬理作用>
疏散風熱、去痰止咳、清熱解毒、利尿解熱、抗菌
<応用>
喉の腫れ・痛みに、咳がでて痰が切れにくい時など
処方例: 消風散、銀翹散、柴胡清肝湯、駆風解毒散、など
ゴボウの種にも様々な効果・効能があるんですね。
根菜類としてのゴボウ
そして、私たちがゴボウとして美味しく頂いている部分は根にあたる部分です。
わたしたちが食べている野菜は、種類によって実、根、葉、茎など、食べている部分が違います。この中で特にわかりにくいのは根と茎の区別でしょう。
ゴボウの表面を観察すると、細かいヒゲのようなものが生えていることに気づきます。太い部分は「主根(しゅこん)」、ヒゲのような部分は「側根(そっこん)」といわれ、双子葉植物(発芽したとき子葉が2枚の植物)の特徴のひとつで、ダイコン、ニンジンなどにも見られます。この名前からもわかるように、ゴホウの食べている部分は根なのです。
根っこと改めて言われると「うーん」ってなってしまうかも知れません。ちなみに葉っぱはこんな感じなんだそうです↓
ゴボウの栄養
根っこと言われると「栄養ないのでは???」と心配になりますよね。調べてみました↓
ゴボウ 100gあたり
- エネルギー・・・・・・・・58 kcaL
- タンパク質・・・・・・・・1.8 g
- 脂質・・・・・・・・・・・0.1 g
- 炭水化物・・・・・・・・・15.4 g
- 食物繊維・・・・・・・・・5.7 g
- カリウム・・・・・・・・・320 mg
- カルシウム・・・・・・・・46 mg
- 鉄・・・・・・・・・・・・0.7 mg
出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
まずエネルギーの低さが目を引きます。他の栄養素についても詳しくみていきましょう↓
野菜の中でもトップクラス「食物繊維」
レタスの5.2倍、大根の4.4倍、キャベツの3.2倍の量で、同じく食物繊維が豊富といわれるブロッコリーよりも優れた含有量であることがわかります。血糖値の上昇を防ぐ・整腸作用のある「イヌリン」
イヌリンは水溶性食物繊維のひとつで、血糖値の上昇を防ぐ働きや、整腸作用が期待される成分です。イヌリンは腸内で血糖値の吸収を妨げることで、血糖値の上昇を穏やかにしてくれます。また腸内で善玉菌のエサとなり、善玉菌が活動しやすい環境を作ります。腸内細菌の利用率が100%ともいわれ、ほかの食物繊維に比べ、整腸作用の高さが期待されます。腸内で有害物質を吸着する「リグニン」
リグニンは不溶性食物繊維であり、腸内で有害物質を吸着し、体外へ排出してくれる働きがあります。また便の材料となり、腸を刺激して排便をスムーズにしてくれます。抗酸化作用のある「クロロゲン酸」
クロロゲン酸はポリフェノールの一種で、ごぼうのアクの成分です。抗酸化作用があり、健康づくりや美容面でよい働きをしてくれます。ストレスや紫外線、喫煙により生成された「活性酸素」という物質は、細胞を傷つけ、肌へのダメージや、がん、動脈硬化、免疫機能の低下を引き起こします。クロロゲン酸は抗酸化作用により、活性酸素の働きを抑えたり、取り除いたりしてくれます。高血圧の予防に「カリウム」
カリウムは余分なナトリウムを排出する働きがあります。ナトリウム(塩分)の摂りすぎが原因となる高血圧を防ぐために欠かせない栄養素です。骨を丈夫にする「カルシウム」
カルシウムは骨の材料となり、強い骨づくりに必要です。カルシウムが不足すると、骨からカルシウムが取り出されてしまい、骨がスカスカになる骨粗しょう症の原因となります。日本人の平均的な摂取量は不足気味であるため、意識的な摂取が大切です。貧血対策に欠かせない「鉄」
鉄は血液中のヘモグロビンの材料となり、貧血を防ぐうえで欠かせません。ヘモグロビンは酸素を全身に運ぶ働きがあるため、不足すると疲れやすさ、息切れなどの症状を起こすことがあります。
こうして改めてみてみるとカラダが喜ぶ栄養素をゴボウはたくさん含んでいることが判ります。特に食物繊維・イヌリン・リグニンなどカラダの調子を整えてくれる嬉しい栄養素をたくさん含んでいます。
ゴボウを美味しく食べる
ゴボウを使った代表的な料理をみていきます。
たたきごぼう
たたきごぼう
おせち料理に欠かせない食材として「ごぼう」が挙げられます。関西では「数の子」「田作り」と並び「たたきごぼう」が祝い肴三種とされています。たたきごぼうは、ごぼうをたたいて開くことから「開運」の意味が込められ、さっぱりとした甘さでシャキシャキとした食感が楽しめる、ふだんのおかずにも最適な一品です。ごぼうは地中に根を張り力強く成長することから「延命長寿」の象徴と考えられ、土地に根付く姿に重ね「家族が土地に根付いて安泰に暮らせますように」という願いもこめられています。煮しめの脇役としても使われ、薬効に優れていることから「健康」のイメージも兼ねた、おせちの重要な食材の一つです。
きんぴらごぼう
きんぴらごぼうも有名ですね。ところで何故「きんぴら」なのでしょう。
きんぴらごぼうの由来
歴史・由来・関連行事
「きんぴら」の名は、江戸時代に流行した古浄瑠璃「金平浄瑠璃」の主人公で、金太郎で有名な坂田金時の息子という設定の「坂田金平」に由来していると言われる。ごぼうのしっかりした食感や歯ごたえ、唐辛子のピリ辛さを坂田金平の強さや勇ましさに例え、「きんぴらごぼう」と呼ばれるようになったとされる。
また、ごぼうは古くから伝わる江戸東京野菜のひとつで、京野菜、加賀野菜などと並ぶ伝統野菜だ。特に、当時の栽培地域の地名滝野川村から名前のついた滝野川ごぼうは、古い歴史を持つ。参勤交代で集められた武士たちが、自分たちの地元から持参した野菜の種を栽培して品種改良をし、練馬大根などと共に江戸野菜として定着させたという。国内で栽培されているごぼうの90%以上は、長い年月をかけて改良された滝野川ごぼうの血を受け継ぐ品種。
坂田金平とは?
「子どもの日」に飾られる武者人形でおなじみの“金太郎”ですが、金太郎とは坂田金時(さかたのきんとき)という人物の子どもの頃の呼び名です。昔話でも知られるように、熊にまたがったり、相撲をとったりと、とても力持ちだったと言われています。
そして江戸時代に人気があった「金平浄瑠璃」の登場人物が、この坂田金時の息子、坂田金平(さかたのきんぴら)です。金平は世にも稀な力持ちで、金平に勝てる者はいないとされ、“きんぴら”=“強いもの”のたとえとなりました。
ごぼうは、根がまっすぐに深く入ることから、「家の基礎が堅固でありますように」と願いをこめておせち料理にも使われています。丈夫で強いというイメージで、もちろん歯ごたえも強い野菜です。
そして、強い唐辛子の辛味からも“きんぴら”という料理名になりました。
♪まさかり かーついだ きんたろー♪
きんぴらごぼうの金平が金太郎だとは思いませんでした!
★Grrrrrrrrrr!(グォーーー)ポイント★
単なる根っこではなく、カラダが喜ぶ、調子を整えてくれ、元気にしてくれるゴボウ。きっと、力持ちで元気いっぱいの金太郎はゴボウを使ったきんぴらごぼうが大好物だったに違いありません。金太郎にあやかって、旬のゴボウを美味しく頂きましょう★
2024年の正月にゴボウを使ったお菓子を紹介しています↓
ー 適 材 適 食 ーてきざいてきしょく
小園 亜由美 (こぞのあゆみ)
管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・病態栄養専門管理栄養士・日本化粧品検定1級
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。