今週のお題「納豆」
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1つの話題を追いかけていったら、次の話になって、それも追いかけていったら、また別の話が出てきて。今回の話はそんな次の話に続く話です。が、今回で一旦終了、なので完結です。
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前回は
- 植物、葉っぱを描く時緑色を使うよね。
- でもなんで葉っぱは緑色なんだろう。
- 私たちが観ている色って実は反射した光。
- 太陽光は白く見えるけど色々な色が隠れている。
- 光には波の性質があって波と波の幅で波長が決まる。
- 波長によって違った色に見える。
- 葉っぱが緑なのは葉緑体が緑だから。
- でも太陽の光の中で最も強い波長は緑色。
- 光合成に必要な最も強い緑色の光をわざわざ反射している。
- その理由は効率よく安定して光合成を行うため。
という話でした。
今回は5回続けてきた日記の完結篇として私のブログで最もアクセス数の多い記事を改めて考えてみようと思います。テーマは前回の植物に関係することとして、草食動物のゴリラについてです。
元日記はこちら↓
***リメイクはここから***
ゴリラって大きくて凄く筋肉質ですよね。身体の大きさはというと、
オス 170〜180 cm 150〜180 kg
メス 150〜160 cm 80〜100 kg
なんだそうです。体重はなるほどって感じがしますが、あれ?意外と身長は低い?私たち日本人の体格はというと、
男性 167.3cm 66.0kg
女性 154.2cm 53.0kg
だそうです。(大人気のマツコ・デラックス氏は身長178cm 体重140kgなんだそうです。)
ゴリラは見た目通りで力が強いらしいです。なんと推定ですがその握力は平均で500kgもあるそうです!人間の男性の握力の平均は約50kg、女性で約30kg程度なのでまさに桁違いです。ちなみにいかにも握力のありそうなクマでさえ平均握力は150kgらしいので、ゴリラはずば抜けて握力があるようです。
ゴリラのような大きい身体を維持するためにはそれだけのエネルギーと栄養を摂らなければなりません。スタミナ食と言ったら「肉」を連想する人も多いと思いますが、ゴリラは何を食べているのかと言うと、ゴリラは1日に
オス 35kg
メス 18kg
ほどの食事をするそうです。で、何を食べているのかと言うと、
- 葉っぱ
- 木の皮
- 根っこ
- 花
- 果物
- アリやシロアリなどの昆虫
なんだそうです。基本的には草食になります。草食中心で身体を維持しているのだから1頭あたり35kg/日も納得、それにしても、ものすごい量です。雄のゴリラの平均体重が165kgなので、自分の体重の1/5〜1/4にもなる食料を1日で食べていることになります。これを人間で考えてみると、体重66kgの人が1食あたり5kg以上を1日に3回食べていることになります。しかも野菜や果物限定で。それもすべて調理をしない生のまま、です。あ、もちろん塩胡椒などの香辛料やマヨネーズも使いません。
だから寝ている以外はずっと食事をしているんですね。5kgの生野菜を食べるにはそれなりに時間もかかります。
ゴリラに限らず、草食動物=ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、キリン、サイ、ゾウなど。身近なところでウサギなんかもずっと何か食べてますよね。草食動物たちはあのペースで食べないと身体が維持できないのでしょう。
今度はあの「筋肉」について考えてみましょう。
全身が毛で覆われているとはいえ、しっかり筋肉質だと判ります。握力500kgも納得です。
でも、不思議じゃないですか?
もし人間がゴリラのような筋肉質な身体を手に入れたいと思ったら、毎日欠かさずスポーツジムへ通って厳しいトレーニングをして、食事も気をつけてなければいけません。
ゴリラはスポーツジムに通い、筋トレをやっているのでしょうか?
(ジムにゴリラがいたら、面白い!より怖いです・・・)
ではどうしてあの筋肉質な身体を維持できているのでしょうか。実はゴリラの身体が筋トレをせずに筋肉質であり続ける理由はハッキリとは判っていないようです。彼らは日常をただ過ごすだけであの身体を維持できているのです。
うらやましい・・・というのは人間の勝手な考えで、ゴリラの身体が強くたくましいのには外敵から身を守るため、些細な事でケガをしないために進化してきたので当然ですね。
それにしても、野菜や果物(と少々の昆虫)だけであの身体を維持できるのは謎です。
その秘密を解く鍵は、腸内にあると考えられています。
ゴリラの腸内には植物や果物からアミノ酸を合成することのできる微生物がいるのです。筋肉を作るためには「タンパク質」が必要です。しかしゴリラが主食としている植物や果物にはタンパク質は「ほぼ」含まれていません。(植物の中で「大豆」は良質なタンパク質が含まれています)
ではタンパク質がほとんど含まれていないものしか食べていないのに筋肉が出来ているのは何故でしょう。
タンパク質を構成するのが「アミノ酸」です。色色なアミノ酸が互いに結び付いてタンパク質となります。
ゴリラは食べた植物から腸内にいる微生物たちにアミノ酸に変化させてそれを体内でタンパク質として使って筋肉を作っているらしいのです。また、草などに僅かに含まれているアミノ酸を大量に食べることで賄っているとも言われています。だからゴリラに限らず草食動物は食べる量が多いんですね。ゴリラのように腸内の微生物を活用したり、量をたくさん食べる動物はウマ、ゾウ、サイなどです。
同じ草食動物でもゴリラと違う方法でアミノ酸を獲得している動物がいます。例えばウシ。ウシには胃袋が4つあって、胃の中で食べた草を消化します。ウシの胃の中にはたくさんの微生物が草の主成分である多糖類のセルロースをアミノ酸に分解します。実はアミノ酸と言ってもたくさんの種類があって、最初のセルロースの分解で出来るのはタンパク質にならないアミノ酸なんだそうです。それが2つめ3つめ4つめと別の胃に移る毎に次第に、タンパク質の素になるアミノ酸に微生物が変化させるんだそうです。そのアミノ酸を使ってウシはタンパク質を作り筋肉にしているそうです。ウシのように胃でアミノ酸を作る動物はキリン、シカ、ラクダなどだそうです。
ちなみにNHKのサイトにもこんな記事がありました↓
余談ですが、アミノ酸はタンパク質の素とお話しましたが、糖尿病と関係の深いインスリンというホルモンもアミノ酸が素材になっています。
『ゴリラ、いいなー』
そんな風に思った人、実は私たち人間もゴリラのように完全ではありませんが僅かながら植物からアミノ酸を作ってタンパク質に変えることができるようなのです。例えば、ジャングルや南の孤島に住む人々は滅多に肉を食べる機会はありません。でも彼らは筋肉質だったりします。また、ベジタリアン(菜食主義)の中にも筋肉質の人はいます。
つまり「食生活」によって変化する、という事です。
だからと言って明日には!というワケにはいきません。長い時間をかけて野菜中心の食生活をたくさん続けていくことで、徐徐に腸内環境が整い、植物からアミノ酸を作り出す微生物が住み着いてくれるようになる、そうです。
ジャングルに棲んでいるゴリラにとって、葉っぱはステーキに見えているのかも知れません。
ゴリラのように葉っぱからタンパク質を得ることのできない私たちは何を食べたらよいのでしょう。タンパク質には大きく分けて2種類、動物性タンパク質と植物性タンパク質があります。普段食べている身近なものの中でタンパク質を比較的多く含むものは、
動物性タンパク質
牛乳(コップ1杯=200g)タンパク質6.6g
タマゴ(1個=60g)タンパク質6.3g
牛リブロースステーキ(1枚100g)タンパク質20.4g
サンマの塩焼き(1尾100g)タンパク質17.4g
と、動物性タンパク質はなんとなくイメージができたかと思います。
植物性タンパク質
ご飯(1膳140g)タンパク質3.5g
納豆(1パック40g)タンパク質6.6g
6枚切り食パン(1枚60g)タンパク質5.6g
蒸したジャガイモ(1個100g)タンパク質1.4g
と、主食として食べているご飯やパンなどにも動物性に比べて少ないですが、ちゃんとタンパク質は入っています。
何を どれくらい いつ どんな風に 食べているのか。それがとても大事、です。生物は活動するため、身体を維持するため、生き続けるために必要な栄養を外部から食事として摂取する必要があります。
好き嫌いで食べものを決めることは人生の中で大切な喜びです。でも健康な身体のためには必要な栄養素を過不足なく摂取しなければなりません。
ビタミンCはレモンだけを食べるのではなく、ビタミンCは様様な食材に含まれているので様様な食材からビタミンCを摂る。様様な食材にはビタミンC以外の栄養素も含まれています。様様な食材を食べることで、色色な栄養を上手に摂取していることになるのです。
毎回の食事でどんな栄養素を摂っているのか意識しておくと、多過ぎた分は減らし、足りない分は増やすことで調整し、栄養バランスをとりやすくなります。
バランスのよい食事とは、過不足のない「栄養バランス」が整った食事、という意味なのです。
ということで、葉っぱしか食べないゴリラがムキムキなのは、生存環境が創り上げた生き抜くための仕組みが答えじゃないかな、と私は思います。
ゴリラにとって、野菜は筋肉を維持するためのもの。私たち人間にとっては、身体の調子を整えてくれるもの。 人間にとっては低エネルギーで健康的な野菜も、ゴリラにとってはステーキのようなものなんですね。生活環境によって、同じ食材も意味が変わるのはとても面白いです。栄養素について興味があれば動画で説明しています。 ただし、ゴリラ用ではなく、人間用です。
ep004 野菜がカラダによい理由【適材適食】小園亜由美(管理栄養士)
★ちゅー!ポイント★
ということで、シュワシュワ炭酸水→リトマス試験紙→アジサイ→アントシアニン→葉っぱの色→ムキムキゴリラと6回も続けてお話してきた日記。いかがだったでしょうか。最初は本当に炭酸について書こうと思っていただけだったのですが段々話が大きくなって!逸れてきて?最後はゴリラまでやってきてしまいました。おかげさまで私自身もとても勉強になりました。
ー 適 材 適 食 ーてきざいてきしょく
小園 亜由美 (こぞのあゆみ)管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・日本化粧品検定1級
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。