新型コロナウイルス感染症が糖尿病患者にどのような影響を与えているか。当院独自の患者100人に対してアンケートを行いました。
前回は食事量・運動量についての調査結果を紹介しました。
アンケート背景・概要
まずは新型コロナウイルス感染症に2019年12月から緊急事態宣言が解除となった2020年6月末までの主な出来事を一覧にしてみました↓
患者100人アンケートを実施したのは、緊急事態宣言中の2020年5月末から解除となった2020年6月末の約1ヶ月間。
この時期は新型コロナウイルス感染症について
- 全員が猛威を知っていて
- 外出時出=自宅で過ごすという経験を
- 既に3ヶ月以上=1シーズンの間続けている
という状況です。
その中でも治療のため通院し、個人栄養指導を受けた人に管理栄養士が口頭で質問し回答してもらっています。
- 男性47人+女性53人=合計100人
- 平均身長・・・・162.975 cm
- 平均体重・・・・68.93 kg
- 平均BMI・・・・25.8
- 平均HbA1c・・・6.957 %
100人のうち
- 30代・・・・・4名
- 40代・・・・・16名
- 50代・・・・・25名
- 60代・・・・・31名
- 70代以上・・・24名
- 平均年齢・・・60歳
という概要です。
【生活の変化】
ーーーコロナ禍で生活が変わったか?
に対して、フリートーク/フリーワードで回答してもらい、集計したところ、
- 外出が減った・・・・・・・・・・・・・34 %
- 在宅勤務/テレワークになった・・・・・11 %
- 仕事が休み/仕事が減った・・・・・・・8 %
- 手洗い/マスクをするように・・・・・・6 %
という結果になりました。34%が外出が減ったとしています。具体的な内容としては、
- テレビばかり観ている。
- 菓子作りを始めた。
- 食事時間が規則正しくなった。
- 検温するようになった。
- 週3日のボーリングに行かなくなった。
- 仕事(介護)の業務の幅が広がり多忙になった。
- 家族全員が自宅にいるのでストレスたまる。
- ジムが休みになりストレスがたまる。
- 週2日の編み物教室に行かなくなった。
- 人と話す機会が減った。
- マスク、アルコールを毎日購入しに出かける。
などの話を訊くことができました。
そこで、食事や運動に関係した生活の変化をカウンセリングの中でより深く詳しく訊ねてみました。
【食事】
会話の内容を「糖尿病治療」という切り口でプラス行動を青文字、マイナス行動を赤文字として表記してみました↓
■プラス行動
- 材料の少ない料理を作るようになり食事量減。
- 1日に3食しっかり食べるようになった。
- 毎晩飲酒しているが食事量は注意している。
- 普通に食事をしていたら体重が増えたので減らした。
- 動かないので、食事を減らした。
- HbA1c上昇傾向だったので、控えめにした。
- 決まった時間に食事をとる。
- コロナになりたくないので食事バランスを整えた。
- 外食から妻の食事+飲酒なしの生活になった。
- 体重減らしたかったので間食減らした。
- 動かないので腹減らない。
- 毎日外出するので、食事量減。
■マイナス行動
- おやつも食事も増えた。
- 夕食の量が増えている、菓子の量も増えた。
- 夕食後飲酒するようになった。
- アルコールは1.5倍に。
- 孫につられて菓子や食事食べるように。
- 自宅にいるので間食が増えた。
- 食事量は1.5倍に。
- 間食が増えた。
- なんとなく増えた。
- アルコールが週2日→週5日に増えた。
- 菓子が増えた。
- ストレスで食べているかも。
- 自宅にいることが長いのでアイスが増えた。
- 時間があるので間食増。
- 野菜が減った。
- サラダが減り、袋ラーメンが増えた。
【運動】
会話の内容を「糖尿病治療」という切り口でプラス行動を青文字、マイナス行動を赤文字として表記してみました↓
■プラス行動
- 夕食後30分歩くことは継続している。
- 時間ができたので毎朝90分歩くようにしている。
- ウォーキングを始めた。
- 動かなくなった分ラジオ体操はしている。
- 器具を購入して歩けない分運動した。
- 夫婦でウォーキング+体操2.5時間週5日するように。
- トレーニングを増やし子供と遊び運動量も増えた。
- 週2日歩くことは継続して変わらない。
- 毎日ウォーキング+腕立て腹筋に変更。
- HbA1cがあがってきたので増やした。
- ジムに行けない分ランニングを増やした。
- 活動量が減らないように10000歩/日意識している。
- ウォーキングを始めたがそれでも減った気がする。
- 動く量が減ったので朝夕40分ずつウォーキング。
- 通常は4000歩だが、10000歩/日となった。
- ウォーキングは続けているが買い物の歩きは減った。
■マイナス行動
- 通勤が自転車→車通勤になった。
- 夫が送迎、通勤での歩きが減った。
- 通勤で歩くことが減った。
- ボーリング週2日3ゲームが中止になった。
- 散歩をしなくなった。
- 運動が週3日→週1日になった。
- フィットネスクラブが休業になった。
- 運動動画は一人ではやらない。
- 通勤日が減ったので歩く量が減った。
- 自宅で数日腹筋始めたがやめた。
- 自宅でずっと座っている。
- 自宅から一歩も出ない日が多かった。
- 犬の散歩のみ。
- 買い物で20分歩いていたが車で行くようになった。
- 週3日ボーリングが中止となった。
【まとめ】
今回の糖尿病患者100人へのアンケート結果から、新型コロナウイルス感染症に対して意識の高い人と意識の低い人が一定数存在することが判ってきました。
活動が制限されることから食事量を減らし、運動も意識的に増やすグループと、自宅で過ごす中でお菓子などを普段よりも食べるようになり、運動も減ってしまったグループを観ることができました。
自分なりに工夫して新しい食事や運動を始めている人、コロナ禍を理由に仕方ないと諦めている人、そしてその差が大きいことが見えてきました。
ここまでは患者本人による主観的なものだったので、客観的なものとして当院の患者の状態を数値で出してみました。
■緊急事態宣言時の通院患者数
2019年の3月〜5月までの通院患者数を電子カルテから抽出し、2020年の3月〜5月までと比較しました。姪浜院、天神院、そして両院の合算です。
2020年の4月には若干の減少が観られますが、ほぼ変化がありませんでした。緊急事態宣言時でも、当院の患者は積極的に糖尿病治療を行っていました。
■緊急事態宣言時の患者のHbA1c
HbA1cの変化について2019年3月、4月、5月と2020年の3月、4月、5月の全患者の平均値を比較しました。若干天神院の方は微増傾向にありますが、ほぼ変化なしと言えるのではないでしょうか。
★ちゅー!ポイント★
意識の高い人と意識の低い人がいることは明白です。しかし、通院数やHbA1cの値を観ると、きちんと通院を継続し、尚且つHbA1cもキープしていることが判りました。
問題はこれらの特殊な生活が、習慣化してしまうことです。意識の高い人は新型コロナウイルス感染症を契機として新たな取り組みを始めていますが、新型コロナウイルス感染症を言い訳にしてしまっているグループに対しては、習慣化する前に軌道修正をする必要があります。
とはいえ、健康が第一です。正しい感染予防の方法を伝え、コロナ禍だからできない、ではなく、コロナ禍でもできることを患者と共に探していくことが求められていると私は強く感じています。
ー 適 材 適 食 ーてきざいてきしょく
小園 亜由美 (こぞのあゆみ)管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・日本化粧品検定1級
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。