ずらりと並んだスイーツたち。色とりどりで可愛くてとっても美味しそうです。というか絶対に美味しいヤツです。
ーーー全種類、食べてみたい！
と思っちゃいますよね？でも、本当に実行する猛者はそう多くはありません。何故なら、どうしてもアタマから離れない言葉があるからです、それはカロリー。
ーーーこれだけ食べたら一体どれくらいのカロリーになるんだろう･･･。
体重が気になる人はもちろん、誰もが気になるのがカロリー。でも、カロリーって何？と聞かれて答えられますか？今回はカロリーについて見ていきたいと思います。
カロリー（仏: calorie、記号:cal）
熱量の計量単位である。
かつては広く用いられたが、現在では、できるだけ使用せず、もし使用する場合にはジュール(J)の値を併記することになっている。国際単位系(SI)においては、カロリーはSI併用単位にもなっていない。
日本の計量法では4.184 Jと定義されていて、栄養学の分野などの特殊の用途にのみ用いることとされている。
カロリーは熱量の単位なんです。よく『あれはカロリーが高いから』なんて普通に会話の中でみなさん使っていると思います、が、私たち管理栄養士は「カロリー」ではなく「エネルギー」と言うように意識しています。上記のカロリーの説明の中にも「栄養学の分野などの特殊の用途にのみ用いること」とされています。もちろんカロリーは一般的に通用する言葉なのでみなさん今まで通り使ってもらっていいと私は思うのです。例えば『あれはカロリーが高いから』という会話は『あれはエネルギー量が高いから』となってしまうとちょっと違和感すら感じてしまいますよね。なので、カロリーでいいと思うのです。ただ、カロリーは熱量の単位だと知っておいてください。
ではカロリーが示す熱量とはどれくらいのエネルギーのことなのでしょう。
カロリーとは
「カロリー」とはエネルギーの単位です。 1ℓの水の温度を1℃上げるために必要なエネルギーが1kcalです。 1ml（1cc：小さじ1/5杯分）の水の温度を1℃上げるのは1calです。 電化製品が動くためには電気エネルギーが必要なのと同じで、人間も生きていく為に常にエネルギーが必要です。人間のエネルギー源は、ご存知の通り「食糧」になります。
- 1リットルの水の温度を1度上げるために必要なエネルギー ・・・・1kcaL
- 1ミリリットルの水の温度を1度上げるために必要なエネルギー・・・1caL
と言うことです。
ではここでお湯を沸かしてみることにしましょう。どれくらいのカロリーが必要となるのでしょうか。
まず、
1リットルの水（ここでは便宜上水温0度とします。）を
火にかけて
沸騰＝100度にするために必要なエネルギーは、100kcaL必要と言うことになります。
お湯を沸かすなんて普段何気なくやっていることだと思いますが、100kcaLのエネルギーを消費していることになります。
もちろん厳密に生活の中では水は常温である事が多いですし、温める際の器の熱伝導率などなど細かく言い出したらキリがないのですが、ここではどれだけエネルギーが必要かをイメージするためにざっくり説明しています。
お湯ではなく今度は「食べ物」で考えてみましょう。100kcaLちょうどの食品を探してみると、
▲ミカン小×3個（250g）
▲リンゴ中×1/2個（200g）
▲モモ大×1個（250g）
などがあります。大きめのモモ1個に含まれたエネルギーで沸騰したお湯が沸かせるということになるんですね。
美味しく頂いた大きめのモモ1個分のエネルギー＝100kcaLを消費するにはどうしたらいいでしょうか。私たちのカラダは火を付けて燃やすわけにはいきませんので、カラダを動かすことによってエネルギーを消費することになります。
では100kcaLを消費するにはどれだけカラダを動かせばいいのでしょうか。
腹ごなしで近所をゆっくり歩くなら▲軽い散歩 約30分
しっかり歩くなら・・・・・・・・▲ウォーキング 約25分
しっかり走るぞ！・・・・・・・・▲ジョギング 約10分
近所を自転車で回るぞ！・・・・・▲サイクリング 約20分
プールで泳いじゃうぞ！・・・・・▲クロール 約5分
参考：日本糖尿病学会編 糖尿病治療ガイド2002-2003より一部改変 PDFファイル
と、これだけの活動をすると100kcaLを消費することになります。
100kcaLの食べ物と飲みもの、そして100kcaLを消費する運動についてはこちらに判りやすいイラストの一覧表があります↓
ーーーえええ。ミカン3個、リンゴ半分、モモ1個ぐらいなら軽く食べちゃうけど、食べる度にこんなにカラダを動かしてないよ。
そうですよね。モモ1個食べる度にクロール5分泳ぐことのできる人はそういないと思います。そうなると、特に大食いしなくてもどんどん使われないエネルギーがカラダに残って太ってしまう！と思いますよね。
では食べたものに含まれているエネルギーはどこに行ってしまっているのでしょうか。その答えはこちら↓
体温計に示されている数字です。誰もが36.6度前後の体温があります。体温って事は「身体の温度」ということですから「熱」です。私たちのカラダは水を沸騰させるような激しい熱を出したりはしませんが、体温というカタチで熱としてエネルギーを消費しています。
その証拠に安静にしている時よりも、カラダを動かした時の方が体温が上がっています。
ゴール地点では、39℃の高熱状態!?
長距離走やマラソンで走り続けていると体が熱くほてって汗が出てきます。このとき、実際に体温は上がっています。エネルギーを燃焼し続けているのですから当然のことですが、マラソンランナーの場合、走り始めの深部体温は37℃でも42.195kmのゴール地点では39℃ぐらいまで上がるといわれています。ゴールするときにはまさに高熱レベル。そのため、走る前と後、走行中もクールダウンが重要なのです。
ちなみに平均体温＝平熱は
日本人の体温の平均値は36.6℃から37.2℃のあいだ。
だから37℃が平熱の人がいても当たり前。平熱は、人によってちがうのです。
10歳から50歳前後の健康な男女3000人以上に対し、実測で30分測ったときの体温の平均値は、36.89℃±0.34℃（ワキ下検温）になります。つまり36.6℃から37.2℃の間であれば「普通」なのです。また、この範囲に入るのは全体の7割ちょっとの人ですから、少しくらいその範囲からずれていても、おかしくはありません。「平熱」にも個人差があって当然なのです。医学的に正しい測り方をすれば、37℃はむしろ平均的な平熱の範囲内だということがわかっています。
ということのようです。
最近外出先で検温を求められることも増えてきていますので、自分の平熱を知っておくことも大切です。
ーーーじゃあ、何もしなくても体温でカロリー消費してくれるのなら安心！
残念ながらそれは違います。
太るということはカラダに使わなかったエネルギーを溜め込んでいること。元々は命を守るための仕組みです。現在の日本では食べたい時に食べることができる程豊かですが、野山を獲物を探していた頃は自由に食べ物が手に入りませんでした。食事ができない＝栄養補給が途絶えてしまってもしばらくの間、活動ができるように、次の栄養補給までの間の命を繋ぐために、私たちのカラダはエネルギーを溜め込むように作られているのです。つまり非常食をカラダの中に溜めている姿が太っていると言えるのかも知れません。非常用のエネルギーを溜め込む先は主に「脂肪」だからです。
カロリーと体脂肪の関係とは
100kcalのエネルギーを持つ食べ物を食べても、100kcalのエネルギーを消費する運動をすれば、食べた分のエネルギーは消費され、からだの中には残りません。しかし食べたエネルギーを全て消費しきれずエネルギーが余って残った場合、そのエネルギーは、「脂肪細胞」に変えられてからだに貯蔵されます。
では、その溜め込んだ脂肪を減らすにはどうしたらいいのでしょうか。
脂肪1kgを消費するには
では、体内に貯蔵されている脂肪1kg（1,000g）を消費するにはどれだけのカロリーが必要になるのでしょうか？
脂肪1gは9kcalなので、1kgの脂肪を消費するには9000kcalのカロリーが必要かといえばそうではありません。人間の脂肪は「脂肪細胞」として蓄えられているので、全てが純粋な脂肪というわけではありません。脂肪細胞の約8割は脂質（あぶらの塊）ですが、残り2割ほどは水分や細胞を形成するさまざまな物質で構成されています。
これを踏まえて計算すると脂肪1kgを消費するのに必要なエネルギー（カロリー）は、
9kcal×1000g×80％＝約7200kcal
程になります。 つまり、1カ月で1kgの脂肪を減らすために消費すべきエネルギーは、7200÷30＝240kcalとなり1日あたり240kcalになります。毎日240kcal分のエネルギーを多く消費する、もしくは摂取を抑えられれば1カ月で1kgの脂肪を減らすことが出来るのです。
ちなみに240kcalは、
食べ物では「どら焼き1個」や、「発泡酒ロング缶（500ml）1つ」程度。
生ビールなら「中ジョッキ1.2杯」くらいです。
※2 運動では「ウオーキング約50分」、
「ジョギング約27分」程度を目安と考えてください（約171cmの70kgの30-40代男性の場合※ 1）。
※1 平成23年国民健康・栄養調査報告、身体状況調査の結果より
※2 日本食品標準成分表2010より
脂肪1g には9kcaLのエネルギーが詰まっています。つまり1gの脂肪で水の温度を9度上昇させることができるぐらいのエネルギーが詰まっているのです。そして
（脂肪1gあたりのエネルギー）9kcal×（脂肪総量）1000g×（比率）80％＝約7200kcal
カラダの脂肪を1kg分のエネルギーを消費させようとすると、なんと約7200kcaL消費しなくてはなりません。これは、
軽い散歩・・・・・約2160分
ウォーキング・・・約1800分
ジョギング・・・・約72分
クロール・・・・・約36分
に相当します。たった1kgの脂肪を使い切るだけなのにとてつもない数字ですね。
ーーーもう高カロリーなものは食べられない･･･
そうなっちゃいますよね。でも食事はカロリーを摂るためだけに食べているわけではありません。
100kcaLの牛乳を見てみましょう。
↑こちらのサイトを使って牛乳の栄養成分を見ていきます。
牛乳100kcaL分は149gになります。
牛乳（149g）の栄養成分
エネルギー・・・・・・・・・ 100kcal
タンパク質・・・・・・・・・ 4.92g (19.68kcal)
脂質・・・・・・・・・・・・ 5.66g (50.94kcal)
炭水化物・・・・・・・・・・ 7.15g (28.6kcal)ビタミン類
ビタミンA・・・・・・・・・ 56.62μg
ビタミンD・・・・・・・・・ 0.45μg
ビタミンE・・・・・・・・・ 0.15mg
ビタミンK・・・・・・・・・ 2.98μg
ビタミンB1・・・・・・・・・ 0.06mg
ビタミンB2・・・・・・・・・ 0.22mg
ナイアシン・・・・・・・・・ 0.15mg
ビタミンB6・・・・・・・・・ 0.04mg
ビタミンB12・・・・・・・・・ 0.45μg
葉酸・・・・・・・・・・・・7.45μg
パントテン酸・・・・・・・・ 0.82mg
ビオチン・・・・・・・・・・ 2.68μg
ビタミンC・・・・・・・・・・ 1.49mgミネラル
ナトリウム・・・・・・・・・ 61.09mg
カリウム・・・・・・・・・・ 223.5mg
カルシウム・・・・・・・・・ 163.9mg
マグネシウム・・・・・・・・ 14.9mg
リン・・・・・・・・・・・・ 138.57mg
亜鉛・・・・・・・・・・・・ 0.6mg
銅・・・・・・・・・・・・・ 0.01mg
ヨウ素・・・・・・・・・・・ 23.84μg
セレン・・・・・・・・・・・ 4.47μg
モリブデン・・・・・・・・・ 5.96μg食塩相当量・・・・・・・・・ 0.15g
牛乳100kcaL相当約150g分にはこれだけの「豊富な栄養素」が含まれているのです。
では砂糖はどうでしょう。
砂糖100kcaL分は26gになります。
砂糖（26g）の栄養成分
エネルギー・・・・・・・・・ 100kcal
タンパク質・・・・・・・・・ 0g (0kcal)
脂質・・・・・・・・・・・・ 0g (0kcal)
炭水化物・・・・・・・・・・ 25.79g (103.16kcal)
ナトリウム・・・・・・・・・ 0.26mg
カリウム・・・・・・・・・・ 0.52mg
カルシウム・・・・・・・・・ 0.26mg
銅・・・・・・・・・・・・・ 0mg
一目瞭然。しかも砂糖はたった26gで100kcaLです。
同じ100kcaLでも何を食べるのかによって含まれる栄養素は全く異なってきます。なので、摂取するカロリーを意識するのはとても大切ですが、それと同じくらいそのカロリーの中にどれだけ栄養素が入っているかを考えることも大切なのです！
カロリー＝エネルギーの単位。エネルギーは私たちの活動の源になります。でも、私たちはエネルギーだけあればよい訳ではありません。カラダを作り、維持するものも必要です、それが栄養。
26gの砂糖も、たくさんの種類の栄養素を含んだ149gの牛乳も同じ100kcaLです。
バランスのよい食事とは、エネルギーと栄養のバランスがちょうどいい食事のことです。何を選び、どれくらいの量を食べるのか。それであなたのカラダは変化します。
★モゥー！ポイント★
脂肪1kgを消費するのに7200kcaLが必要。72リットルの沸騰したお湯を沸かせるほどのエネルギーで、人は2160分＝36時間も歩き続けることができるのです！
人のカラダってもの凄く「省エネ設計」されていると思いませんか？
その省エネ設計のカラダにもしものための非常食としての脂肪。このような仕組みのカラダを獲得するようになった歴史があるんだと思いませんか？
とちょっと真面目な話になってしまったので最後はこちらで締めたいと思います↓
ー 適 材 適 食 ーてきざいてきしょく
小園 亜由美 （こぞのあゆみ）管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・日本化粧品検定1級
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。
