今週のお題「朝ごはん」
2023年6月24日土曜日、第72回福岡糖尿病セミナーが福岡市天神で開催されました。テーマは「思春期糖尿病の心の問題を考える」です。
私は福岡糖尿病セミナーで世話人としてお手伝いを頂いています。
第72回福岡糖尿病セミナー
主 催 福岡市医師会、福岡糖尿病セミナー
日 時 2023年6月24日(土) 14時00分~17時00分
場 所 エルガーラホール @福岡市天神
参 加 自由
参加費 参加者全員:500円
講 演
1.「インスリンの自己注射ができなくなった思春期の1型糖尿病女児への関わり」
本村 さゆり 先生(福岡市立病院機構福岡市立こども病院 看護師)
2.「1型糖尿病に心因性嘔吐を合併し入退院を繰り返す症例~心理士の関わりを中心に~」
西 雅美 先生(福岡徳洲会病院 臨床心理士)
3.「インスリン注射に抵抗がある1型糖尿病男児へのかかわり」
黒木 幸恵 先生(南昌江内科クリニック 看護師)
4.「1型糖尿病発症後、心因性嘔吐で入退院を繰り返した2症例から考える心理的問題」
中村 拓也 先生(福岡徳洲会病院 総合内科)
5.「糖尿病の受け止め方から読み解く心の状態とその背景」
波夛 伴和 先生(九州大学病院 心療内科 助教)
特別講演
糖尿病の受け止めから読み解く心の状態とその背景
波夛 伴和 先生(九州大学病院 心療内科 助教)
心療内科の役割
身体疾患(内科・外科)と精神疾患(精神科)の重なり合う部分=心身症
対象疾患:器質的な異常を認めない身体疾患、ストレスに関連した身体疾患(心身症)、ストレスに関連した精神疾患(身体症状症、摂食障害、適応障害)
*内科医が心身相関の気づきを促すこととなる。
心身症の定義
身体疾患のなかでもその発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し器質的・機能的障害を認める病態。
※神経症やうつ病などほかの精神障害に伴う身体障害は除外する。
神経症:ストレス→思考と感情を繰り返す→疲弊による心身の症状
原因となる思考や感情が捉えやすい
心身症:ストレス→思考や感情を避ける→過剰適応や依存→身体症状
失感情症・失体感症であり、原因となる思考や感情が捉えにくい
ストレスの対処法
①問題焦点コーピング
ストレッサー自体を変化させて解決を図ろうとする方法
例)ストレスから離れる、信頼できる人に相談する
②情動焦点コーピング
ストレッサーに対する考え方や感じ方を変えようとする方法
例)気持ちの整理や発散、感じ方や捉え方を変える
③ストレス解消型コーピング
別のことで身体の外に追い出したり発散させたりする方法
例)買い物、運動
患者が「ストレスを感じない」と申告する場合
- 本当は気づいている→患者との関係が構築されれば共有できる
- 本当に気づいていない→患者との関係が構築されても話し合えない=失感情症
失感情症
*自分の感情に気付くのが難しい、感情を言葉で表現するのが難しい。
*幼少期に自分の感情を表現することができなかったことがきっかけになることある。
心身症の治療
抑圧されている感情に気付く援助(心身相関の気づき)
↓
自分の感情にとどまりその大きさを知る(抑うつと受容)
↓
相反する感情を排除しない
感情同定のための援助
①質問により内省を促す→背景にある感情に気付く
②寄り添う(支持的、共感)→自然に感情が表現しやすくなる
③より深いレベルの共感、共鳴→変性意識状態における感情の活性化
心理療法とは
人間との交流を通して症状や苦痛、窮屈感や不自由感に介入する治療。
①パーソナリティや考え方の変化や成長を積極的に目指していく治療。
(例:力動的精神療法、認知行動療法など)
②そうした変化は目指さず、その人が現在持っている脂質を十分に生かせるようにすることで適応力を上げることを支援する治療。
※カウンセリングに近い
※精神的健康度が高い(例:支持的精神療法など)(日本精神神経学科ウェブサイト)
糖尿病エンパワーメント
患者は自らの問題を解決する能力をもっており治療の主導権は患者が持つべき。
↓
患者との関係がよくなり治療効果も得やすい。
自主性を重んじる/介入には消極的。
心療内科の摂食障害治療
エンパワーメントの考え方は心理的関わりの基礎。
*行動療法の枠組み+感情に焦点を当てる治療
1型糖尿病患者の病状レベル
レベル1:(全体の約3/4)
専門的なメンタルヘルスを必要としない
患者自身が心理的、社会的課題に対処するのを支援する
レベル2:(全体の約1/4)
ある程度専門的な心理社会的支援が必要
糖尿病管理と心理的治療を統合する
レベル3:(全体の約5%)
精神医学的治療を必要とする。摂食障害や統合失調症など
糖尿病ケアチームとメンタルヘルスの専門家の協力が必要
心療内科ができること
感情が表現しづらい人の治療
関係づくり、病態の見立て、感情をひきあげること
小児科、糖尿病専門医との症例検討を行う
心療内科を受診するひとの特徴
①境界知能タイプ(IQ 70-84)
全人口の13.6%(7人に1人)
受け止め方:糖脳病になったことを悲観的にとらえていない、インスリンを打つことに対する心理的障害は大きくない
対応:理詰めの話し合いは避ける、言語<知覚:図を書いて説明、言語<知覚:図を書かせてみる
②神経症タイプ
受け止め方:自分のやりたいことを実現していきたい、ずっと考えている(不安)、親から反対されることを恐れている
対応:本人の考え、感情があるので、それを承認してチャレンジを後押し、親に自己主張する機会を作る
③心身症タイプ(身体症状症)
受け止め方:糖尿病になったときは仕方ないと思った、糖尿病のストレスで症状がでているとは思わない
対応:糖尿病発症以前の歴史を傾聴して、陰性感情や抑圧を見出す、治療者が怒りを代弁して本人の怒りを出しやすくしていく
④セルフ・スティグマタイプ(摂食障害)
受け止め方:体重が増えたら自己管理できなくなってしまって糖尿病になったと思われる、恥ずかしい気持ちになってしまった、受け入れることはできない
愛着の課題→他人軸寄り→1型発症→セルフ・スティグマ→高い目標→破綻
社会的スティグマ+患者の特徴→セルフ・スティグマとなっていたが、社会的スティグマは医療者の誤解が減り、アドボカシー活動などが行われることにより軽減したためもあり1型糖尿病+摂食障害は近年減っている
愛着理論
- 特定の養育者との結びつき(愛着)が幼い子供の発達や安定にとって不可欠な役割を果たしている(ジョン・ボウルビィ提唱)
- 子供が不安を感じたときに愛着対象にしがみつけることが安心感の拠り所となり活発な探索活動を支えている
- その拠り所を「安全地帯」と命名。多くの場合母親を安全地帯とする
医療者が臨時の安全地帯になることもある
「おすしさいこうかよ」
「お寿司最高かよ」に18.5万いいね!子どもとの関わりで意識したいガチ真実|CHANTO WEB
まとめ
- 心療内科を受診する人は境界知能に該当する人、小児・思春期の愛着にミスマッチがある人が多い。
- 糖尿病の受け止め方から、その人の困りごとを推測しながら関わることが大事。
- 医療が患者や家族の安全地帯になれるよう、医療従事者がお互いに安全地帯に慣れるとよい。
パネルディスカッション
今回、講演を担当された先生によるパネルディスカッションが行われました。
★ぴょん!ポイント★
最後になりましたが、
一般講演 座長
都 研一 先生(福岡市立病院機構福岡市立こども病院 内分泌・代謝科 科長)
藤 啓子 先生(小西第一病院 薬剤師)
一般講演・パネルディスカッション 演者
本村さゆり 先生(福岡市立病院機構福岡市立こども病院 看護師)
西 雅美 先生(福岡徳洲会病院 臨床心理士)
黒木 幸恵 先生(南昌江内科クリニック 看護師)
中村 拓也 先生(福岡徳洲会病院 総合内科)
特別講演 座長
岡田 朗 先生(岡田内科クリニック 理事長・院長)
波夛 伴和 先生(九州大学病院 心療内科 助教)
そして
本日会場で、ネットワークの先で参加頂いた医療従事者のみなさま、
講演会のスタッフのみなさまに心から深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
(おまけ)
新天町で飾り山を見かけました。福岡の夏の準備は着々と始まっています。
ー 適 材 適 食 ーてきざいてきしょく
小園 亜由美 (こぞのあゆみ)
管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・病態栄養専門管理栄養士・日本化粧品検定1級
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。