今週のお題「遠出」

毎月季節の魚介を紹介するシリーズ★ その名も「旬の役魚」。
私は健康なカラダづくりに役立つ海の幸・魚介類を【役魚やくぎょ】と呼んでいます。季節ごとに旬を迎える魚たちが持つ特徴的な栄養や成分を充分に引きだして美味しく楽しく頂きましょう。7月の役魚はカマスです。

カマス
カマスの旬は
- アカカマス・・・・10月〜12月頃
- ヤマトカマス・・・6月〜8月頃
と種類によって異なります。

カマス(魳、梭子魚、梭魚、魣)
スズキ目カマス科(学名:Sphyraenidae)に分類される魚類の総称。カマス科はカマス属のみ1属で構成され、オニカマスなど27種が記載される。バラクーダ(Barracuda)という英名でも知られている。秋冬時期のカマスを特に「霜降りカマス」という。
カマスは大きく分けてヤマトカマスとアカカマスの2種類います。

ヤマトカマス(ミズカマス)

ヤマトカマス Sphyraena japonica (英:Japanese barracuda)
全長35cm。アカカマスに比べて小型で、体色は青味がかり、体側の縦帯を欠く。腹鰭は背鰭と同じか、やや後方に位置する。鱗は小さく剥がれやすい。アカカマスに対して「ミズカマス」とよばれることもある。関東、能登半島以南から南シナ海まで分布する。タチウオの仕掛けに掛かることがある。

アカカマス(本カマス)

アカカマス(Sphyraena pinguis Günther, 1874)
カマス科カマス属の硬骨魚である。
分布
沿岸性が強く、日本では最も普通に見られるカマスである。港や堤防にも多い。カマス科の中では北方に分布する種で、サンゴ礁の海域にはいない。北海道から九州南岸にかけての日本海・東シナ海・太平洋沿岸、瀬戸内海、屋久島。朝鮮半島(西岸・南岸・東岸)、済州島。渤海。黄海。中国(東シナ海・南シナ海沿岸)、台湾西岸。インド洋から西太平洋にかけて。

アカカマス(本カマス)とヤマトカマス(ミズカマス)の違い
赤カマスとヤマトカマス(ミズカマス)
小田原の市場で、上がアカカマスでお刺身、下がミズカマスで少し水っぽいので干物がおススメと言われました。アカカマスは黄色みがかってウロコが大きめ、ヤマトカマスは青っぽくてウロコが小さめです。
アカカマスとヤマトカマスはどちらもカマス科の魚ですが、いくつかの違いがあります。アカカマスは体がやや太く、体色が赤みがかった黄色で、一般的に大型で脂がのっているため「本カマス」とも呼ばれます。一方、ヤマトカマスは体が細長く、体色は灰色または淡い灰褐色で、アカカマスよりも小型で水分が多いことから「ミズカマス」とも呼ばれます。また、アカカマスは背ビレと腹ビレの位置関係で見分けることができ、ヤマトカマスは腹ビレが背ビレとほぼ同じ位置から始まるのに対し、アカカマスは腹ビレが背ビレよりも前方に位置しています。
アカカマス (本カマス)
体色・・・・・・赤みがかった黄色
体型・・・・・・やや太く、しっかりした印象
大きさ・・・・・比較的大きくなり、40-50cm程度
味・・・・・・・脂がのっており、塩焼きや刺身で美味
別名・・・・・・本カマス、アブラカマス 浦安水辺の生き物図鑑
特徴・・・・・・腹ビレが背ビレよりも前方に位置する
ヤマトカマス (ミズカマス)
体色・・・・・・灰色または淡い灰褐色
体型・・・・・・細長く、スリムな印象
大きさ・・・・・比較的小さく、30-40cm程度
味・・・・・・・水分が多く、干物に適している
別名・・・・・・ミズカマス
特徴・・・・・・腹ビレが背ビレとほぼ同じ位置から始まる
■見分け方のポイント
背ビレと腹ビレの位置
アカカマス・・・腹ビレが背ビレよりも前方にある
ヤマトカマス・・ほぼ同じ位置から始まる
体色
アカカマス・・・赤みがかった黄色
ヤマトカマス・・灰色または淡い灰褐色
大きさ
アカカマス・・・比較的大きく
ヤマトカマス・・小さい
今回は夏に旬を迎える「ヤマトカマス」を中心に紹介します。

カマスの名の由来

カマスという名前は、その大きな口が穀物などを入れる袋「叺(かます)」に似ていることに由来します。叺は、藁などで作られた口の大きな袋で、昔はよく穀物や石炭などを入れるために使われていました。カマスは、この叺のような大きな口を持つことから、その名が付けられたとされています。
「梭子魚(サシギョ)」とも書かれますが、これは機織りで、たて糸の中をくぐらせる、よこ糸を巻いた小さい舟形の梭(さ)に姿が似ているところから付けられたようです。
「叺(かます)」というのはこういうものらしいです↓
叺(かます)
袋の一種。藁蓆(わらむしろ)を二つに半折し、両端を縄で閉じて封筒状にした容器である。肥料、石炭、塩、穀物などを入れる。「かます」は蒲簀の意。なお「叺」は国字である。
他にも、
カマス封筒
カマス封筒とは、封筒の貼り方の一種で、洋形封筒の長辺に封入口があり、裏面(差出人面)の左右両側にのりしろを設けて貼り合わせる方法のことです。封入口が広いため、機械での大量封入に適しており、ダイレクトメールなどに多く利用されます
という感じで色々なものに「カマス」という言葉は使われています。

カマスは漢字で「魳」
カマスの漢字は難しいですよね。

- 1つ目。カマスは老魚と言われており魚ヘンに「師」で「鰤」と書いていましたが、ブリ(鰤)と漢字が同じになるため魚ヘンに「帀」で「魳」と書く。
- 2つ目。カマスは攻撃的で群れで魚を追い込んで食べることから、「師(いくさ)」の右側をとり魚ヘンに「帀」で「魳」と書く。
ブリ(鰤)の字がカマスだった時もあったんですね。

カマスのローカル名
カマスは各地によって独自の呼び名があるようです。

カマスのローカル名
- ネイラカマス :神奈川県
- アブラガマス :静岡県
- テッポウカマス:石川県
- マガマス :和歌山県
- アラハダカマス:三重県
- シャクハチ :徳島県
- ツチカマス :高知県
- ナダカマス :福岡県
- アカガマサー :沖縄県
「カマス」という語句が入っているものが多いようですが徳島県の「シャクハチ」=尺八はなるほど!って感じですね。

カマスは鮮度が勝負!
カマスは特に鮮度が大切!ということが江戸から伝わっている「ことわざ」に残されています。

「カマスを買わず」の由来と意味
江戸時代に生まれたことわざ「カマスを買わず」は、カマスは非常に新鮮な状態で食べるべき魚だという意味を持っています。
カマスは釣りたてが一番美味しいとされており、時間が経つにつれて風味が落ちてしまいます。そのため、漁港近くで新鮮なカマスを手に入れることが大切であり、江戸時代には「カマスは買わない方がいい(自分で釣ってすぐに食べるべき)」という考えが広まっていたのです。この言葉からも、当時の人々がどれだけ新鮮さを重視していたかがわかります。
買っちゃだめだ!自分で釣ってその場で食べるのがカマスは一番!というのは極端ですが江戸っ子らしいお話ですね。
他にもカマスに関してのことわざがありました↓

カマスを使ったことわざ

カマス一尾、底に千尾
「ひと群れ千尾」。カマスは大群で回遊する。千尾は一つの表現であろうが、常に大集団。ただし足が速いので、一尾釣ったら手返しよく釣るのがコツ。「イナダ一尾、底 に千尾」と全く同じ言葉がある。イナダはブリの若魚。アユに「一跳ね千尾」、トビウオには「一尾飛ぶと下に千尾」の類語がある。カマスは干物に限る
魚の干物は和食の総菜料理の代表。旅館の朝食には必ずと言っていいくらい干物が出てくる。水分の多い魚は、干す、焼く、漬ける(塩・粕・味噌・糠など)ことで水分を 流す。「 の焼き食い一升飯」のカマスは、干しカマスを焼いたもの。霜降りカマス
カマスには普通、赤 (アカカマス=アブラカマス)と 青 (青カマス=ヤマトカマス=ミズカマス)があり、「カマスが旨くなるのは初冬の頃から」と、前者は冬が旬。「霜降り」は、脂肪が霜降り状に乗ったアカカマスの初冬の 味を称える言葉。この言葉の霜降りは両方に掛かっている。後者は夏が旬だが一般的にみて赤カマスの方が美味。https://www.kaiseiken.or.jp/umimame/lib/umimame_37.pdf
カマスの焼き食い一升飯
焼いたカマスは一升飯を食べられるほど美味の意
どのことわざもカマスの捕り方やカマスの美味しさを伝えるものばかり。江戸時代の人たちはみんなカマスが大好きだったのがわかりますね。

カマス語があった

カマス語(カマスご、Kamassian language)
ウラル語族サモエード語派に属す死語。マトル語やセリクプ語とともに南サモエード語群に含まれる。(しかしこれは系統関係に則していない。)カマス方言とコイバル方言の2方言が存在する。最後の話者、 en:Klavdiya Plotnikovaが1989年に死去したことで死語となった。カマス語はロシアのウラル山脈の東側でカマス人によって話されていた。「コイバル」は、ハカス語を話すようになった元カマス人を指す用語である。現代のコイバル人はサモエード人とハカス人、エニセイ人 の混合体である。
ロシアの言葉のようです。魚のカマスとは名前の発音が似ているだけで全く関係ないようです。
カマスの栄養成分

カマス 100gあたり
- 水分・・・・・・・・・・・70.3 g
- 熱量(カロリー)・・・・・134 kcal
- たんぱく質・・・・・・・・23.3 g
- 脂質・・・・・・・・・・・4.9 g
- 炭水化物・・・・・・・・・0.1 g
- 食塩相当量・・・・・・・・0.4 g
- 飽和脂肪酸・・・・・・・・1.36 g
n-3系脂肪酸・・・・・・・・1.03 g
n-6系脂肪酸・・・・・・・・0.17 g- 糖質・・・・・・・・・・・0.1 g
- 食物繊維・・・・・・・・・0 g
- ビタミンA・・・・・・・・13 µg
- ビタミンD・・・・・・・・10 µg
- ビタミンE・・・・・・・・0.9 mg
- ビタミンB1・・・・・・・・0.03 mg
- ビタミンB2・・・・・・・・0.14 mg
- ナイアシン・・・・・・・・4.2 mg
- ビタミンB6・・・・・・・・0.31 mg
- ビタミンB12・・・・・・・3.3 µg
- 葉酸・・・・・・・・・・・13 µg
- パントテン酸・・・・・・・0.52 mg
- ナトリウム・・・・・・・・150 mg
- カリウム・・・・・・・・・360 mg
- カルシウム・・・・・・・・59 mg
- マグネシウム・・・・・・・42 mg
- リン・・・・・・・・・・・190 mg
- 鉄・・・・・・・・・・・・0.5 mg
- 亜鉛・・・・・・・・・・・0.6 mg
- 銅・・・・・・・・・・・・0.05 mg
- マンガン・・・・・・・・・0.01 mg
- 灰分・・・・・・・・・・・1.4 g
- 文部科学省
「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 脂肪酸成分表編」

カマスの注目したい栄養素

高タンパク質
筋肉や肌、髪の毛などを作るのに重要で、美容や健康維持に役立ちます。
ビタミンD
カルシウムの吸収を助け、骨を丈夫にするのに役立ちます。また、免疫力向上や、うつ病予防にも効果があると言われています。
ビタミンB群
エネルギー代謝を促進し、疲労回復に効果があります。
DHA・EPA
血液をサラサラにし、動脈硬化や心筋梗塞などの生活習慣病予防に効果があります。また、脳の機能を活性化し、認知症予防にも役立つとされています。
ミネラル
体の機能を正常に保つために必要な栄養素です。
低脂肪
ダイエット中の方や、健康を意識している方にもおすすめです。

カマスの色々な楽しみかた

塩焼き
カマスの塩焼きは、最もシンプルで伝統的な調理法です。新鮮なカマスを適切に下処理し、塩をふってじっくりと焼き上げます。皮はパリッと香ばしく、身はふっくらとした仕上がりで、淡白な味わいの中に魚本来の旨味が凝縮されています。特に、脂の乗ったアカカマスは塩焼きにすると絶品です。干物
カマスの干物は、特に保存性が高く、風味が増すため、古くから親しまれている加工品です。新鮮なカマスを開いて塩漬けし、天日干しにして乾燥させます。干すことで旨味が凝縮され、噛むたびに豊かな風味が口の中に広がります。干物は焼いて食べるのが一般的で、ご飯やお酒のともに最適です。刺身
カマスの刺身は、鮮度の高いものに限られますが、その淡白で繊細な味わいが楽しめます。特に、新鮮なアカカマスは刺身にしても美味しく、脂の甘みが感じられます。刺身にする際は、皮を湯引きして提供することが多く、これにより食感と風味がより豊かになります。フライ・天ぷら
カマスは、揚げ物としても非常に美味しいです。淡白な味わいが衣とよく合い、フライにすると外はサクサク、中はふっくらとした食感が楽しめます。天ぷらも同様に、カマスの旨味を最大限に引き出す調理法の一つで、軽い口当たりが特徴です。煮付け
カマスの煮付けは、甘辛い味付けで煮込むことで、淡白なカマスの身に深い味わいが染み込みます。しょうがや醤油、みりんを使って煮ることで、和風の風味豊かな一品に仕上がります。特に、ご飯のおかずとして人気が高いです。

カマスの捌き方
カマスを捌く際の参考に↓

★にょろにょろポイント★
カマスの実験
カマスには「科学的な有名な実験」があります。

まず、大きな水槽を透明な板で仕切って、一方にはおなかを空かせたカマスの群れ、もう一方にはえさとなるイワシなどの小魚を放します。するとカマスたちはえさを食べようと、何度も何度も板に体当たりをはじめます。頭からぶつかって傷ついたりもしますが、ついにはあきらめておとなしくなってしまいます。
次に、水槽の中の透明な板をとってみます。自由にえさを食べはじめる…と思いきや、カマスたちはいっこうにえさを食べません。目の前を小魚が泳いでもまったく反応せず、最後にはそのまま餓死してしまうそうです。同じ実験を何度やってみても、同じ結果になるそうです。
さて、このかわいそうなカマスたちにえさを食べさせる方法があるのですが、わかりますか。
正解は…“別のカマスを一匹水槽に入れる”という方法です。たったそれだけのこと、と思うかもしれませんが、何も知らない新入りカマスが喜んでえさを食べている様子を見て、あきらめカマスたちもえさを食べ始めるそうです。
「カマス理論」とも言うそうです。
カマス理論とは、学習性無力感(学習性無気力)の説明によく用いられるたとえ話です。カマスを透明な仕切りで小魚と隔てられた水槽に入れると、最初は小魚を食べようと何度も仕切りにぶつかりますが、やがて食べられないと学習し、諦めてしまうという実験結果からきています。この理論は、組織や個人が、過去の失敗経験から、現状を変えようとする意欲を失ってしまう状態を指す際に用いられます。

夏のカマスは干物になることが多いようなので、なかなか鮮魚としてのカマスに出会うことは少ないかも知れませんが、もし出会ったらぜひ旬のカマスをお楽しみください。
ー 適 材 適 食 ーてきざいてきしょく
小園 亜由美 (こぞのあゆみ)
管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・病態栄養専門管理栄養士・日本化粧品検定1級

*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。


