新しいハッピーセットのCM
2021年年末、地上波でこんなCMが流れていました↓
観た人も多いと思います。マクドナルドのこども向けセットメニュー「ハッピーセット」のCMです。冒頭こんなシーンから始まります↓
野菜もあるよ!というコピーが表示された後に、
ハッピーセットで選べるよ!と表示され、えだまめコーンとサイドサラダ、キャプションはありませんが後ろにポテトが映し出されます。
さて、冒頭の「野菜もあるよ!」と表示されましたが、この中で野菜とはどれのことでしょうか。
以前、マクドナルドのCMについてお話したことがあります↓
2019年4月のブログなのですが、上記の記事を読んで頂くと判るように、同じ子ども向けのハッピーセットとして「野菜もしっかり食べよう!」のキャッチコピーの後にスイートコーンだけを映していたことに違和感を感じ、コーンは穀物であるとお話しました。おかげさまで多くの人に観て頂きました。
あれから2年半が経ち、新しいCMです。今回も管理栄養士としての視点で見ていきたいと思います。
サイドサラダが追加されている!
前回は「野菜といいながらスイートコーンだけ映すのはなぜ?そもそもサイドサラダという野菜サラダのメニューがあるのに!」と指摘しましたが、今回は
ちゃんとサイドサラダが追加され修整されています。ただ、あくまでもメインは新製品「えだまめコーン」なので、表現としてはえだまめコーン=野菜というイメージは変わりません。
スイートコーンだけでなくえだまめが入った!
そして単なるスイートコーンではなくえだまめがブレンドされました。
前回、スイートコーンは穀物と説明しましたが、ではエダマメは何でしょうか。緑色だから野菜?でしょうか。
野菜の定義とは?
野菜って何でしょう。
普段何気なく使っている野菜という言葉。誰もが野菜を知っていますし、食べています。でも「野菜って何?」と訊かれたらどう答えますか?
ーーー食べられる植物?
ーーー果物じゃない農作物?
何だかしっくりきません。そこで調べてみることにしました。
野菜(やさい、英: vegetable)
食用の草本植物の総称。水分が多い草本性で食用となる植物を指す。主に葉や根、茎(地下茎を含む)、花・つぼみ・果実を副食として食べるものをいう。
うーーーん、何となく判るんですけど、ハッキリとはしません。さらに調べてみると、
野菜の定義
野菜は一般には食用の草本植物をいう。ただし、野菜の明確な定義づけは難しい問題とされている。
園芸学上において野菜とは「副食物として利用する草本類の総称」をいう。例えばイチゴ、スイカ、メロンは園芸分野では野菜として扱われ、農林水産省「野菜生産出荷統計」でもイチゴ、スイカ、メロンは「果実的野菜」として野菜に分類されているが、青果市場ではこれらは果物(果実部)として扱われ、厚生労働省の「国民栄養調査」や日本食品標準成分表でも「果実類」で扱われている。
また、日本食品標準成分表において「野菜類」とは別に「いも類」として扱われているもの(食品群としては「いも及びでん粉類」に分類)は一般には野菜として扱われている。また、ゼンマイやツクシといった山菜については野菜に含めて扱われることもあり、木本性の植物であるタラの芽やサンショウの葉も野菜の仲間として扱われることがある。さらに、日本食品標準成分表において種実類に分類されるヒシなども野菜として取り扱われる場合がある。
そう、実は一般的な単語として誰もが知っているし使っている「野菜」という言葉に明確な定義は、現在のところ「ない」のです。
他にも「野菜」という言葉について調べてみても、
野菜
副食物として栽培・利用される、主として草本性植物をいう。食料として一般に青物(あおもの)、また菜(さい)とよばれるものは、古くは圃菜(ほさい)、山菜(さんさい)、野菜、水菜(すいさい)と生育する場所により区別されていた。しかし、しだいに栽培されるものと野生のものとに分けて、前者を公式的表現、たとえば官公庁用語などでは蔬菜(そさい)、民間では一般に野菜とよぶようになり、後者を山菜というようになった。最近では官公庁用語でも蔬菜の名称を廃して野菜というようになり、農林水産省などの蔬菜試験場も茶業試験場と統合、野菜・茶業試験場と改称され、さらに2001年(平成13)独立行政法人農業技術研究機構(農研機構)所轄の野菜茶業研究所となった。
と、あくまでも「一般的に」という但し書きがついての説明の範囲を出ません。
農林水産省の見解
では野菜を含む農作物を管轄する農林水産省はどのような見解を示しているのかというと、
日本標準商品分類(平成2年6月改訂、総務省)の野菜の区分は
- 根菜類 :だいこん、にんじん、ごぼう、馬鈴、等
- 葉茎菜類 :はくさい、キャベツ、ねぎ、たまねぎ、等
- 果菜類 :きゅうり、かぼちゃ、トマト、なす、等
に区分されています。
農林水産省の野菜生産出荷統計の調査対象品目(※)は以下のように分類されています。
- 根菜類 :だいこん、にんじん、ばれいしょ、さといも、かぶ、ごぼう、れんこん、やまのいも
- 葉茎菜類 :はくさい、キャベツ、ほうれんそう、レタス、ねぎ、たまねぎ、こまつな、ちんげんさい、ふき、みつば、しゅんぎく、みずな、セルリー、アスパラガス、カリフラワー、ブロッコリー、にら、にんにく
- 果菜類 :きゅうり、なす、トマト、ピーマン、かぼちゃ、スイートコーン、さやいんげん、さやえんどう、グリーンピース、そらまめ、えだまめ
- 香辛野菜 :しょうが
- 果実的野菜:いちご、メロン、すいか
(※)指定野菜(野菜生産出荷安定法第2条に規定する「消費量が相対的に多く又は多くなることが見込まれる野菜であって、その種類、通常の出荷時期等により政令で定める種別に属するもの」)及び指定野菜に準ずる野菜
となっています。
総務省のリストにはありませんでしたが、農林水産省としてはスイートコーンもエダマメも野菜の中でも果菜類に分類しているようです。ざっと説明すると、
根菜類こんさいるい
根菜類は土の中で成長した根や茎の部分を食べる野菜。
ダイコン、ニンジン、ジャガイモ、サトイモ、サツマイモ、レンコン等。葉茎菜類ようけいさいるい
主に葉と茎を食用にする野菜。
ネギ・セリ等。果菜類かさいるい
果実または種実を食用にする野菜。
ナス、ピーマン、トマト、シシトウ、キュウリ、オクラ、イチゴ、スイートコーン、エダマメ等。香辛野菜こうしんやさい
料理に香気や辛味を添える野菜。
シソ・ミョウガ・タデ・ワサビ等。果実的野菜かじつてきやさい
果実的な利用をする野菜。
イチゴ、メロン、スイカ等。
といった感じです。もう気づいた人も多いと思いますが、ここでの分類は食べることをテーマに分類されています、つまり「どこをどうやって食べるのか」、利用方法で分類しているのです。考えてみたら、そもそも食べられなければ野菜ではない、ということです、納得。
ちなみに果物的野菜についてこんな記述もありました↓
果物(くだもの、英: fruits フルーツ)
食用になる果実。水菓子、木菓子ともいう。
英語でfruitと言えば果実全般である(日本語の「果実」よりもさらに広い範囲を指す)。日本語の「果物」は、食用になる果実及び果実的野菜のうち、強い甘味を有し、調理せずそのまま食することが一般的であるものを「果物」と呼ぶ傾向がある。狭義には樹木になるもののみを指す。農林水産省では、統計上、果実は果樹(木本性などの永年作物)になるものとしつつ、野菜に分類されるもののうちイチゴ、メロン、スイカなど果実的な利用をするものを「果実的野菜」として扱っている。
甘ければ果物、そうでなければ果実的野菜、但し例外ありで、その例外のうちのひとつがイチゴなんですね。
野菜は利用方法で分類されているということが判ったところで、今度は、スイートコーンやエダマメについてそれぞれを詳しくみていこうと思います。
スイートコーン
スイートコーン
糖度の高い人間が消費するために栽培されたさまざまなトウモロコシです。スイートコーンは、トウモロコシの穀粒の胚乳内で糖からデンプンへの変換を制御する遺伝子に自然に発生する劣性突然変異の結果です。
主な栄養成分(分量 100 g あたり)
- カロリー・・・・・・・・92 kcaL
- 脂質・・・・・・・・・・1.7 g
- 飽和脂肪酸・・・・・・・0.3 g
- コレステロール・・・・・0 mg
- ナトリウム・・・・・・・0 mg
- カリウム・・・・・・・・290 mg
- 炭水化物・・・・・・・・17 g
水溶性食物繊維・・・・0.3 g
不溶性食物繊維・・・・2.7 g - タンパク質・・・・・・・3.6 g
- ビタミンC・・・・・・・8 mg
- カルシウム・・・・・・・3 mg
- 鉄・・・・・・・・・・・0.8 mg
- ビタミンB6・・・・・・・0.1 mg
- マグネシウム・・・・・・37 mg
炭水化物
糖分やデンプン質など炭水化物を多く含むスイートコーンは高エネルギーな食材です。そのため主食として利用されることが多い作物です。
穀物(こくもつ)
植物から得られる食材の総称の1つで、澱粉質を主体とする種子を食用とするもの。狭義にはイネ科作物の種子(米や麦など)のみを指し、広義にはこれにマメ科作物の種子(豆)や他科の作物の種子を含む。世界各地で農作物として大規模に栽培され、主食として利用されている。
不飽和脂肪酸
またコーン油でも知られているようにリノール酸やオレイン酸などを含んでいます。
エダマメ
枝豆(えだまめ)
大豆を未成熟で青い間に収穫し、食用にするもの。そのため豆類に分類されず、緑黄色野菜に分類される。
主な栄養成分(分量 100 g あたり)
- カロリー・・・・・・・・135 kcaL
- 脂質・・・・・・・・・・6 g
- 飽和脂肪酸・・・・・・・0.8 g
- ナトリウム・・・・・・・1 mg
- カリウム・・・・・・・・590 mg
- 炭水化物・・・・・・・・9 g
水溶性食物繊維・・・・0.4 g
不溶性食物繊維・・・・4.6 g - タンパク質・・・・・・・12 g
- ビタミンC・・・・・・・27 mg
- カルシウム・・・・・・・58 mg
- 鉄・・・・・・・・・・・2.7 mg
- ビタミンB6・・・・・・・0.2 mg
- マグネシウム・・・・・・62 mg
ここで一旦ストップ! エダマメとは説明にもあるように、
↓
↓
↓
ダイズなのです。ダイズがまだ成長しきっていない状態の時に収穫したものがエダマメなのです。
ということは、ダイズとは豆ですよね?
豆(まめ、英: Bean, Pulse)
マメ科植物の種子のことで、特に食用・加工用に利用される大豆、インゲンマメ、ヒヨコマメ、アズキ、ラッカセイなどの総称である。豆は菽穀類(しゅこくるい、英: Pulse crops)と言われ広義の穀物に含まれる。
ということは、成長しきっていない時は野菜の果菜類だけど、成長しきってしまうと豆類になる、しかも名前もエダマメからダイズに名前が変わる?ってことでしょうか。
エダマメの時は野菜、ダイズになると豆類
実はそうなんです。
枝になる豆、と書いて枝豆ですが、日本食品標準成分表によるとその分類は野菜類とされています。枝豆にはビタミンA、βカロテン、ビタミンCといった野菜に多く含まれる成分が含まれ、分類上も野菜の仲間とされているのです。
一方枝豆が成熟した姿である大豆は「豆類」。大豆になると栄養素も変化し、タンパク質やビタミンB1を豊富に含んでいます。
ということになっています。
さて、ここまで色々な文献を参考にみてきましたが、ここからは管理栄養士として考えてみることにします。
管理栄養士の仕事
私たち管理栄養士は、食事を通して健康を作り守るのが仕事です。適材適食。ひとりひとりに合った食材をひとりひとり合った食べかたを提案するカウンセリングを行っています。そんな管理栄養士の必須のツールがこちら↓
糖尿病食事療法のための食品交換表です。
ーーー食品を交換する表?
初めて訊くとイメージが沸かないと思いますので食品交換表について簡単に説明します。食品交換表を開くとこんな感じです↓
料理の写真と一緒に何やら上に数値が書いてあります。↑よく見ると「表1」「表2」という文字がありますね。
私たち管理栄養士は食べものを含まれている栄養素でグルーピングしています。↑この図の通り、表1から表6に調味料と全部で7つに分類しています。
- 表1 :穀物、イモ 等
- 表2 :果物
- 表3 :魚介、肉、タマゴ、大豆製品、チーズ 等
- 表4 :牛乳、乳製品
- 表5 :油脂や油を多く含む食品
- 表6 :野菜
- 調味料:味噌、蜂蜜、砂糖、みりん、ルウ 等
という感じです。
*とても情報量の多い本なので詳しいことは省略させて頂きます。
食品交換表ではどこに分類されるの?
まずスイートコーンですが、トウモロコシなので、表1「穀物」に分類されます。表1は炭水化物のうちデンプンを多く含む食材のグループです。あれ?でも表1には「豆」と書かれていますよね。では、エダマメも「表1」なのでしょうか。
エダマメはダイズと同じく表3に分類されます。表3は良質なタンパク質を多く含む食材のグループ。他の豆類とは違ってダイズだけは栄養価から表3になります。
↑この図の「表1」と「表3」の数値を見比べてみてください。これはそれぞれの表に含まれる食材のおおよその栄養価を数値化したもの(複雑なので詳細は省略)なのですが、
炭水化物|タンパク質|脂質
表1 18 2 0・・・スイートコーン
表3 1 8 5・・・エダマメ
となっていて、スイートコーンとエダマメは栄養的に見ると真逆?のような関係にあることが判ると思います。
そしてスイートコーンもエダマメも食品交換表の表6「野菜」ではないという点も確認しておきます。栄養学的にはどちらも野菜ではない、という事になります。
他にも様々な分類の仕方があります。参考までに↓
★がぉー!ポイント★
なぜ野菜を食べるのでしょう。
ーーー身体にいいから?
そうです。でも本当に身体にいいものを食べようと思ったら、適材適食。必要なものを必要なだけ。食べ過ぎず、食べなさすぎずがよいとされています。ご飯やお肉だけでは足りない栄養が野菜にはたくさん含まれています。だから野菜を食べると栄養のバランスがよくなるのです。
なぜこどもたちに野菜を食べるように促しているのか。
それはこどもたちが成長する上で必要な栄養素をしっかりと摂るため。中でも野菜はこどもたちには不人気なので、積極的に食べましょうとしているのだと思います。
大手スーパーのアンケートによると、
野菜が嫌いなこども・・・88.2%(n=1000)
という結果もあります。
今回のマクドナルドCMの「えだまめコーン」はこどもたちでも比較的食べやすい「野菜」ということなのかも知れません。
でも、こどもたちの成長や健康を考えるのであれば、食材に含まれる栄養素に注目すべきではないでしょうか。「えだまめコーン」だけではなく「サイドサラダ」も一緒に食べる方がよいと管理栄養士的にも野菜ソムリエ上級プロ的にも思います。
私の結論)
マクドナルドの「えだまめコーン」は栄養的には野菜ではありません。でも、悪いものではないので、サイドサラダも一緒に食べましょう★何よりもこどもたちの健康が第一だと私は考えます。
立場や目的、視点の違いから何をどう分類するのか、ということが変わってくるという事ですね。特に野菜に関しては明確な決まりがある訳ではない、ということです。
あなたはどう考えますか?
ー 適 材 適 食 ーてきざいてきしょく
小園 亜由美 (こぞのあゆみ)管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・日本化粧品検定1級
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。