今週のお題「変わった」
先日「プラスワンベジタブル」という福岡市の取り組みを紹介しました↓
その中で福岡市が市民に向けて行った食に関するアンケート調査の結果を見つけました。その内容が大変興味深かったので、今回からシリーズで紹介しようと思っています。
市民の食育に関するアンケート(PDFファイル)
↑こちらのアンケート結果を元に
の9つのシリーズでお話していきたいと思います。
↑前回までは項目をクリックすると表示されます。
5【郷土の食と食文化】
(1)福岡の郷土料理の認知度
問12 あなたは、次の福岡の郷土料理について知っていますか。【全体】福岡の郷土料理の認知度について、「知っているし、食べたことがあり、作ったことがある」の割合は、②がめ煮が61.4%で最も高く、④かしわめしも5割を超えている(55.9%)。『知っている』(「知っているし、食べたことがあり、作ったことがある」+「知っているし、食べたことがあるが、作ったことはない」+「知っているが食べたことはなく、作ったこともない」)の割合は、④かしわめしが95.6%、②がめ煮が95.2%で非常に高く、一方で⑤だぶは19.2%、①あちゃら漬けは21.8%と低い。『食べたことがある』(「知っているし、食べたことがあり、作ったことがある」+「知っているし、食べたことがあるが、作ったことはない」)の割合は、④かしわめしの93.7%が最も高く、⑤だぶが12.6%が最も低い。『作ったことがある』「知っているし、食べたことがあり、作ったことがある」)の割合は、最高は②がめ煮の61.4%、最低は⑤だぶの5.2%。
【性別】性別にみると、『知っている』の割合は、すべて女性の方が男性よりも高いが、特に①あちゃら漬けや⑤だぶで差が大きい。『食べたことがある』や『作ったことがある』も同様の結果となっている。
【年齢別】年齢別にみると、『知っている』の割合は、①あちゃら漬けでは年齢が高いほどその割合も高いが、⑤だぶでは年代で大きな違いはない。④かしわめしの『知っている』の割合は、すべての年代で9割を超えている。
市民の食育に関するアンケート(PDFファイル)
このアンケートで福岡の郷土料理として5つの料理名が挙げられていますが、私的には、
- あちゃら漬け・・・知らない
- がめ煮・・・・・・知ってる/食べた事がある/作った事がある
- 博多雑煮・・・・・知ってる/食べた事がある/作った事がある
- かしわめし・・・・知ってる/食べた事がある/作った事はない
- だぶ・・・・・・・知らない
です。せっかくなのでそれぞれの料理について調べました↓
あちゃら漬け(あちゃらづけ)
主な伝承地域 福岡地方
主な使用食材 白瓜、なす、れんこん、きくらげ、ごぼう、早煮昆布、人参
歴史・由来・関連行事 刻んだ季節の野菜に赤唐辛子を加えた酢の物である。爽やかな甘みと酸味に、唐辛子の辛味がアクセントになる。冷蔵庫がなかった時代から夏場に日持ちする料理として重宝されてきた。「あちゃら漬け」は漢字で「阿茶羅漬け」と表記し、ポルトガル語で野菜や果物の漬物を意味する「achar(アチャール)」が語源とされる。日本以外のアジア諸国でも「チャーレ」「オチョール」など似た発音で漬物を指す言葉が存在する。ただし、外国である「あちら」を意味し「南蛮風の漬物」を表して名付けられたともいわれ由来は諸説ある。博多湾は昔から貿易の拠点として栄えてきた。「あちゃら漬け」は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけておこなわれた南蛮貿易により伝わったといわれる。また、「あちゃら漬け」に欠かせない赤唐辛子も同じ時代に日本に伝来したとされる。
がめ煮(がめに)
主な伝承地域 福岡県全域
主な使用食材 鶏もも肉、じゃがいも、人参、たけのこ
歴史・由来・関連行事 「がめ煮」は福岡県の代表的な郷土料理で、博多の方言「がめくりこむ」(寄せ集めるの意味)が名前の由来とされている。また、豊臣秀吉のおこした文禄の役の時、朝鮮に出兵した兵士が当時「どぶがめ」と呼ばれていたスッポンと、ありあわせの材料を煮込んで食べたのがはじまりで、そこから「がめ煮」と名付けられたという説も伝わっている。今では、スッポンではなく鶏肉を使うのが一般的で、「がめ煮」は正月料理や精進料理としてもつくられる一品で、地元では欠かせない味となっている。全国調査で福岡市の鶏肉とごぼうの消費量が多いのは「がめ煮」に使うことが影響しているといわれるほどだ。「がめ煮」は、全国的には「筑前煮」とも呼ばれているが、筑前煮は、骨なしの鶏肉も使われるのに対し、がめ煮は骨つきの鶏肉が使われることがある。
食習の機会や時季 「がめ煮」は正月やお祭り、結婚式などのお祝い事のときによくつくられる。若鶏の水炊きとともに農山漁村の郷土料理百選に福岡県の郷土料理として選ばれており普段のおかず、酒の肴になっている。博多祇園山笠のお祝いや祭りにも振る舞われる。
博多雑煮(はかたぞうに)
主な伝承地域 博多地区
主な使用食材 小丸餅、ブリの切り身、しいたけ、里芋、人参、かつお菜、大根
歴史・由来・関連行事 「博多雑煮」に欠かせない材料のかつお菜は、博多に古くから伝わる野菜で高菜の仲間である。茎の部分がカツオ節の風味があることから、この名になったそうだ。色は濃い緑色で、肉厚の葉は縮れている。ブリは「ヤズからイナダ、ハマチ、最後にブリ」と大きさによって名前が変わっていく出世魚で、めでたい席の料理に使われるが、なぜブリを博多では雑煮入れるようになったかは、いろいろ説がある。その一つとして、博多では、嫁の里に年末「嫁さんぶりがよい」と大きなブリを一本持っていく風習があった。そのため正月のおせちの材料や雑煮に使用されるようになったともいわれている。そして、「博多雑煮」は、まるでおでんのように、具を1人前ずつ竹串に刺して準備しておくというユニークなつくり方である。
実は、この調理スタイルが生み出された背景には、福岡の歴史が深く関わっている。昔から、博多商人の町として知られていた福岡だが、そんな彼らを支えたのが、“ごりょんさん”の存在。ごりょんさんとは、貴人の妻への敬称「御寮人(ごりょうにん)」に由来し、博多商人のおかみさん達をこう呼ぶ。来客も多く、商売に忙しい商家では、雑煮の準備にも手間をかけてはいられない。そこで、思いついたのが、前もって具を1人分ずつ串に刺しておくこと。こうしておけば、後は具材を串から抜いて、椀に入れ、最後に出汁をかけるだけで良いので、年始の挨拶に来る大勢の客人にも、手早く振る舞える。忙しいごりょんさんたちのアイディアである。食習の機会や時季 お正月の元旦に、お膳に数の子、歯固め、黒豆をつけ、お屠蘇(とそ)がまわったところでこの雑煮を出していた。また、今では少なくなったようだが、かつて来客の多い商家では、雑煮の具はあらかじめ下ゆでして食べやすい大きさに切り、串刺しにしておいておき、食べる時に椀に盛るのが一般的だった。めでたい料理としての格式を重んじるとともに、急な来客でも手早く仕上げてもてなしていた。
かしわめし
主な伝承地域 県内全域
主な使用食材 米、鶏肉、ごぼう、人参
歴史・由来・関連行事 九州地方では鶏肉のことを「かしわ」と呼び、炊いたごはんに、かしわや具材を煮詰めたものを混ぜた郷土料理を「かしわめし」と呼ぶ。古くから福岡県の各地域の家庭や食堂でつくられている定番の郷土の家庭料理であり、祭りや運動会等の行事、ハレの日など特別な日にも食されている。駅弁としても古くより愛されている「かしわめし」は、今日に至ってはメディアでも取り上げられ、福岡の名物となっている。「かしわめし」に使われる鶏肉は、福岡県の地鶏である「はかた地どり」が多く、筋肉質で歯切れのよさと、噛むほどに旨味が増すところが特徴である。また、「はかた地どり」のむね肉には、認知機能の低下を抑止する効果が期待されるアンセリンやカルノシンが含まれており、消費者庁の機能性表示食品として認定された。
食習の機会や時季 日常食として食されるほか、祭りやハレの日など人寄せの際にも食されている。県外においても「かしわめし」の駅弁は、広く人気があり、折尾駅のほか、北九州のJR主要駅をはじめ、デパートでも購入することができるため、通年味わえる。
だぶ
主な伝承地域 浜玉町、唐津市
主な使用食材 野菜
歴史・由来・関連行事 佐賀県から福岡県にまたがって伝承されている「だぶ」は、鶏肉と季節の野菜を入れて作る郷土料理である。煮くずれしやすい食材は使わずに、水をたくさん入れて「ざぶざぶ」に仕上げることから、“ざぶ”が訛って「だぶ」と呼ばれるようになった。冠婚葬祭などの客を招待する場面で振る舞われる料理で、慶弔によって材料や切り方に違いが生まれる。唐津エリアでは具材はすべて短冊切りにするのがポピュラーだが、仏事はこんにゃくを三角に切る。また、冠婚葬祭ではレンコンや干しシイタケ、こんにゃく、きくらげ、凍りこんにゃく、鶏肉などを使用するほか、慶事の時は玉麩を入れる。特に浜玉地区ではとろみをつけずに仕上げる。他地域でも、結婚やお祝い事などの慶事には具材は四角に切り、花麩を使用。また、味付けには砂糖を使わない人もいる。反対に弔事では、具材は三角に切り、砂糖を使用。各家庭によって味付けは異なるが、かつては、隣近所など、集落の人が集まり、一度にたくさんの量を共同で作っていたという。
食習の機会や時季 各家庭の冠婚葬祭などの時に、隣近所の人々が集まり作る。また、客を招待する時には必ず作られ、昔から伝わる料理として今でも受け継がれている。
結果を見ると、
|知ってる |食べた事有|作った事有|
あちゃら漬け・・・|21.8%|14.7%| 5.4%|
がめ煮・・・・・・|95.2%|92.5%|61.4%|
博多雑煮・・・・・|84.4%|66.8%|38.2%|
かしわめし・・・・|95.6%|93.7%|55.9%|
だぶ・・・・・・・|19.2%|12.6%| 5.2%|
とあるように郷土料理と呼ばれるものの中には、メジャーなものとマイナーなものが存在しているようです。ただ全てに共通するのは「知っている>作ったことない」という点。それはすなわち「作れない」わけで、作れないとなると自然と食べる機会は減ります。郷土料理という伝統を守る上で大きな課題です。ただ幸いなことは、ネットを探せばレシピがあったり、調理動画が見つかること、だと考えています。
当然、福岡市もその辺りを問題にしているようで、次の質問で訊いています↓
(2)行事食や郷土料理を作ったり食べたりしているか
問13 あなたは、季節や地域の行事のときの行事食や福岡の郷土料理を作ったり食べたりしていますか。
行事食や郷土料理を作ったり食べたりしているかについて、「どちらかといえばしている」の割合(42.1%)が最も高く、次いで「ほとんどしていない」(21.7%)、「している」(20.1%)、「どちらかといえばしていない」(13.4%)、「どちらともいえない」(2.0%)の順となっており、『している』(「している」+「どちらかといえばしている」)は62.2%となっている。前回の調査結果と比較すると、『している』の割合は前回(58.0%)よりも4.2pt高くなっている。【性別】性別にみると、『している』の割合は、女性(66.5%)の方が男性(54.5%)よりも高くなっている。
【性・年齢別】性・年齢別にみると、『している』の割合は、女性ではすべての年代で5割を超えており、一方男性では20代(37.8%)と40代(46.3%)で5割を下回っている。
【居住区別】居住区別にみると、『している』の割合が最も高いのは西区(70.8%)で、最も低いのは中央区(57.7%)である。
【家族構成別】家族構成別にみると、『している』の割合は、単身(43.0%)のみ5割を下回っており、最も高いのは親子3世代で75.0%となっている。
【食育への関心度別】食育への関心度別にみると、『している』の割合は、関心がある人は67.2%、関心がない人は46.0%と、21.2ptの開きがみられる。
市民の食育に関するアンケート(PDFファイル)
難しいのは郷土料理の「存在理由」ではないでしょうか。美味しければ、手軽で身近であれば、日常的なルーティンの中に自然と入っていくでしょう。郷土という理由だけだとなかなか難しいかも知れません。
逆になぜそれが郷土料理になったのだろうか、という「理由」です。多くの郷土料理の場合、材料や条件がその土地に風土にあって、それを活かしたことからというのが多いのではないでしょうか。
先日広島に行きました。広島と言えば、お好み焼き、牡蛎。どちらも頂きました。でも考えてみればお好み焼きだって牡蛎だって福岡でも食べられます。食べられますけど、やはり「広島」に行ったのなら食べたい。つまり「本場」というのがキーなのではないでしょうか。考えてみれば、このブログの中でもかなり「本場の味」や「発祥の地」にこだわっています。ホンモノを味わいたいと思うからです。ですが、これはいわゆる余所者の考え。地元の人たちにも愛されるもの、普段から親しめることが郷土料理には必要です。実際に広島の人たちはお好み焼きを普段から食べているそうです。
★ぴょん!ポイント★
福岡・博多の食の名物5
がめ煮(がめに)
福岡県の代表的な郷土料理。炒り鶏や筑前煮、筑前炊きとも呼ばれる。
概要
博多弁の「がめくり込む」(「寄せ集める」などの意)が名前の由来とも、文禄の役の時に、朝鮮に出兵した兵士が当時「どぶがめ」と呼ばれていたスッポンとあり合せの材料を煮込んで食べたのが始まりとも言われている。また、博多湾に多くいたカメを食材に用いていたことから亀煮から「がめ煮」と名づけられたとの説がある。
現在はスッポンではなく鶏肉を使うのが普通である。正月料理や祝いの席での料理として作られるほど地元では欠かせない味となっており、水炊きとともに農山漁村の郷土料理百選に福岡県の郷土料理として選ばれている。2006年の総務省の家計調査では、ゴボウの消費量は福岡市が全国1位となっており、がめ煮に使うことが影響していると考えられている。 鶏肉の消費は2008年の同調査では大分市とわずかな差で全国2位となっている。農林水産省「畜産物流通調査」(2008年)より、福岡県の食鳥肉の年間出荷数は全国で16位となっており、出荷量と消費量に関係はないとわかる。
福岡県久留米市では、2006年10月に策定した久留米市食料・農業・農村基本計画において、がめ煮を調理することのできる市民の割合を2014年度までに65%とする目標を立てている。
陸上自衛隊の戦闘糧食にがめ煮(筑前煮)が支給されることがある。
がめ煮というか筑前煮と私。
このブログを始めて3回目の投稿が「がめ煮」でした。正月の時に書いた記事で、佐賀に帰省している時の実家のがめ煮です。がめ煮は、それぞれの家庭毎に違いがあります。それも含めて郷土料理だなって思います。
↑ちなみに、ちゃんとがめ煮作れます。
ー 適 材 適 食 ーてきざいてきしょく
小園 亜由美 (こぞのあゆみ)
管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・病態栄養専門管理栄養士・日本化粧品検定1級
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。