健康な身体づくりのために野菜を食べましょう!
どっかで1度は訊いたことのあるフレーズだと思います。では、なぜ野菜を食べるといいのでしょう。
野菜には食物繊維が入っているから。
正解です。では、食物繊維って何ですか?と訊かれたら?なかなか詳しく答えられる人はいないのかも知れません。まさに私たち管理栄養士は「野菜を食べましょう」とか「食物繊維が含まれている野菜をたくさん摂りましょう」と伝えていますが、食物繊維がどんなものなのかまで詳しくお話する機会は少ないかも知れません。
そこで今回は食物繊維について取り上げていきたいと思います。
そもそも食物繊維って何?
まずは食物繊維という言葉についてみていきましょう。
食物繊維(しょくもつせんい)
人の消化酵素によって消化されにくい、食物に含まれている難消化性成分の総称である。その多くは植物性、藻類性、菌類性食物の細胞壁を構成する成分であるが、植物の貯蔵炭水化物の中にはグルコマンナンやイヌリンの様に栄養学的には食物繊維としてふるまうものも少なくない。化学的には炭水化物のうちの多糖類であることが多い。
食べ物に含まれているけどヒトには消化されにくい成分のこと、つまり食べても栄養にはなりにくいもの、ということのようです。
食事(しょくじ)
基本的には生命維持に必要な栄養素を摂取するために、日々習慣的に何かを食べること、そこから転じて、その時食べるものを指すこともある。「衣食住」の「食」にあたる。「衣食住」の「食」にあたる。口語では「御飯(ごはん)」と呼ばれる。
食べたものを消化してそこから必要な栄養素を体内に取り込むことで生命を維持しています。食事は生きていく上で欠かすことができないということです。では食べたのに消化しにくく栄養素を取り込みにくい食物繊維って食べなくてもいい気がしますよね?たとえ栄養素を含んでいたとしても体内に取り込めないのでは役に立ちません。なのになぜ食物繊維は身体にいいと言われているのでしょうか。
さらに調べてみると、厚生労働省のサイトに食物繊維についてとても判りやすく、詳しい説明が記載されてありました。これを読み解いていきましょう。
*ここでは正しく詳細まで説明するとなると判りにくくなるのでざっくりと捕捉していきます。正確に知りたい人はしっかりと調べてみてください。
食物繊維とは
食物繊維は消化・吸収されずに、小腸を通って大腸まで達する食品成分です。 便秘の予防をはじめとする整腸効果だけでなく、血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下など、多くの生理機能が明らかになっています。 現在ではほとんどの日本人に不足している食品成分ですので、積極的に摂取することが勧められます。
消化・吸収されない=栄養素が取り込めないということが書かれていますね。続いて、
食物繊維というと「繊維」という言葉から、細い糸のようなスジ状のものをイメージされがちです。しかし「ネバネバ」するものから、水に溶けて「サラサラ」した状態のものまで、多くの種類があります。特定保健用食品で「おなかの調子を整える食品」として認められている成分の多くが食物繊維です。
そういえば食物繊維を実際に見た事ってありますか?言葉から想像するとこんな感じ↓でしょうか。これは化学繊維の拡大写真のようです。まさに繊維って感じがしますね。
食物繊維について探してみると大塚製薬のサイトに貴重な画像がありました↓
左上:トウモロコシ 右上:ゴボウ 左下:大麦 右下:モヤシ
繊維という言葉らしく糸状のものかと思いきや、何だかたくさんの穴が空いていて筒状の集まりのように見えます。しかも植物の種類や部位によって色々な形状があることがわかります。ヒトの目では見分けられないほど小さなものがこんな形をしてるなんてミクロの世界は面白いです。どうやら糸くずの塊ではないようです。
食物繊維は「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義されています。言い換えると、たんぱく質・脂質・炭水化物などは、消化管の中で消化酵素によって分解(消化)され、小腸から体の中に吸収されていきますが、食物繊維はこの消化酵素の作用を受けずに小腸を通過して、大腸まで達する成分です。
食べ物を栄養素別に大きく3つに分けると脂質・タンパク質・炭水化物となります。
炭水化物の中には糖質と食物繊維に分かれます。食物繊維には水に溶けやすい水溶性食物繊維と水に溶けない不溶性食物繊維に分けることができます。
炭水化物だけに絞るとこんな感じになります↓
主にエネルギー(=カロリー)になる糖質と、消化しにくく体外に出てしまう食物繊維という相反する栄養素が同じ炭水化物というのって面白いですね。
水に溶けやすい水溶性と水に溶けにくい不溶性の食物繊維って働きに何か違いがあるのでしょうか。
水に溶けないセルロースやリグニン、水に溶けるペクチンやアルギン酸などの成分があります。さらに消化されにくい性質を持ったデンプン・デキストリン・オリゴ糖などの成分も含まれます。便の体積を増やす材料となるとともに、大腸内の環境を改善する腸内細菌に利用され、これらの菌を増やすことが明らかとなっています。
水溶性・不溶性食物繊維の役割について判りやすい図を見つけました↓
食物繊維は消化されにくいので腸まで残ります。腸まで届いた不溶性食物繊維と水溶性食物繊維はそれぞれ働きがあります。
▼不溶性食物繊維
成熟した野菜などに含まれ、糸状のもの、多孔質のものがあり、ボソボソ、ザラザラとした食感が特徴です。
不溶性食物繊維を多く含む食品
穀類、野菜、豆類、キノコ類、果実、海藻、甲殻類(エビやカニ)の殻にも含まれています。特性
*保水性が高い
胃や腸で水分を吸収して大きくふくらみ、腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を活発にし、便通を促進します。
*繊維状、蜂の巣状、へちま状
よく噛んで食べるので、食べすぎを防ぎ、顎(あご)の発育を促すことで、歯並びをよくします。発酵性
大腸内で発酵・分解されると、ビフィズス菌などが増えて腸内環境がよくなり、整腸効果があります。概して、水溶性食物繊維より発酵性は低い。
▼水溶性食物繊維
ネバネバ系とサラサラ系があります。
水溶性食物繊維を多く含む食品
昆布、わかめ、こんにゃく、果物、里いも、大麦、オーツ麦などに含まれています。
こんにゃくの原料は水に溶けますが、食用のこんにゃくになると水に溶けません。特性
*粘性
粘着性により胃腸内をゆっくり移動するので、お腹がすきにくく、食べすぎを防ぎます。糖質の吸収をゆるやかにして、食後血糖値の急激な上昇を抑えます。
*吸着性
胆汁酸やコレステロールを吸着し、体外に排泄します。
*発酵性
大腸内で発酵・分解されると、ビフィズス菌などが増えて腸内環境がよくなり、整腸効果があります。
ということです。不溶性も水溶性もそれぞれ私たちの身体によい効果をもたらしてくれているんですね。
よい働きは腸内だけではありません↓
口くち
- 唾液の分泌を活発にする
- 満腹感をもやらす
胃
- 食べ物が胃に留まる時間を長くする
- 消化管ホルモンの分泌を促す
小腸
- ぜん動運動を活発にする
- 食べ物が小腸に留まる時間を長くする
- 消化酵素や消化管ホルモンの分泌を促す
大腸
- 食べ物が大腸を通過する時間を遅らせる
- 腸内細菌による脂肪酸の生産を促す
- ミネラルの吸収を促す
と、食物繊維は消化系に広く影響を及ぼしていることが判ってきているのです。
それでは食物繊維の働きについてまとめてみましょう。
■口
|・繊維質なのでかみ応えがある。
|・唾液がたくさん出て消化を助ける。
|・よく噛むので満腹感を得やすくなる。
↓*食べ過ぎを改善・肥満を予防
■胃
|・水分を吸収すると膨張する。
|・さらに満腹感を得やすくなる。
↓*食べ過ぎを改善・肥満を予防
■小腸
|・食べ物をゆっくり移動させる。
↓*血糖値の急上昇を防ぐ
|・コレステロールを吸着させる。
↓*中性脂肪量を抑制
■大腸
|・腸の壁を刺激して便の量を増やす。
↓*便利の予防・改善
|・腸内細菌の餌となって腸内環境を整える。
↓*大腸がんの予防
という効果が期待できるのです。
それでは、食物繊維の働きについてまとめたいと思います。
食物繊維は消化されにくいという特徴から、
- 腸を掃除したり便の量を増やす
- 脂肪や等の吸収をゆるやかにする
- 腸内細菌のエサになる
という3つの働きがあります。これらの働きが健康な身体づくりに役立っているのです。
食事をするということは栄養を補給することです。もちろん栄養の中には私たちが活動をするためのエネルギー(=カロリー)も含んでいます。しかし食べる中に食物繊維を多く含む野菜類を積極的に取り入れることで、脂肪や糖の吸収を穏やかにしてくれる効果が期待できるのです。特に糖尿病など生活習慣病で、脂質や血糖値が高めな人にとってはオススメの食材なのです。
食物繊維をせっかく摂るのであればちょっとしたコツがあります。このグラフを見てください。
このグラフは食事をした時の血糖値の変化を示しています。
- オレンジの線はご飯→サラダの順に食べた場合
- ブルーの線は、サラダ→ご飯の順に食べた場合
です。なんと同じ食事内容=同じものを食べたとしても食物繊維を先に食べた方が血糖値がゆるやかに上昇していることが判ります。これがベジ・ファーストの効果、なのです。食物繊維を多く含む野菜を食事のいちばん最初に食べる、それだけで血糖値の急な上昇を抑えることができるのです。
またこんなニュースも報じられています↓
食物繊維ってスゴい!
★モゥー!ポイント★
食物繊維。栄養にならないのに何故食物繊維を摂ることを勧められるのかざっくり説明しました。ベジ・ファーストって本当に効果的、なんですね。
じゃあ食物繊維はどれくらいの量を食べたらいいのでしょうか。
次回は「1日にどれくらいの野菜を食べたらいいの?」です。
ー 適 材 適 食 ーてきざいてきしょく
小園 亜由美 (こぞのあゆみ)管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・日本化粧品検定1級
*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。