今週のお題「上半期ふりかえり2025」

バズった「福岡市の唐揚げ1個の給食問題」。
その後、子どもたちの学校給食について色々な話が出てきたので以下に転載します↓

その①
「貧相」指摘の給食 福岡市長、改善に意欲「全面的にバックアップ」
福岡市の高島宗一郎市長は19日の記者会見で、市立小の給食が交流サイト(SNS)で「貧相」「少ない」などとの指摘を受けた件について、「市教育委員会から提案があれば全面的にバックアップする」と改善に意欲を見せた。
問題の給食は、4月に出されたからあげ1個とご飯、みそ汁、牛乳の献立。1食当たり600キロカロリーとする市の基準は満たしていた。
高島市長は量が少ないという指摘はこれまでなく、「給食の時間が短いというのは聞いたことがあった」と説明。物価高の影響について問われ、「給食費は変えずに高騰分は市が食材費を負担している。(2学期から始まる給食費の)無償化によって質が悪くなることもない」と強調した。
市教委は改善に向けて検討会を設置する予定で、高島市長は「既成概念にとらわれず、栄養が取れて食育となり楽しい給食になるよう考えてもらいたい」と話した。

その②
〈福岡・唐揚げ1個給食〉貧相というけど…市教委は「栄養基準満たしてる」同業者は「チキンカツにすれば良かった」「ちなみに古古古米はモンペが怖いから使えません」
「この唐揚げの時は休みの子がいれば取り合いになるほど」
福岡市の給食費については平成27年から小学校では4200円、中学校では5000円で据え置かれている。そこに公費が入り給食1食当たり小学生は298.47円、中学生は347.36円で作られている。近年、物価高騰が続いているが、物価高騰にともないメニューや量の変化はあるのだろうか。「令和4年から物価高騰が激しくなっていますが、令和4年度が4億円、5年度が7億円、6年度が10億円、今年度が12億円と物価上昇に応じて公費の予算を増やしていっているので、給食の量や質を極端に落としたことはありません。福岡市では2学期から給食無償化が始まります。質が落ちるのでは?と心配の声もありますがその分の予算は確保されているので質は落ちません。基本的なメニューは以前と変わらず同じ物を作っていますが、メニューの中の食材で特に価格が上がっている物について調整したりはしています。例えば青ネギの価格が上がっているので、1人当たり1グラム減らして、代わりに玉ねぎを5グラム増やしたりとか。高騰していますがおコメについては変えていません。100%福岡県産の6年度産米を使用し、食物繊維のことを考えて昔から1割麦を入れています」
食材を組み合わせ、量と質を維持しながら予算内で作られている給食。一番人気のメニューを問うと教育委員会給食運営課の担当者は苦笑しながらこう答えた。
「カレーと競っていますが唐揚げです。味が子供たちに好評で、この唐揚げの時は休みの子がいれば取り合いになるくらいです。肉の部位も大きさも昔から変わっていないので、福岡市の小、中学校の給食を食べた方であれば唐揚げの味はたぶん覚えていただけてると思います。とはいえ、写真のインパクトは強かったのでネットの反応がああなるのは仕方ないと思いますし、おいしく見える献立の組み合わせは今後、工夫しながら考えていきます」
「牛肉は高いから安いひき肉に豆腐を混ぜてかさ増しして…」
様々な試行錯誤のうえ子供たちの前に並んでいる給食だが、福岡市だけでなくそれは他県でも同様だ。埼玉県川口市の担当職員が語る。「基本どの自治体も自治体職員だけでなく学校関係者などが意見を出し合って食材を選んでいます。川口市ではこれまでは県内産のコメである『彩のかがやき』を使っていましたが、コメの高騰にともない青森県産の『まっしぐら』に変えたり、牛肉は高いので豚肉や鶏肉の割合を増やしたりしていますし、肉の部位を変更したりしています。限られた予算の中で『味・価格・見た目』に気を遣っています」
また、都内23区内のある役所の担当職員も給食の質を落とさないよう奮闘していると語った。
「給食の無償化が始まりましたが、それに伴い予算がついているので献立が著しく変わるといったことは起きていません。とはいえ、物価高のあおりは給食現場も受けています。ジャガイモが高い時は、かぼちゃなどの別の食材にし栄養を補う工夫をしております。『栄養バランスがとれていて、子供たちが美味しく食べられること』を最優先に現場は動いています」
長年、関東近郊の私立幼稚園や小学校で給食調理員として勤務してきた40代女性は今回の唐揚げ給食騒動について同情を寄せた。
「ネットの批判を見て本当に気の毒だと思ったよね。60グラムの大きいお肉だし、あんなもんだよ。今は物価高で色々苦労があるのは事実。私の担当している学校も今まで使っていたコシヒカリからそれより安い他県産のブランド米に変えた。古古米とかは使わないかな。使ったら保護者(モンペ)のクレームも怖いしね。デザートについても本当はメロンやスイカなどの季節の食材を使いたいけど、でも使ったら確実に予算オーバー。だからバナナやゼリー、寒天などが多くなる。魚についてもサケとかもっと使ってあげたいけど、サバが多くなってる。サンマなんか高すぎて今じゃ出せても身が細すぎてカバ焼きとか無理だし、めったに出せない。お肉だってそう。牛肉は高いから安いひき肉に豆腐を混ぜてかさ増しして豆腐ハンバーグにしたり。今回の唐揚げで言えば揚げると縮むわけだからチキンカツにするという方法もある。悪い油を使わないよう気を遣わないといけないし、予算内でできる限りのことをしているのが給食。正直、今回の唐揚げのメニューについては栄養価を満たしているなら昔からあるレベルの献立だと思う」
物価高騰の中、給食現場の人たちはギリギリの予算でよりよい給食を作ろうとしている。全国的に急拡大している給食無償化など給食を取り巻く環境がめまぐるしく変化しているが、子どもたちが献立を見るのが楽しみになるような給食が届けられることを願わずにはいられない。
※「集英社オンライン」では、今回の記事についての情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。
メールアドレス:shueisha.online.news@gmail.com
X(旧Twitter)@shuon_news
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

その③
具材のない豚汁、牛乳はなし 配膳途中の給食写真をSNS投稿の石垣市議、批判受け謝罪・削除 沖縄
沖縄県石垣市の高良宗矩(むねのり)市議(自民石垣)が13日に、市内の小学校で撮影した配膳途中の給食の写真を自身のSNSで投稿した。具材が乏しく見える画像で、SNS上で1500万回余りの閲覧数に達した。市内の給食関係者は「給食に関わる人を愚弄(ぐろう)するものだ」と怒り、涙を流す人もいたという。高良氏は14日、SNS上で「お詫(わ)び」し、当該の投稿を削除した。
13日の献立はごはん、きのこ入り豚汁、いわしおかか煮、牛乳だった。だが高良氏の写真では、汁物に具材は確認できず、牛乳も配膳されていなかった。高良氏によると、給食に関して問う自身の一般質問に向けた現地視察として、13日正午過ぎに市内の小学校を訪れ、教頭の許可を得て給食を撮影した。
だがSNS投稿後に給食センターから、牛乳や残っていた具材は高良氏が現場を去った後に配膳されているとの説明があったという。
高良氏は16日、記者団の取材に、投稿した理由について「市民に事前周知し、議会に関心を寄せてほしい思いだった」と釈明した。一方で、写真については「不正確という認識はない。誤りとは一切思っていない」として、この日の他の学級にも写真と同様に具材が少ない給食(配膳)があったなどと説明した。野党は16日の市議会で、「高良議員に対して市民への説明責任を求める決議」を提案したが、高良氏が17日の自身の一般質問で、一連の経緯説明や謝罪をする予定であることを踏まえ、決議を取り下げた。
▼高良氏が撮影SNSに投稿した給食の画像
▼石垣市の給食センターが実際に用意した給食の画像
具材のない豚汁、牛乳はなし 配膳途中の給食写真をSNS投稿の石垣市議、批判受け謝罪・削除 沖縄(琉球新報) - Yahoo!ニュース

その④
「エサじゃないんだから」小学校の“唐揚げ1個給食”が炎上、栄養基準を満たせばそれでいいのか
福岡市の小学生の給食がSNSで話題だ。
麦ご飯、牛乳、味噌汁に、おかずは皿にポツンと置かれた唐揚げが1個だけ。Xのトレンドには「唐揚げ1個の給食」が入った。小学校の貧相な給食
「福岡市に限らず、貧相な給食は最近SNSでよく話題にあがっています。給食は限られた予算内で作っているので、昨今の急激な物価高の影響を受けていると推測されます。からあげ1個の献立でも栄養素の基準は満たしているようですが、わびしい印象は拭えません。おかわりするにしても、数に限りがあるでしょう」(グルメライター、以下同)
SNSでは、
《エサじゃないんだから》
《戦時中?》
《コレで少子化対策とか笑わせんな!》
《もっとお金を払うので豪華にしてあげてほしい》
《こども家庭庁解体して給食費にあてたほうがいいんじゃない?》
と批判的な声が多くあがっている。「地域差もあると思いますが、物価上昇によって全国的に予算が厳しくなっていると思います。現状でも担当者さんは限られた予算内でできる限りの工夫をしているのでしょうから、何か抜本的な対策をしてほしいと思います。給食は“あれがおいしい”“これが好き”と、友達とわくわくしながら食べてほしいものです」
“食育”も声高に叫ばれている今の時代、給食は栄養の基準を満たしてさえいれば、それでいいのか?
「エサじゃないんだから」小学校の“唐揚げ1個給食”が炎上、栄養基準を満たせばそれでいいのか(週刊女性PRIME) - Yahoo!ニュース

その⑤
まるで朝ごはん…給食費無償化がもたらした負の側面。「放課後の“買い食い”でかえって出費が増えた」家庭も――仰天ニュース特報
全国で給食無償化が拡大。家庭の経済負担を軽減する試みとして注目される一方で、自治体の財政負担や給食の質低下、食育の機会損失といった課題が浮き彫りに。そこで大反響を呼んだ仰天ニュースを特別セレクション!(初公開2025年3月17日 記事は取材時の状況、ご注意ください)
全国的に急拡大する給食費無償化政策。いまやわざわざ無償化地域に移り住むファミリーもいるほど。タダで嬉しいはずなのに子供や親からはなぜか不満の声も出ている。“無償化ブーム”がもたらす負の側面とは?
「給食が足らないよ!」お腹をすかせる子供たち
「子供が以前より学校給食が少なくなったとお腹をすかせていて、困っています」
実は、給食費無償化を果たした自治体に住む保護者から、そんな悩める声が漏れている。近年、小中学校の給食費無償化は東京都を筆頭に全国の自治体の3割が導入するなど、一大ブームのように拡大してきた。今期衆議院でも野党3党が給食費無償化法案を共同提出している。まるで朝ごはん?見本との乖離が進む献立
しかし、家計の負担が減る一方で、小学6年生の息子を23区内の公立小学校に通わせる母親は「無償化後の給食が明らかに違うんです」と不満を漏らす。「特におかずの品数が減って、こまごまとした副菜が消えたんです。野菜炒めも以前は4〜5種類の野菜を使っていましたが、今は人参とキャベツ、かまぼこ程度。ママ友とは、『校内展示されている給食の見本とは別物だ』と話しています」
また、別の区で娘が今春に公立小学校を卒業する母親はこう振り返る。
「パンとクリームシチュー、コールスローのような“朝ごはんに近い献立”が増えました。子供は『揚げ物や揚げパンが少ない』と、物足りなさを訴えていましたね」
それでも、無償化によって毎月5000円ほどの負担が減る。「質が落ちても仕方がない」と受け入れつつ、進学する予定の同じ区内の公立中学校の給食を心配していた。
メインがわからない 「まるで戦時中の食卓」
学校給食は文部科学省によって1食あたりの栄養価の目安が定められている。例えば中学生の場合は1食850キロカロリーといった具合だ。しかし、’23年度から無償化をスタートした大阪市の公立中学校に息子を通わせる40代の母親は、市のホームページで公開している給食献立の写真を指さしながら、「ダイエット中のOLのようなメニューじゃないですか。本当に十分な栄養がとれるのでしょうか?」と疑いの目を向ける。「ボリュームも少ないし、正直みすぼらしい感じ。ある日の献立はメインの食材が、“ご飯とめざし”でした。まるで戦時中の食卓のようだなと……」
給食の量が足りなくなったことで、サッカー部の息子にはよくない習慣がついてしまったとか。
「授業が終わったら部活前にコンビニに行って、“買い食い”をするんです。選ぶのも菓子パンやポテトチップスなど。体に悪いのでやめさせたいが仲間外れにされてしまうのも困る。結果的に一日500円ほどを渡していて、月1万円以上の余計な出費。無償化されたはずなのに、かえって出費していて負担が増えるという逆転現象が起きています」
そんな保護者からの不満を大阪市役所に問い合わせると、「盛りつけや献立により見え方に差があるものの、必要な栄養素を計算しています。物価高でも変わらず給食を提供できるよう予算も対応しています」との回答だった。
帰宅後の“ドカ食い”で1年で体重が10㎏増
“未来の投資”に力を入れ、兵庫県でも率先して中学校の給食費無償化に踏み切った伊丹市。「無償化されてから『汁物の味が薄い』と残すようになった」とため息をつくのは、子供が市内の公立中学校に通う父親だ。「カレーで肉やじゃがいも、たまねぎ、人参などの野菜は使っているようですが、それぞれの分量が少なくルウが多くて水っぽいとか。献立を見ると、具材はほぼ同じで味つけだけ変えて使い回しているように思えます」
空腹時間が長い反動なのか、帰宅後には台所を漁って脂っこいものや濃い味の食品を“ドカ食い”するように。
「カップラーメン2個や500gの冷凍チャーハンをひと袋など、かき込むように食べて部屋に引きこもってしまう。なので、19時ぐらいの夕飯には部屋から出てこず、一切食べません。ただ、朝起きると台所の流しに汚れた食器が置いてあるので、夜中にも食べているんだと思います。無償化から食生活が乱れたことで、1年で10㎏以上も太って肥満体形になっていて健康面が心配です」
取材した保護者の中には、「無償だから“文句を言うな”という雰囲気があって、不満があっても意見を言い出しづらい」と話す人も多かった。さらに、「食材費の高騰で質が保てないのであれば、給食費の一部負担に戻してもいいからまともな給食にしてほしい」という要望も。このような保護者と行政の認識の違いは、何が背景にあるのか。いずれにせよ、しわ寄せを被るのは子供たちだ。
ブームに逆行?値上げに踏み切る自治体の苦悩
全国で給食費無償化が進むなか、「値上げ」に舵を切る自治体もある。愛知県日進市は、今年4月から9年ぶりに値上げする方針を決定。令和7年度の保護者負担の給食費増加額は、実質1食あたり小学生が30円、中学生が35円となる。「これまでは給食の質や量を維持するために、値上げ分を公費で負担してきました。しかし、毎日提供しているごはんや、牛乳の値上がりの影響が大きく、持続可能な安心で美味しい給食を提供するためにやむを得ず、今回給食費を適正価格に改定することにしました」(市の担当者)
同時に給食を“見える化”するという試みもスタートした。
「値上げ前から、市民に向けて毎月20人ほど大人が実際に給食を味わえる“おいしい給食体験会”を開催しています。子どもたちが普段どんなものを食べているか、このメニューを継続させる必要性などを実感していただけていると思います。値上げに関して、一部の市民から値上げ反対の署名簿や請願書が議会に提出されましたが、結果的に不採択になりました。これからも、給食を見える化したり、食の大切さを地道にお伝えしていきたいと思います」(同)
子供たちにふさわしい給食のためにやむを得ず値上げを
また、福岡県久留米市は’23年にも値上げを行ったが、今年2月13日にさらなる値上げを発表。市の担当者が苦しい台所事情を話す。「全国的に無償化が進むなかでの値上げは、非常に心苦しい。ただ、無償化できるのは、人口規模が小さい自治体や、財源が豊富な自治体が多い。久留米市で無償化するとなると、新たに10億円以上の財源が必要になります。東京都などでは、都から各自治体への補助金があるため無償化が進んでいますが、それを全国の都道府県が同じようにやるのは難しいと思います」(市の担当者)
発表内容によれば、’25年度は値上げ分を市が全額負担する方針だが、’26年度からは市の負担分を減額。保護者の負担が増える見通しだ。
「簡単に値上げを決定しているのではなく、安い食材に変更するなど献立に工夫を凝らしたうえでのこと。値上げに関して厳しい目を向けられるのは承知のうえですが、成長期の子供たちにふさわしい給食を提供するために、必死に物価高騰と闘っていることもわかっていただけたら嬉しいです」(同)負担を減らすための無償化か、質を担保するための値上げか。物価高のなかで自治体と親の苦悩は続く。「全国一律給食費無償化」は実現可能なのか?
国会でも議論され、給食現場や自治体から強い要望が出ている「全国一律での給食無償化」は実現可能なのか。学校給食制度に詳しい鳫咲子氏に話を聞いた。「全国一律で完全無償化を実施するとなると、およそ4826億円の財源が必要です。これは文部科学省の予算の約1割にあたる額。給食費を『教育』の管轄として扱うとすれば省としても負担が大きく、各自治体の財源に頼らざるを得ないのが現状です」
しかし鳫氏は、全国一律給食費無償化は「夢の話ではない」とも語る。
「文部科学省より予算規模の大きい、農林水産省やJAと連携を図り、『食育』をより進めていけばいいんです。小中高の96%を給食費無償化を達成した韓国では、有機肥料を使った食材を給食に使うことで、農業予算の活用に成功しています。日本でも長野県松川町が町の農業振興予算を給食費の補助金に充て、地元の農家から食材を安く調達。町内の小中学校や保育園の給食費の無償化が実現しました」
無償化の財源は税金だからこそ「厳しい目を向けるべき」
この形の連携は、地域経済にもメリットをもたらす。「地元の農家にとって学校給食は安定した契約先となる存在。給食を“地域の食のインフラ”として機能させれば、地域全体の活性化も見込めます」
最後に鳫氏は、無償化地域に住む保護者に助言を送る。
「そもそも無償化の財源は、我々が支払っている税金からきているもの。だから『タダだから文句は言えない』と萎縮する必要はなく、給食が健全に機能を果たしているかどうか厳しい目で見るべきです。それに選挙直前には『無償化ブーム』が起きやすい。しかし選挙後は実施のハードルが高いため、継続的な議論が進まないことも問題です」
子供のための政策が大人の都合に使われていないか。無償に飛びつくのではなく、正しい見極めが重要である。
【研究者・鳫 咲子氏】
跡見学園女子大学マネジメント学部教授。著書に『給食費未納 子どもの貧困と食生活格差』(光文社新書)のほか、共著も多数
取材・文/週刊SPA!編集部
※初公開2025年3月17日 記事は取材時の状況、ご注意くださいまるで朝ごはん…給食費無償化がもたらした負の側面。「放課後の“買い食い”でかえって出費が増えた」家庭も――仰天ニュース特報(日刊SPA!)|dメニューニュース(NTTドコモ)

その⑥
「給食」選択しない家庭に現金給付 1食あたり340円保護者の口座に ”選択制給食”を続ける公立中学校 昼食食べない生徒も
少子化対策のひとつとして、自治体が「給食の無償化」を導入する動きが加速している。生徒が給食か弁当かを自由に選べる「選択制」をとってきた福岡県大野城市も、無償化の実施を決めた。給食を選択しない家庭には現金を支給するという。昼食を抜く「欠食」の問題が度々指摘されてきた選択制給食だが、無償化しても解決にはつながらないという声もあがっている。
「ランチ給食」「弁当持参」「パン購入」選べる選択制
福岡県大野城市の大野中学校。給食の時間、生徒が運んでいるのは民間業者のデリバリー弁当で大野城市では「ランチ給食」と呼ばれている。大野城市は、小学校はみんなで同じ給食を食べる「全員制給食」だが、中学校は「選択制給食」。生徒たちは「ランチ給食」か弁当の持参、それにパンの購入という、3つのパターンから昼食を選択することができる。生徒
「お母さんの手作りの弁当を食べると授業もがんばろうと思う気になれるのでお母さんに弁当を作ってもらっています」生徒
「いつもは弁当を持参しているけど、おいしそうなときはパンを頼みます。ポテトサラダパンが大好物です」「ランチ給食」選ぶ生徒は45%
ランチ給食は1食およそ340円。保護者の負担は280円で60円は市が負担している。
地元のパン屋から購入するパンは保護者の負担で3つで350円です。市によると、昨年度の利用状況は、ランチ給食が45.4%、持参弁当が46.2%、パンが8.4%だった。大野城市は、「選択制給食」のメリットをこう説明する。大野城市 井本宗司 市長
「子供たちにアンケートをとると5割以上が、家庭の弁当がいいというんですよね。共働きをしておられるご家庭も多いので選択をしていただく」大野城市教育総務課 光野直隆 課長
「子どもさんたちがその時の体調にあわせて選ぶ。結局自分で自分のことを考えることは非常に大事なことだと思いますので、選択制の良さはそういうところにあると思います」生徒が昼食を食べることができない「欠食」の問題も
一方、選択制給食で指摘されるのが、「欠食」の問題だ。ランチ給食を注文し忘れるケースや、家庭の経済的な理由などによって生徒が昼食を食べることができない欠食が起きている。中学1年の息子を持つ母親
「実際に欠食している子はいて、何度も忘れてしまった子は先生に言いづらくてトイレに隠れてお腹が痛いふりをしているのを息子が見かけたりして」選択制給食による「欠食」の問題は、これまで市議会でも度々指摘されてきた。今年3月の市議会で欠食の現状について質問された伊藤啓二教育長は、「欠食がおきないよう中学校への指導を徹底する」と述べた。
大野城市教育員会 伊藤啓二 教育長
「昼食の忘れなどにより給食を食べていない生徒がいるという声もあります。重要なことは毎日昼食の様子を見ている担任がそのような生徒にしっかり関わることだと思います。欠食が起きないよう各中学校に指導を徹底していく」弁当持参の生徒にも”給食無償化”どうやって?
その大野城市は、今年の2学期から「選択制給食」を維持したまま、給食費を無償化することを決めた。弁当を持参する生徒やパンを購入する生徒に対しては、一体どのようにして「給食費の無償化」を実現するのだろうか。市に尋ねた。大野城市 若山純哉 教育部長
「ランチ給食を基本とした選択制の維持を前提に制度設計を行うこととしています。具体的には牛乳については現物支給、ランチ給食は無償提供、弁当持参やパンを購入する家庭には相応の支援を行うことを基本として検討することとしています」教育委員会はランチ給食を注文しない生徒や私学などに通う生徒などの家庭には、1食当たり、食材相当費のおよそ340円を支給するという。何日分ランチ給食を注文しなかったか、生徒ごとに集計し、その金額を保護者の口座に振り込むことを想定していて、担当者は、「集計などに時間がかかるため事務負担は増えるのではないか」と話した。
現金給付「公平、とは言い切れない」
しかし現金を給付しても、生徒の欠食をなくすことにはつながらないと、専門家は指摘する。千葉工業大学 福嶋尚子 准教授
「現金で給付すれば何に使うか自由っていうのは当たり前のことなので他のことに使ったっていいってなります。現金で給付しているので公平な無償性ですという風に言い切れるのかと言うと、言い切りにくい」成長期の子どもたちの欠食をなくし、公平に栄養ある昼食をとることができるようにするにはどうすればよいのか。給食の無償化を機に、改めて考える必要がある。
RKB毎日放送
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/rkb/region/rkb-1969142?page=1

その⑦
唐揚げ1個の給食がネットでバズり…なら静岡はどうなんだ? 1食337円…予算内で栄養バランス考える苦労、しかもコメ高騰で…
小学校の給食の写真が話題に
子どものころは、給食が楽しみでわくわくしましたよね。しかし、最近ある写真が話題となりました。ご飯に、牛乳に、みそ汁。おかずはお皿にポツンと置かれたから揚げが1個だけ。今年の4月に福岡市の小学校で提供された給食です。この写真を街で見てもらうと…。
静岡市20代:「見た事ある。私SNSで見ました。自分たちの時はめっちゃ量があった感じだったので、これは寂しくない」
沼津市30代:「小学生って食べ盛りなので、それに合わせると、ちょっと量が少ないと思う」
静岡市30代:「上の子が保育園に行っているんですけど、けっこう給食で栄養を摂っていると思うので、もし小学生になった時にこれだけだと学校で栄養摂れていないのかなと心配になる」
福岡市の小学校の給食費は、1人1食あたり、およそ289円。この献立は合わせて620キロカロリー。1食あたり600キロカロリーという福岡市の基準は、満たしていますが、さまざまな声が聞こえました。
静岡市の学校給食は?
伊地健治アナウンサー:「おかずは、から揚げ1個という給食が話題になる一方、お米を始め、さまざまな食材の値段は高騰が続いています。そんな中、静岡市の学校給食はどのようになっているのでしょうか?」給食を管理する担当者を訪ね、まずは静岡市の給食費について聞きました。
静岡市学校給食課 中野雅也課長:「保護者から徴収している金額は、食材費として280円。それだけでは食材費賄えませんので、国からの交付金を活用して市として物価高騰対策で、57円予算を使っています。合わせると1食あたり337円です」
今から36年前。保護者から徴収する小学校の給食費は1食あたり201円でした。その後、消費税UPなどの影響で、年々増加。3年前には、物価高騰の影響を受け、保護者からの徴収金だけでは足りなくなり、国の交付金を活用するようになりました。その金額もどんどん上がり今年の4月からは、静岡市の給食費は1食あたり337円となっています。そして、これとは別に、給食を作る際の人件費や、配送する際のガソリン代などは静岡市が負担しています。この運営経費も年々増加しているそうですが、その金額は?
静岡市学校給食課 中野雅也課長:「4億6400万円ですね。この数年の食材費の値上がりと言いますか、いろんなもろもろの物価上昇というのは、やはり色んなところに影響が出ているのかなと実感として思います」
給食を作っている現場は
実際に、学校給食を作っている現場を訪ねました。伊地健治アナウンサー:「あ、窓がありますね。2階からこうやって見えるんですね。大きい釜がいっぱいです」
こちらでは、静岡市駿河区の安倍川から東側の小中学校、合わせて17校分の給食を、作っているそうです。
伊地健治アナウンサー:「いま午前10時を過ぎたところですけど、何時ぐらいまで調理して、何時ごろから配送が始まるんですか?」
西島学校給食センター 神谷賢所長:「この調理は10時35分くらいまでですね」
伊地健治アナウンサー:「じゃあ、後30分ぐらいで全部作り終えちゃう」
神谷賢所長:「その後、11時10分ころから順次、配送します。」
そんな、給食作りの苦労とは? 献立を作る、栄養士に聞いてみました。
伊地健治アナウンサー:「色んな食材を使っているのが分かるんですけど、食材の高騰によって苦慮している部分はあるんですか?」
栄養士 岡野菜央さん:「限られた予算の中で、栄養バランスも考えなければいけないので苦労しています」
食材費を抑えるために、さまざまな工夫をしているそうです。
栄養士 岡野菜央さん:「価格の高い鶏モモ肉ではなく、ムネ肉に変更したり、野菜も価格の高いタケノコから、比較的安定しているダイコンを使ったり、(ひき肉の代わりに)大豆製品を多く使用しています」
そして今、価格が高騰している食品の代表格と言えば“お米”。ご飯の回数や量は減っているのでしょうか?
栄養士 岡野菜央さん:「お米の量を減らしたりはしていない」
伊地健治アナウンサー:「頻度も特に変わっていないですか?」
栄養士 岡野菜央さん:「はい」
ご飯の量や頻度は変わらない一方で、お米の価格が値上がりした分、おかずにかけられる予算は少なくなっているそうです。
栄養士 岡野菜央さん:「(学校給食は)子どもたちの成長のために作っています。給食を見たり、食べたりして、楽しんでもらいたいのが一番だと思います」
小学校では
伊地健治アナウンサー:「静岡市内の森下小学校に来ています。ここは2年生の教室なんですが、午前の授業が終わって、これから給食の時間です。子供たち自身が給食を盛り付け給食センターから運ばれてきたばかりのおかずです」気になる、きょうの献立はいわしのつみれが入ったするが汁に、駿河湾で獲れたかますの磯部揚げ。きんぴらに、ご飯に牛乳。バランスが整っています。ちなみに、前日のメニューは、パンにツナを挟んで食べるツナサンドに、ジャガイモのトマト煮。フルーツと牛乳でした。静岡市では、小学1、2年生は1食あたり530キロカロリー。3、4年生は650キロカロリ―。5、6年生は、780キロカロリーが摂取基準とされています。給食でお腹を満たした後は外で元気に遊びます。
神谷孝之校長:「やっぱり給食は今も昔も、子どもたちにとって重要な一つの要素だと思うので、これからもおいしい給食を食べてほしいなと思っています」
子どもたちが、学校に行く楽しみの一つでもある給食。今後、その給食をどう守っていくのか考える時なのかもしれません。
唐揚げ1個の給食がネットでバズり…なら静岡はどうなんだ? 1食337円…予算内で栄養バランス考える苦労、しかもコメ高騰で…(LOOK)|dメニューニュース(NTTドコモ)

★にょろにょろポイント★
今回の福岡市の「唐揚げ1個給食」がSNSでバズったことで、少し調べるだけでたくさんの記事が見つかりました。ここで紹介したのはほんの一部にすぎません。
義務教育の子どもたちは、全員が成長中なのです。何としてもしっかりとした食事を摂ってもらいたいです。そのためにはどうしたらいいか、実現し続けるためにはどうしたらいいか、公共機関に任せるばかりではなく、私たちも考えていかなければならない、そんな時期に来ているのかも知れません。
ー 適 材 適 食 ーてきざいてきしょく
小園 亜由美 (こぞのあゆみ)
管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロ・健康運動指導士・病態栄養専門管理栄養士・日本化粧品検定1級

*1:文中の表現は全ての人が対象ではない場合があります。現在治療中の方は必ず担当医や管理栄養士の指示に従ってください。食事療法は医療行為です。ひとりひとりの身体の状態に合わせた適切でオーダーメイドなカウンセリングが必要です。充分に注意してください。

